2023.08.22

  • 経営改善
  • 資金繰り

無知な経営者が陥る負の連鎖

皆さん、こんにちは。フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

ここ数か月、本当に経営相談が増えました。

 

すべての案件が資金繰りの悪化で、その大半が資金ショート目前という段階です。

 

業種や規模は様々ですが、状況としては下記のような【負の連鎖】がどの企業にも当てはまります。

 

 

【負の連鎖】

損益の悪化→資金調達→過剰債務→損益はまだ改善されず→資金調達→過剰財務に拍車がかかる→損益はまだ改善されず→融資拒否→リスケ→ファクタリング・消費者金融の活用→税金・社会保険の滞納→当社への経営相談

 

 

正直、このタイミングで相談に来られてもほとんど説教で終わります。

 

 

「経営者の資質が全くない」「この状況でできることなどほとんどない」そう伝えます。

 

多くの経営者が陥ってしまうこの【負の連鎖】はなぜ起こってしまうのか。

 

損益の問題を直視せず、収益改善に取り組まず、安易に赤字を補填する方法を考えるその思考回路に問題があるのではと思っています。

 

例えば、赤字で資金繰りが悪化した時に「なんとか黒字にしよう」ではなく、まず「融資を受けよう」と考えるのです。

 

経営をしているとそういう時もあるかと思いますが、融資を受けた後でも良いので「黒字化させよう」と考える経営者はほとんどいません。

 

融資により資金繰りが改善されたため赤字の話は頭の中からなくなってしまいます。

 

まさに「のど元過ぎれば・・・」です。

 

残念なことにこの考え方は過剰債務になり、債務超過になり融資を断られるまで延々と続きます。

 

そして、金融機関との関係性が悪化してからファクタリングの活用や税金等の滞納が始まります。

 

この時点でも「黒字にする」という動きはほとんどありません。

 

赤字の垂れ流しを続けたまま、金策に走り回り、それも尽きてから専門家に相談するというのが共通の行動パターンです。

 

損益の問題(赤字)に対しては損益の改善という切り口でアプローチするのは当たり前なのですが、それをするのには相当なエネルギーが必要なので、資金を集めるというある意味において楽な道に逃げてしまうのです。

 

損益の改善には経費の見直しや仕入先への交渉、お客様へ訪問、地道な営業、値上げ交渉など時間も労力も費やす必要があります。

 

また、エネルギーを費やしても結果が出ないかもしれませんが、それでも継続しなければなりません。

 

数百円や数パーセントの改善を継続するのは大変なことですが、そこに対して真摯に取り組み続けるのが優秀な経営者です。

 

無知な経営者が学ばずに経営をすると多くの割合で【負の連鎖】に陥ります。

 

経営を学ぶ前に商売(利益の出し方)を学んでほしいと切に思います。

 

しかし、それでも見捨てることができないのが私の性分です。

 

相談に来られた以上、何とかしなければなりませんね。

2023.07.13

  • 事業再生
  • 経営改善

声のトーンで経営者の心理状況を感じる

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

東京商工リサーチの調査によると2023年1月から6月までの倒産件数は4042件であり、コロナ禍での資金繰り支援によって減少していた倒産件数が大幅に上向き傾向にシフトしました。

昨年から倒産件数は増加基調となっていたのですが、今年の上期で大幅に増加する結果となっています。

弊社へご相談に来られる企業様も資金繰りが深刻な企業が多く、早急にリスケを金融機関へ相談するケースが続いています。

背景には新型コロナ禍での減収・減益や昨年からの原油価格・物価高騰、人手不足・人件費上昇などが考えられますが、コロナ禍での3年超にどのような経営をしてきたのか、と疑問を持つケースも少なくありません。

既存事業の売上が減少し、赤字となり、資金繰りが窮屈な状態に手を打たないまま、新事業へ投資したり、新事業をウルトラCとして改善に取り組んだりと再生に取り組む中小・零細企業の戦略としては体力的にキツイ判断をしています。

その瞬間は、隣の芝が青く見え、新事業に飛びつきたくなる気持ちはわかりますが、まずは既存事業を何としてでも立て直すことに全力で取り組むべきです。

拠点や体制の見直しによる大幅な固定費の削減、今までは当たり前にやっていた販売戦略の見直しなど、何としても既存事業の収支を黒字化していかなければなりません。

厳しい言い方かもしれませんが、既存事業を立て直せない人が新事業をやっても収益化できるとは思えません。

とはいえ、始めてしまったものは仕方ありませんので、今後の方針を経営者と一緒に考えていくと、少し不安が解消されたのか、声のトーンが明るくなることが多いです。

弊社に相談しただけでは何も変わらないのですが、誰かに相談し、方向性や改善策が見えてくるだけでも資金繰りの悩みが小さくなれば、夜もしっかりと寝れ、事業に集中してもらえるのではないかと考えています。

現在の経済状況を考えるとほっておいて事業が良くなることは考えにくいですので、ポストコロナを見据えて、経営改善に取り組んでいきましょう。

中小企業診断士 木戸貴也

2023.05.26

  • バンクミーティング
  • リスケジュール
  • 経営改善
  • 資金繰り

リスケ状態から間もなく脱する2社の事例

皆さん、こんにちは。株式会社フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

新型コロナ融資の返済がこの夏から本格化するということもあり、弊社にも多くの資金繰りに関する相談が寄せられています。

 

赤字を借入金で補い、その間に経営改善を行ってこなかった会社は今後、過剰債務と赤字、物価高の三重苦との戦いになるでしょう。

現実的には元本返済ゼロのリスケを要請し、その間に経営改善を行うことになるケースがほとんどかと思いますが、経営改善に耐えうる余力があるのか、また経営者にその覚悟があるのかがその企業が生き残るのかそうでないかの分かれ目かと思います。

 

一方で弊社が過去に経営改善計画を策定し、リスケジュールの支援を行った先を2社訪問してきましたが、2社共に経営改善に取り組んでいただけていました。

 

1社目・・・縫製工場

加工単価が低く、利益が出にくい費用構造になっていた。外国人技能実習生を数多く採用し、単価よりも受注量を確保することで収益を確保しようとしていたが、元本返済までカバーできずリスケジュールの要請を行った。(今から3年前です)

経営改善計画では受注量よりも加工単価の向上を重視し、価格交渉を行うことや外国人技能実習生の教育を行い、検品は日本人が対応することなどを盛り込みました。取り組んだ結果が数字として出てきたので、この7月までに新計画を完成させ、バンクミーティングを経てリスケ状態から抜ける予定です。

 

2社目・・・子供服販売

複数店舗を運営されていたが、収益の改善が見込むことのできない不採算店舗は閉鎖し、4店舗から2店舗へと事業規模を縮小しました。過剰在庫もセールやネット販売で現金化するなどを経営改善計画に盛り込みました。(こちらも今から3年前です)

現在は店舗数が半分になったにもかかわらず、4店舗あった時の売上に近い水準まで売り上げを増加させた。固定費の削減や利益率の改善も相まって、収益性を大幅に改善することに成功しました。1社目と同様に新計画を策定し、こちらも7月にはバンクミーティングを行い、リスケ状態から抜け出す予定です。

 

 

この2社様は経営改善計画書の内容に対して真摯に向き合っていた(自分が率先して現場に出るだけでなく、営業や仕入れ等も責任をもってやっていた)結果が出たのだと思います。

 

今現在、経営や資金繰りに苦しんでいる事業者様も大勢いらっしゃるかと思いますが、我々のような専門家と一緒に、覚悟をもって真剣に経営に取り組んでいけば道は開けるということを強く想ってください

 

「まだいけるだろう」「また、融資を受ければ何とかなるだろう」ではなく、自分の力で業績を改善させる、利益を出すという覚悟や情熱、行動力をもって難局を乗り切っていただければと思います。

 

私どもにも経営改善のノウハウは多数ございますので、何なりとご相談ください。

2023.05.11

  • 事業再生
  • 経営改善

中小企業の経営改善・事業再生 その3

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。全3回の中小企業の経営改善・事業再生シリーズの最終回です。今回は、具体的な経営改善の事例をご紹介します。

3.具体的な経営改善の例

(1)製缶板金加工業の事例

年商規模を大きく超える過大な設備投資や無計画な事業承継などにより、経営が不安定となり、資金繰りが非常に厳しい状況でした。

金融機関への返済は遅れることなく行っていましたが、ご相談を受けた時には「今月末の支払いが厳しい」という状況でしたので、当日中にメインバンクの担当者へ相談し、早急なリスケジュールにも応じていただけました。

その後、経営改善計画を代表者と何度も打ち合わせを行い、約3カ月かけて作成し、バンクミーティングにより、計画説明とリスケジュールの期間延長を依頼しました。

計画策定後、代表者が中心となって徹底した固定費の削減、生産性向上や受注価格の見直しによる利益率の改善、そして自社HPでの販路開拓や既存取引先への営業によって売上高を増加させたことで、資金繰りは劇的に改善され、十分に利益計上できるようになりました。

事業承継も問題なく進み、金融機関への返済も間もなく開始できる状況まで経営改善が進んでいます。

まだまだ経営改善の道中ですが、経営改善のステップを忠実に実行した経営改善の例だと言えます。

 

(2)食品卸売業の事例

市場規模が年々縮小している分野であり、業績は長期的に低迷していたため、借入金の返済を新たな借入金で返済していました。

売上高が減少する中で、借入金が増加していたため、年商対比での借入金が非常に過大となっており、金融機関からの追加融資を受けることが出来なくなっていました。

年商1億円超ですが、預金残高は数十万円であり、資金繰りが非常に切迫していました。この事例も当月から金融機関に対してリスケジュールの交渉を行い、経営改善計画書を作成しました。

売上高が減少している中で仕入高は変わっておらず、年々在庫・冷凍保管料が増加し、利益率や資金繰りを圧迫していたことから、真っ先に在庫の圧縮を行いました。

仕入を抑制し、既存の在庫を販売することを約半年続けると大幅に在庫を削減でき、冷凍保管料も減少し、少額ですが利益計上できるようになりました。

この事例も経営改善のステップに従って経営改善を実行している例です。

いまだ、利益率の改善や売上高の増加は十分に行えていない状況ですが、預金残高も月商1か月分程度を確保できており、資金繰りは大幅に改善しています。

4.専門家へは早めに相談を

まずは自分でやってみてダメなら専門家へ相談することも悪くはないのですが、後からご相談をいただいたときには手遅れとなることも少なくありません。

「あと数か月早く相談を受けていれば、もっといい選択肢があったのに」というケースは多くありますので、少しでも迷われたときなどは専門家へ相談されることをお勧めします。

2023.05.10

  • 事業再生
  • 経営改善

中小企業の経営改善・事業再生 その2

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。前回の中小企業の経営改善・事業再生その1に続いて、3回シリーズの2回目です。

2.経営改善のステップ

経営改善・事業再生は、収益性の改善、金融機関へのリスケジュールの申込、資金繰りの改善などを行うのですが、これには明確な手順があります。

経営を改善するには、固定費の削減、利益率の改善、売上高の増加の3つが必要であり、この順番を守ることが重要です。

固定費が高く、収益性が低い赤字体質の状態で売上高の増加を急ぐと赤字幅が拡大し、資金繰りも更に悪化するケースは少なくありません。

まずは、固定費(役員報酬、家賃など定期契約、広告宣伝費、交通費、交際費、雑費など)や利益率(=粗利益率。仕入や外注費など)の見直しや改善を行い、ぜい肉をそぎ落とし、筋肉質となった状態で売上高の増加を目指します。

借入金の返済は固定費ではないのですが、毎月の支出を見直す必要がある場合には、金融機関に対して、元金返済猶予などのリスケジュールを依頼します。

必ずしも「経営改善・事業再生=リスケジュール」ではないのです。

返済を猶予しても先延ばしをしているだけですので、いずれ返さなければなりません。

しかし、経営改善は、固定費削減のように直ぐに効果が出るものもあれば、利益率改善や売上高増加など取り組んでから結果が出るまでに相当期間を要するものもあります。

固定費削減は一時的な改善であり、中長期的には利益率改善や売上高増加が不可欠です。

そのため、経営改善・事業再生を進めるためには、定期的なモニタリングと見直し、軌道修正が必要です。

計画通りに進んでいない原因や資金繰りの変化、取引状況などをリアルタイムで確認することで、経営改善・事業再生を進めていきます。

次回では、経営改善の具体的な事例を2案件ご紹介したいと思います。