2025.03.19

  • 経営改善
  • 資金繰り

良かれと思って…は危険?

こんにちは、中小企業診断士の社内です。

 

事業者様のお話を伺っていると、

時々、良かれと思って判断した結果、資金繰りや収益性を一層悪化させてしまっていたということがあります。

 

たとえば、弊社が支援する事業者様は支払サイトを120日から60日にしないと追加の融資はできないと金融機関に言われてしまいました。

それを聞いた社員様は、良かれと思って資金繰りが苦しい中ですぐに60日に変えてしまいました。

その結果、2か月後には資金繰りに困窮する見込みとなり、大慌てしたという事案がございます。

 

よくある事案としては、お客様が喜ぶ、当社も受注できるから会社が喜ぶと思って、

担当者様が各々値引きを続けていていつの間にか利幅が目減りしていたということも当てはまるでしょうか。

 

「良かれと思って」は状況によっては、むしろ良くない、自社を苦しめることになりかねません。

特に資金繰りに困窮している時期は、一つの誤りが命取りになってしまいます。

 

ご支援に携わっていると、自社はどういう状況にあって、何を優先すべきなのかを常に把握し続け、

都度慎重に判断しなければならないことの難しさを感じます。

こういう時はどうすればいいのか、と悩む場合は迷わずに当社のような専門家にご相談ください。

 

中小企業診断士 社内 愛里

2025.02.19

  • 経営改善
  • 資金繰り

なぜ、売上は増加しているのに、資金繰りが悪化したのか?

こんにちは。中小企業診断士の谷です。

 

資金繰りの悪化には、「業績拡大時の資金繰り悪化」と「業績低迷時の資金繰り悪化」の2パターンがあります。

 

今回は、前者のケースについて、最近、経営顧問としてご支援させていただくこととなった運送業の事業者様の事例をもとにご説明します。

(※その他の資金繰り悪化の原因については、こちらのブログで詳細にまとめております。)

 

この事業者様からは、「売上が増加しているのに、手元の資金繰りがどんどん苦しくなっている」というご相談を受けました。

実際に直近の決算や試算表を確認してみると、確かに毎月の売上高は増加傾向にありました。しかし、月末の現預金はどんどん目減りしており、ご相談いただいた時点では、ほぼゼロに近い状態。資金ショートを回避するためにファクタリングを活用せざるを得ない状況となっていました。

 

なぜ、売上が増加しているにもかかわらず、手元のキャッシュが減少しているのでしょうか?

 

資金繰り悪化の要因として考えられる要素はいくつかありますが、

主な原因となっていたのは、

「入金サイトと支払いサイトのズレによる運転資金の増加」にありました。

 

資金繰りが悪化した具体的な流れを見てみましょう。

① 事業開始当初は黒字で採算がとれていた。

② 事業規模を拡大し、ドライバーの増員や車両の増車を実施。

③ しかし、手元資金が少ない中で、支払いが先行(外注費、人件費、燃料費など)し、売上の入金までに時間差があるため、立て替える運転資金が増加(これを「増加運転資金」といいます)。

④ 資金不足を補うために、金利の高いノンバンクやファクタリングを活用。

⑤ その結果、支払利息や手数料がかさみ、利益率が低下。

⑥ 翌月も資金不足が続き、さらにファクタリングの利用額が増加。

⑦ 利益率の低下が続き、最終的に赤字転落。

 

このような悪循環に陥り、抜け出すのが非常に困難になっていました。

 

この事例から学ぶべきこと

今回のケースから言えるのは、「体力をためてから拡大する」ことの重要性です。

売上が増加すれば、当然事業拡大のチャンスと考えがちです。しかし、十分な運転資金を確保せずに規模を拡大すると、キャッシュフローが回らなくなり、事業の継続が危ぶまれる事態に陥る可能性があります。

したがって、

  • 事業拡大の前に運転資金を十分に蓄えること

  • 入金と支払いのサイト管理を徹底すること

  • 資金調達手段の選択肢を慎重に検討すること

これらのポイントを押さえながら、健全な資金繰りを維持することが重要です。

 

 

中小企業診断士 谷

2025.02.10

  • 経営改善

自社の数字を知らないことは自分で首を絞めていること

こんにちは。ビジネスアナリストの社内です。

先日、経営改善に携わらせていただいている製造業者様の元に伺いました。

 

こちらの事業者様は、売上は上がっているにも関わらず、ここ何年も利益は低迷し債務超過に陥ってしまいました。

要因の1つは、会社の誰も自社の正しい費用を把握できていないことでした。

 

もしかすると、かつてはどんぶり勘定でも良かったのかもしれません。

しかし、今は市場は衰退する一方で競合他社は多く、顧客には相見積を取られ、厳しい価格競争にあります。

一方で、仕入は1社から8割を調達しており、その仕入先が生命線になってしまっていました。

自社の利益を守るには、案件別に費用の実態をリアルタイムに把握することが重要です。

そして、価格交渉を行う、生産効率を高めるなど常に対策し続けて、利益を絞り出さなければなりません。

 

しかし、こちらの事業者様の場合、営業担当者が提出する資料の精度や基準、

フォーマットがバラバラで実態を正しく把握できていませんでした。

なぜ、どこが原因で、自社の利益が出ていないのかが曖昧で具体的な対策ができず、

板挟み状態のまま長年自分の首を絞め続けていました。

 

どの案件にいくらの仕入、外注、労務費がかかっているのか案件別に原価管理することが非常に重要です。

そして、それを実現するには担当者共通の管理ルールが徹底されていなければなりません。

どのようなルール、システムであれば、数値に対する認識を揃えたうえで原価管理ができるのでしょうか?

経理や営業などの社員の方と相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

ビジネスアナリスト 社内 愛里

2025.01.20

  • 経営改善
  • 経営者の姿勢

言い訳して逃げたい、自分を守りたい気持ちとの葛藤

こんにちは。ビジネスアナリストの社内です。

 

先日、経営改善を支援させていただいている事業者様の元に伺いました。

こちらの事業者様は主な事業から全く無関連な分野へと事業を多角化した結果、資金繰りが苦しくなってしまいました。

「なぜこのような事態になったのか」とご一緒に要因分析を進めていたところ、

事業者様は

「〇〇さんの収益管理がずさんだった。」、

「物価高騰、賃上げが苦しい。」、

「銀行員が融資してくれると言っていたのに手のひらを返された。」、

「補助金に採択される算段で△△事業を始めたら、不採択になって全額自社負担になってしまった。」

というようにお話しされていました。

 

しかし、本当はこうではないでしょうか。

「〇〇さんが収益管理をできるように教育できていなかった自分のせい。」、

「物価高騰、賃上げに対し、値上げ交渉や売上拡大を図ってこなかったせい。」、

「銀行員の話や補助金等確証のないものを頼りに、本業の業績を改善することから目を背けていたせい。」など、

すべては自分の失敗であったとご本人もきっと分かっておられると思います。

 

今こんなにも困窮してしまっている現実を他の人や外部環境のせいにしなければ、精神状態を保てないかもしれません。

しかし、現実を見なければ時間だけが過ぎて事態は悪化していきます。

 

1つ前のコラムでも「自責思考」が話題になっていますが、

私は今回、自分の失敗を認めることには、大きな勇気が必要であるけれども会社を立て直すために必要不可欠なことだと学びました。

これまでの自分の失敗を認めることができて初めて、学びを得て、これからの経営に活かすことができると思います。

 

ビジネスアナリスト 社内 愛里

2025.01.14

  • 事業再生
  • 経営改善
  • 経営者の姿勢

ポストが赤いのも全て社長の責任

こんにちは。中小企業診断士の谷です。

 

何か思うようにいかないとき、つい「環境のせい」「他人のせい」にしてしまうことはありませんか?

 

私の周りにも、学生時代、資格受験時代、社会人になってからでも、言い訳、周りの愚痴ばかり言って、
結局、本人の望んでいる状態になれず苦しんでいる人は多いと思います。

 

たしかに、うまくいかないとき、「他責」にしたくなる気持ちはものすごく分かります。しかし、それを嘆いているだけでは、状況は決して改善しません。他人や、環境を変えることはできないからです。自分が変えることができのは「自分だけ」だと思います。

常に「自責思考」でいるのは難しくても、やはり、うまくいかないときは、一度立ち止まって、
「他責思考→自責思考」に切り替える時間を取る必要があると思います。

 

会社経営でも同じように、外部環境や従業員の問題が影響し、経営状態が悪化することはあります。
そんな経営がうまくいかないときこそ「自責思考」に切り替える時間が必要です。

 

一倉定氏が示す「経営者の責任感」

伝説の経営コンサルタントと称される一倉定氏は、「ポストが赤いのも全て社長の責任」と語りました。この言葉は一見極端に聞こえますが、経営者があらゆる出来事を「自分ごと」として捉える姿勢の重要性を教えてくれます。

この考え方は、経営者としての成長だけでなく、経営改善を成功に導くための大切な姿勢です。

 

思考を変えて、行動を変える

中小企業の経営者として、従業員のモチベーション低下、営業成績の停滞、取引先との関係悪化など、多くの課題に直面することがあるでしょう。しかし、それらを「従業員のせい」「環境のせい」と片付けてしまうだけでは、状況は変わりません。

例えば、「営業成績が上がらない」と嘆くのではなく、「営業体制や指導方法に問題がなかったか?」と、起きている状況を「自責思考」で捉えなおし、考え直すことが大切です。このように考えることで、具体的な改善策を見いだすことが可能になるからです。

 

経営改善における「自責思考」

経営改善では、苦境の原因を「窮境要因」として分析します。この要因は以下の2つに分類されます:

  • 内部要因(会社内部の問題)
  • 外部要因(市場の変化や景気など会社外部の環境)

多くの場合、外部要因に対しては「どうしようもない」と諦めがちです。しかし、自責思考を持つ経営者は、「市場の変化への対応が遅れた」「景気動向を見越した計画が不十分だった」と捉え直します。このように、外部要因さえも自らの責任として考え直すことで、主体的に解決策を見出す力が生まれます。

 

経営改善の第一歩

自責思考を持つことは、決して簡単ではありません。しかし、問題を他人や環境のせいにせず、自ら行動の主体となる姿勢は、経営者としての成長を加速させる重要な鍵です。

中小企業の経営者の皆様へお伝えしたいのは、「すべてを自分の責任として捉えることで、初めて経営改善への第一歩が踏み出せる」ということです。

経営が悪化した今こそ、「自責思考」に切り替え、自らの行動を変えることで、復活の糸口が見えてくると思います。

 

中小企業診断士 谷 七音