2024.10.18

  • 経営改善
  • 資金繰り

CCCを見直しましょう。

こんにちは、ビジネスアナリストの社内です。

 

CCCとは、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの略です。

企業が商品や原材料の仕入れなどによって投入した現金を、実際の現金収入によって回収するまでの期間を示す財務指標です。

つまり、CCCは企業の資金回転サイクルの効率性を意味しています。

このCCCが長いほど、資金を回収するまでの期間を要し、資金繰りが苦しくなりやすいです。

そのため、資金に余裕のない企業ほど、CCCを見直す必要があります。今回は、CCCを短期的に短くする方法を2つ紹介します。

 

1.受取サイトの短縮化を交渉する

受取サイトとは、お客様から受けた売上債権が実際に入金されるまでの期間を指します。

資金繰りが苦しい会社にとっては、受取サイトは短い方が良いです。

 

<交渉の例>

  • 手形取引ではなく、債券取引・現金取引を目指す

手形取引は、売上債権による取引に比べ、サイトが長期化する傾向にあります。

中小企業庁では、2026年度末の手形の利用廃止に向けた取り組みを進めています。

この情勢に乗って、手形から売上債権や電子記録債権、現金取引への移行を目指した交渉に取り組んでいきましょう。

また、100%手形支払いを半手半金(手形と現金が50%ずつ)にしてもらうなど工夫した提案も有効です。

 

  • 前払金を納めてもらう

大型設備の生産や工事を伴う受注である場合、一般にCCCは長期化します。

受取サイト自体を短くできなくても、一部仕入費用に対する前払金を納めてもらうことも資金繰りに有効な策です。

 

 

 2.支払サイトの延長を交渉する

支払サイトは仕入先や外注先に対する仕入債務や振り出した手形の支払期日を指します。

資金繰りが苦しい会社にとっては、支払サイトは長い方が好ましいです。

 

<交渉の例>

  • 一時的な延長措置をお願いする

3か月程度であれば支払サイトの延長を取引先に受け入れてもらいやすいです。

支払期限が到来してから依頼すると、仕入先の信頼を損ねる恐れがあります。また、仕入先の資金繰りにも支障をきたしかねません。前持った交渉が大切です。

 

  • 取引先を増やす

仕入先を複数持ち一社に対する依存度が低い方が、取引条件において自社が優位になりやすいです。

そうすることで、支払サイトの条件の交渉を飲んでもらいやすくなります。

 

ただし、無理な受取サイトの短縮、支払サイトの延長は取引先との関係性の悪化を招きかねません。

業界内の一般的なサイト期間からかけ離れないように気を付けましょう。

特に、下請け企業に対する支払サイトは、下請代金支払遅延等防止法など法的規制もあり、注意が必要です。

ビジネスアナリスト 社内 愛里

2024.10.08

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経営改善計画における損益計画の考え方

経営改善計画とは?

経営改善計画とは、事業の資金繰りや経営の課題を解決することを目的として、経営改善のための具体的な施策や実施時期などを記載した計画です。
経営改善計画の目的は、次のとおりです。
  • 金融機関から金融支援を取り付ける
     
  • 自社の事業が改善する可能性を社外に示す
     
  • 事業の継続と金融取引の正常化を実現する
     
経営改善計画は、金融機関から新規借入依頼や借入返済のリスケジュール依頼をするときに提出を求められることが一般的です。

よくあるNG例:返済額から逆算するバラ色の計画

経営者が陥りがちな間違いの一つに、「返済額から逆算して売上高を設定し、バラ色の計画を作成する」ことがあります。これは銀行との交渉において見栄えは良いかもしれませんが、実際の経営改善にはつながりません。合意が取れても、経営状況が改善しなければ問題を先送りすることになり、最悪の場合、倒産に至る可能性もあります。

現実的な損益計画の重要性

もちろん、返済額を基にある程度の利益目標を設定することは大切です。しかし、これを絶対的な基準にするのではなく、現実的な損益計画を作成する必要があります。返済に必要な利益を確保しながら、銀行とも現実的なラインで交渉していくためには、慎重な計画作成が求められます。

銀行員が見るポイント:実現可能な計画かどうか

銀行が経営改善計画を評価する際、特に注目するのは次の3点です。

1.売上計画は実現性が高いか?

売上が確実に見込める計画かどうかは、非常に重要です。過去の売上推移や受注見込みをもとに、現実的な売上目標を立てる必要があります。

売上計画は、「①成り行き」と「②α(努力)」に分けて考えると良いでしょう。

①成り行き:過去の売上傾向や窮境要因が取り除かれた場合の売上、または受注見込みの案件など、自然な推移に基づいた売上を予測します。

②α(努力):内部要因(新商品の投入、営業強化、値上げなど)や外部要因(市場の拡大、競合の減少など)を考慮し、追加の努力によって達成可能な売上を上乗せします。ここで、数字や具体的な根拠を明確にすることが重要です。

2.コストは最適化されているか?

コスト削減の余地があるか、固定費や変動費の見直しが行われているかも、銀行が注目するポイントです。

コスト計画を見直す際、まずは「成り行き売上」を基に損益分岐点を計算し、固定費の削減を検討します。固定費の削減が難しい場合には、変動費(原価率)の見直しや売上の向上による対策も併せて検討します。

3.利益を確保できるか?

結果として、利益がしっかり確保できているかどうか。銀行が納得できる返済能力を示すためには、具体的な利益の見通しが必要です。

まとめ

損益計画は、ただの数字の羅列ではなく、企業の現実に即した「実現可能な計画」でなければなりません。バラ色の売上目標を掲げても、現実の経営改善には結びつきません。外部コンサルタントとともに、現実的な計画を立てることで、銀行との交渉もスムーズに進みやすくなります。

我々が計画作成のご支援をさせて頂くときはこのような考えかたで、数値計画、アクションプラン(行動計画)を作成していきます。同じ目線、捉え方をもって経営改善に取り組めたらと思います。

2024.09.30

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  • 資金繰り

売上を伸ばす目的

皆さん、こんにちは。フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

さて、今日は「売上」の話です。

 

売上は少ないより多い方が良いですし、前期よりも伸びた方が良いので必死に営業活動に取り組んでいることと思います。

 

「売上を伸ばさなければならない」というのは古今東西どこの会社も共通する至上命題です。

 

しかし、「何のため(目的)に売上を伸ばすのか?」ということをあまり考えることはありません。

 

売上を伸ばす目的はズバリ「売上総利益(粗利益)」を伸ばすためです。

 

粗利益を最大化することが売上を伸ばす目的です。

 

粗利益が増えることが会社の成長です。

 

反対に粗利益を生み出さない売上は資金繰りを圧迫する、無駄な仕事が増えるなど、むしろ会社を悪い方向にもっていく不必要な売上です。

 

ですから、

 

売上高3億円 粗利益1億円

 

の会社が

 

売上高10億円 粗利益1億円

 

になったとしたら「売上高3億円」の方が魅力的だということです。

 

「売上を伸ばす」ということを命題にする場合は必ず「売上総利益(粗利益)も伸びる」ということを確認しましょう。

 

この考え方は経営者が率先して現場に浸透させないといけません。

 

売上は売上総利益(粗利益)と連動して伸ばさなければ資金繰りが悪化し、会社が傾く可能性が高いと自分の肝に銘じましょう。

 

売上を伸ばしていくことは絶対に必要ですが、売上至上主義にならず原価管理をして、「100円売ったらいくら儲かるのか(粗利率30%なら30円、35%なら35円)」を把握しましょう。

 

ひつこいようですが売上を伸ばす目的は「売上総利益(粗利益)を伸ばすこと」だということを絶対に忘れないでください。

 

2024.09.30

  • 経営改善

分けることは分かると言うこと

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

経営改善の手順で、『①固定費の削減➡②利益率の向上➡③売上高の増加』の流れは過去のコラムで何度か触れており、
業種や事業規模を問わずに原則、この手順で取り組むべきです。

しかし、「固定費の削減って何から着手すれば良いのか」、「売上を増やすといってもどう考えればいいのか」と
具体的なアクションに繋げるためには、もう一段階の掘り下げが必要です。

例えば、固定費の削減の内、“通信費の削減”であれば、「通信費=業務用携帯が5台で○○円、Wi-Fi代が○○円、
セキュリティ関連費用が○○円・・・」のように決算書の勘定科目を自社のコスト内容に置き換えることで、
「営業マンが減って、携帯が余っているので1台解約しよう」、「他社のWi-Fiに切り替えたら、安くなるのでは?」など
次のアクションが見えてきます。

合わせて、それぞれのアクションによる固定費の削減効果を検討し、優先順位を付けて実行していきます。

同じように売上高の増加についても、分解して細かく見てみましょう。

売上を一段階分解すると「売上=客単価×客数」となります。
更に「客単価=購買点数×購買単価」、「客数=既存客数+新規客数-離脱客数」のようにもう一段階分解できます。

ここまで分けることができれば、「購買点数を増やすためのアクション」、「購買単価を上げるためのアクション」、
「既存客がリピートするためのアクション」、「新規客を獲得するためのアクション」となり、少しずつ具体的になってきます。

売上高の増加に関しては更に細分化していくことで、複数の売上増加策を検討できそうです。

これは別の機会にお伝えするとして、今回は割愛しますが、具体的な改善策が考え付かないときには、
何かしらの切り口で細分化して、検討してみましょう。

中小企業診断士 木戸貴也

2024.09.30

  • 経営改善
  • 経営者の姿勢

過去の栄光に拘るな

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

 

ある程度事業を長く続けている企業であれば、過去に成功を収めた経験のある経営者の方も多いかと思います。

業績が好調で寝る間も惜しんで働き、他社と比較しても自慢できる様な売上を計上し、経営者としては誇らしく、成果を上げたという自負もあるかと思います。

しかし、その過去の栄光にいつまでもしがみついていると、企業の成長は止まり、環境の変化に取り残されてしまいます。

 

 

経営改善の現場で経営者の方とお話をしていると、過去に見た夢をいつまでも追い続け、時代にそぐわない商品・サービスを提供し続けていることがあります。

夢を追うのは良いですが、時代に合わせて柔軟に対応しなければ消費者からはそっぽを向かれ、成長が止まるどころか経営難に陥ります。

 

 

成功体験が強ければ強いほど、その方法に固執しがちです。

しかし、過去に固執すると新たなアイデアや柔軟性が損なわれてしまいます。

その結果、目まぐるしく変化する環境に対応出来ず、競争に敗れてしまうのです。

 

 

SNSの発達前後ではマーケティング手法も異なります。

飲食業界ではコロナウイルスの流行前後で消費者のニーズも大きく変化しました。

これまで通りのやり方ではいつか必ず限界がやって来ます。

創業100年を超える老舗も、商品は変わらずとも売り方は変える等の柔軟さを持って事業を継続しているのです。

 

 

過去の栄光は参考にすべきものではありますが、拘り過ぎて足かせになってしまっては本末転倒です。

市場の変化や顧客のニーズに柔軟に対応し、過去ではなく未来を見据えて次の1歩を踏み出しましょう。

 

 

中小企業診断士 杉本貴弘