2025.06.30

  • 経営改善
  • 経営者の姿勢

中小企業は課題を絞り、突破口をつくるべき理由

皆さん、こんにちは。

 

フラッグシップ代表、中小企業診断士の長尾です。

 

このゴールデンウイーク明けから経営改善(赤字会社の支援)の仕事が多く、私の案件の95%くらい占めていたかとおもいます。

 

支援したすべての会社で「赤字体質」「過剰債務」「債務超過」「売上の減少が止まらない」「利益率が低い」「資金繰りが厳しい」の状態です。

 

他にも人材育成や人材不足など決算書では分からない問題もあるでしょう。

 

どの問題も複雑に絡み合っており、まさに何から手を付けていいか分からない状況です。

 

しかし、このようなお悩みを持っていることは中小企業では珍しくありません。

 

むしろ、経営資源の限られた中小企業ではごく自然な現象です。

 

開き直るわけではありませんが大企業と比べて使えるリソースが圧倒的に少ないなかで、すべての課題に一斉に取り組もうとすること自体が無理なのです。

 

だからこそ、中小企業経営においては「課題を絞り、一点集中で取り組む」ことが極めて重要です。

 

ポイントは、「その課題を解決すれば、他の多くの課題も一緒に解決される」ような、いわば“てこの原理”が働くレバレッジの高いテーマを選ぶことです。

 

例えば、

 

「新規開拓」に集中すると、売上増加はもちろん、営業力の底上げ、社内の活性化にもつながります。

 

「採用力強化」に注力すれば、人手不足解消だけでなく、組織風土の刷新、サービス品質の安定化にも寄与します。

 

このように、「一石二鳥」あわよくば「一石三鳥」が狙えるテーマに集中することが、限られた経営資源を最大限に活かす鍵になります。

 

また、集中して取り組むためには、経営者自身が迷わないことも重要です。

 

課題は次々と湧いてきます。

 

そのたびに方向性を変えていては、組織も疲弊します。

 

「我々は、今は〇〇に集中する」と社内外に明言し、その旗を振り続ける姿勢が問われます。

 

そして集中の期間を区切り、3ヶ月、6ヶ月と時間を決めてやり切ることで、組織に成果と達成感を残すことができます。

 

中小企業にとって、経営は「やらないことを決める勇気」と「今、取り組むべきことを徹底する集中力」の両立です。

 

課題が山積みだからこそ、優先順位を見極め、“多くの成果につながる一手”に全力を注ぐべきです。

 

 

「集中すれば、道は開ける」

 

このシンプルな原理こそ、資源が限られる中小企業が生き抜き、成長するための鉄則なのです。

 

それでは、また次回です。

 

 

 

2025.04.25

  • 経営改善
  • 資金繰り

会社を守れるのは経営者だけ

こんにちは。中小企業診断士の社内です。

 

今回はご支援に携わっている事業者様から私が学んだことを共有したいと思います。

 

資金繰りに困窮している事業者様で、金融機関様に今月から元本返済のリスケジュールを依頼しなければならなくなりました。

経営者様から一度金融機関様に依頼したところ、

「新規融資を出したばかりなので、せめてあと3か月は返してほしい」と断られてしまいました。

 

こちらの企業の毎月の元本返済額は160万円です。

残りの現預金が600万円を切っているのに、3か月も支払ってしまっては会社が潰れてしまいます。

このような危機に、経営者様から出た言葉は「とても言えそうにない。個人資産を使ってでも3か月分返済したい」でした。

 

元本返済のリスケジュールを行うと毎月の返済負担が軽くなりますが、原則新規融資は受けられなくなります。

個人資産の出番がないことが望ましいですが…

経営状態も芳しくない状態なので、今後のいざというときのために個人資産は取っておくべき手段ではないでしょうか。

今後本当に苦しくなった時に社員様を守るための資金です。

社員様の協力を得て経営を改善していくことはできますが、意思決定は経営者にしかできません。

会社の行く末を決めるのは経営者しかいないのです。

また、会社が立ち行かなくなってしまっては金融機関様にとっても貸し倒れになり困ります。

 

経営者様に考え直していただきました。

その後、経営者様が金融機関様の元へ赴いて直接お話をされ、今月からのリスケジュールを了承していただくことができました。

事情は様々あると思いますので一概には言えませんが、経営者の強い意志で状況は変えられるかもしれません。

 

様々な事業者様からお話を伺っていると、会社を立て直すのはまさに背水の陣だと感じます。

どんなに良い施策があっても、経営者様の強い意志がなければ成し遂げられないでしょう。

 

中小企業診断士 社内 愛里

2025.04.16

  • 経営改善
  • 経営者の姿勢

経営者が“経営に本気になる”ために必要なこと

皆さん、こんにちは。
フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

今回は経営者の意識についての話です。
赤字の企業を立て直すにはビジネスモデルを再設計するのはもちろんですが、経営者がこれまでの意識を変える覚悟がなければなりません。

その辺りを最前線で経営改善支援を行っている私が感じたことをまとめてみました。

【赤字企業を変える意識の再起動】
 企業が赤字に陥ったとき、真に問題となるのは財務状態そのものではなく、「経営者の意識」の在り方です。
多くの経営者が、数字に対して鈍感になったり、「なんとかなるだろう」という惰性の経営に陥ってしまっています。
しかし、組織を立て直すためには、まず経営者自身が“本気で経営と向き合う”ことが不可欠です。

では、どうすればその意識転換が起こるのか。以下に、実務的な視点と心理的側面を交えて考察していきます。

 

 

1. 「現実」と「危機」の認識を促す
経営者が経営に向き合わない最大の要因の一つは、「自社の危機に気づいていない」または「見て見ぬふりをしている」ことです。

客観的な数値で現状を“見える化”する
→ 損益、キャッシュフロー、債務超過リスクなどを具体的に分析

もし何もしなかった場合の“未来”を提示する
→ 資金枯渇の時期や倒産リスクを時系列で示す

社外の目(金融機関、取引先、専門家)を通して事実を突きつける
→ 第三者の評価は、当事者に強いインパクトを与える

➡ 経営者自身が“もう逃げられない”と腑に落とすことが、意識改革の第一歩です。

 

 

2. 「本音」から再起の動機を引き出す
赤字経営の中でも事業を続けるのには、何かしらの理由があるはずです。
本音に向き合うことで、再び“やる気の種”を掘り起こせることがあります。

「なぜ今までこの会社をやってきたのか?」を掘り下げる

「何のために事業を続けたいのか?」という問いを自分に投げかける

“生活のため”や“家族のため”も立派な動機になる

➡ 原点を思い出すことで、表面的な危機感ではなく“腹の底からの覚悟”が芽生えることがある。

 

 

3. 「孤独からの脱却」を支援する
本気になれない経営者の多くは、孤独で疲弊しています。支援者や信頼できる人の存在が、再起のきっかけになります。

相談できる右腕・外部顧問・士業の存在を用意する

愚痴や不安も言える安全な対話の場をつくる(定期的な面談など)

「経営に向き合うのは自分一人ではない」という安心感を与える

➡ 経営は孤独との戦いだが、“一緒に向き合う人がいる”と認識できると、前に進む意欲が生まれる。

 

 

4. 「小さな成果体験」を仕組みとして設計する
いきなり黒字化を求めるのではなく、改善の手応えを“体感”できる設計が重要です。

固定費の1割削減、原価率の見直しなど、限定的な改善プロジェクトを実施

数字に表れる前に、社員の声や顧客の反応をフィードバックとして届ける

成果が出たら小さくても大きく称賛する

➡ 「やれば変わる」という実感が、経営に対する本気度を強くしていく。

 

 

5. 「ビジョンの再構築」で未来を描かせる
目の前の赤字にばかりとらわれていると、経営者の視野はどんどん狭くなっていきます。
だからこそ、未来を語れるビジョンの再定義が必要です。

3年後・5年後の「理想の会社像」を言語化するワークを設ける

経営者の“ワクワク”を呼び起こすような問いを投げる(「もし資金や人材が無限にあるとしたら?」など)

社員と共有できる“物語”として構築する

➡ ビジョンが明確になると、経営にエネルギーが戻り始める。

 

6. 「覚悟」を問う最後の問いかけ
すべての働きかけをしても、変わらない経営者もいます。
そのときは、「続けるか、やめるか」という人生の岐路として、経営を再定義させる必要があります。

事業を続けることが、自身と家族、従業員にとって幸せか?

続けるなら、何を捨て、何を守る覚悟があるのか?

「経営者として生きる」ということの意味を再認識させる

➡ 逃げ道を断ち、自らの人生をかけて「本気でやるか」を問う局面が必要になることもある。

 

 

最後に
赤字企業の再生において、最も重要なのは「数字」ではなく、「経営者の意識改革」です。
その改革は、強制や叱責では起こりません。

事実を直視させ、心に火を灯し、伴走することで初めて本気になるきっかけが生まれるのです。

“再生”は技術でなく、覚悟と変化の連続。

その第一歩は、経営者が「もう一度、本気で経営と向き合う」と決意することにあります。

2025.04.02

  • 経営改善

課題を緩和課題と根治課題に分けて経営改善に取り組む

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

経営改善に必要な課題には、解決策が明確に分かっており、今ある経営資源で解決できるものもあれば、企業の置かれている環境や企業内外の関係性を変更しなければならない、新たな知識や技術、ノウハウを導入しなければ解決できない課題があります。

これらの課題の解決に時間軸を加えて、優先順位を付けていく考え方があります。短期的に素早く解決するべき課題を『緩和課題』、長期的にゆっくりと解決していく課題を『根治課題』と言います。

  • 緩和課題
    目の前の問題やリスクを「一時的に軽減・回避すること」を目的とした課題。発生した事象への対処が中心。
  • 根治課題
    問題の「根本原因を特定し、構造的に解消すること」を目的とした課題。仕組みや制度そのものの変更、変革が中心。

緩和課題の特徴は「応急処置的」、「短期的な効果」、「症状の緩和に焦点」などであり、例えば『クレームが増加している➡対応マニュアルを作成、改定する』、『離職率が増加している➡給与体系や福利厚生を改善する』などです。

一方で、根治課題の特徴は「根本的な解決に焦点」、「中長期視点でのアプローチ」、「本質的な変革・改革が必要」などであり、例えば『クレームが増加している➡サービス提供プロセスやサービス内容そのものの見直し』、『離職率が増加している➡組織文化や職場環境の再構築』などです。

これらの使い分けですが、時間軸(短期OR中長期)だけでなく、課題の対象(表面的OR根本的)、期待する効果(一時的OR持続的)も含めて、判断していきます。

また、緩和措置だけでは、再発リスクが強く、根治措置には、時間面、投資面でのコスト負担が大きいことが多いことにも留意しなければなりません。

これらの課題を段階的、戦略的に組み合わせることで、経営改善に取り組んでいきましょう。

中小企業診断士 木戸貴也

2025.04.01

  • 経営改善

収益構造を理解することで経営者の行動が変わる

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

経営者の多くは、肌感覚で収支がトントンになる売上水準を持たれています。特に創業者の場合は、非常に高い精度で理解されているように感じます。

一方で、決算書や試算表の損益計算書で実際に収支がプラマイゼロの売上を算出している方は非常に少ないです。

実際に、経営改善を進めていく中で、タイミングを見て経営者や幹部社員、後継者の方々と一緒に損益分岐点売上高を算出し、目標利益(借入金の返済も加味して)を達成するための売上高を出していくと現状の売上から30%とか50%くらいの増収がないことには、そもそも収支トントンにならないケースが大半です。

ひどい場合、現状の3倍の売上が理論上必要なケースもあり、現在のビジネスモデルでは到底不可能な状態です。

この現状を把握されると経営者の行動が変わる場合が多いです。

ただ現状を知るだけではあるのですが、例えばダイエットをするのであれば、久しぶりに体重計に乗ったら思っていた以上に体重や体脂肪率が増えており、びっくりすると食事や運動などに自然と気を付けるようなイメージです。

「自社のことだから、経営者の自分が一番理解している」のかもしれませんが、意外と自分のことを客観的に理解できる方は少ないと思いますので、まずは自社の収益構造がどのようになっているのか、何が利益に貢献していて、何が足を引っ張っているのか、どこにどのように手を打てば改善できるのかを知ることだけでもおススメします。

中小企業診断士 木戸貴也