2024.07.24

  • 事業再生
  • 経営者の姿勢

赤字体質に悩む経営者の特徴と効果的な処方箋

皆さん、こんにちは。

フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

6月、7月、8月とバンクミーティングとセミナー講師が続いており、その準備や対応に追われております。

バンクミーティングのほとんどは元本返済の猶予や返済方法についての協議で、対象となっている企業の財務状態は正直厳しいです。

直接的な窮境原因は様々ですが、驚くことに会社が傾いた背景や経営者の癖、行動特性は共通しています。

 

私は、20年にわたってこの仕事をしていますので、経営者の特徴や行動特性についての重要性は理解しており、経営顧問や経営改善の現場で実践的な指導を行っています。

 

今回は、傾いた会社の共通項をお伝えしますので、1つでも当てはまるようなことがあれば反省し、反面教師として今後に生かしていただければと思います。

 

1.経営者が経営の勉強をしない
 まず、経営者が経営の勉強をしないということです。経営とは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の配分を繰り返して成果を上げていくことだと定義できますが、その範囲は多岐にわたり、複雑ですので勉強が欠かせません。しかし、赤字の経営者のほどは飲み歩く、贅沢をする、従業員を安く雇う、賞与を出さず、税金も納めずという特徴があります。そのスタンスで経営すると、拡大成長ができないまま、借入に依存した経営になります。勉強をしないことのダメージは想像を絶するほど大きいのですが、残念ながらそれすらも気づいていないのがほとんどです。

 

2.金融機関から限界まで借りて、融資を断られてから事態の重さに気づく
 赤字で資金が不足した時、収益性の改善には全く取り組まない一方で、融資を申し込む動きは迅速かつ積極的に行います。損益計算書に原因があるにもかかわらず、「融資を申し込んで資金を補填して終わり」というのが赤字の会社の経営戦略です。収益改善は非常に時間もかかり労力も要しますので、金融機関からお金を借りるという楽な道に逃げます。
そして、いよいよ借りることができなくなってから、初めて「事の重大さ」に気づきますが、楽な道しか経験していませんので、私が指導する内容に取り組む精神力や耐性が全くありません。

 

3.顧問税理士や外部環境に原因を求める他責思考
 「自分のやり方が間違っていた。これからはしっかり勉強して立て直す」という経営者はほとんどいません。
「税理士が何も教えてくれない」「コロナが・・・」など、とにかく言い訳が多いです。経営者は全ての責任を負っており、言い訳が許されないということを知りません。時々、小学生と話をしているのかと思う時もあります。他責思考から自責思考への変換ができれば、すべてが上手く行くのですが・・・。プライドが邪魔をしているのか、本当に自分に責任がないと思っているのか分かりませんが、こういう経営者を支援するのは本当に大変ですし、私以上に従業員が大変でかわいそうと思ってしまいます。

4.試算表がない
 赤字の会社には試算表がありません。数字を見ずに経営しています。数字を見ずに経営をするということは、前を見ずに車を運転するようなもの、計器がない飛行機を飛ばすようなものです。よほど自分に自信があるのか、それとも何も考えていないのかは分かりませんが、多くの場合その両方のように思えます。そして「試算表を作成しましょう」と決定しても試算表が出てくることはありません。

 

5.創業以来ほとんど利益がない
 「コロナでおかしくなった」という会社の決算書を10年前から見ると、コロナ前から赤字であることが分かります。結局、1回もまともな利益を計上したことがなく、融資を受けるためにテクニックでちょっと黒字にした経験があるだけで、慢性的な赤字体質であるケースがほとんどです。

 

 

これら5つの特徴は弊社に支援を求めるほぼ全ての会社で複数個当てはまります。

 

私からこうした事態に陥らずに強い会社を作る、非常に簡単で効果的な処方箋がありますので、それをご紹介しましょう。

まずは「会社を良くしたい」「資金繰りに苦しみたくない」と強く願うことです。

 

そして、いますぐに「経営の勉強をする」ことです。

 

毎日朝早く出社し、お客様や社員をよく観察し、自社の製品やサービスについて疑うことから始めましょう。

 

劇的な変化は日々の何気ない積み上げから発生するものです。

 

それでは、また次回です。

 

2024.07.22

  • バンクミーティング
  • リスケジュール
  • 経営改善
  • 資金繰り

金融機関に依頼すべきは追加融資?借換?それともリスケ?

こんにちは、中小企業診断士の谷です。

 

最大5年の据置期間が用意された新型コロナの緊急融資の元本返済の開始が本格化している今、その元本返済に耐えられず、資金繰りが圧迫している企業が徐々に増えております。

 

弊社にも、他の理由を含め、「最近資金繰りに困っている」、「今月の資金繰りが厳しい」、「来月資金ショートしそう」など、非常に状況が厳しい企業のご相談が寄せられます。

 

今回は、据置期間の終了への対策として「借り換え」「新規融資」「リスケ」など複数の金融支援についてご説明します。

 

具体例として以下のようなケースの企業を考えます。

・借入A(借入残高1,000万、毎年の元本返済200万、返済期間5年、※据置期間終了)

・借入B(借入残高1,000万、毎年の元本返済200万、返済期間5年、※据置期間終了)

通常に返済が開始すると、5年で借入による手持ち資金がなくなります。

 

【①借り換え】

既存の借入A,Bを、新たな借入Cに集約するパターンです。返済期間を10年に延ばしたことで、毎月の返済額を抑え、手持ちの現金の流出を抑制します。

 

【②増額借り換え】

先ほどの単純な借り換えと同時に、増額融資を受けたパターンです。

 

では、「①同額借り換え」「②増額借り換え」どちらを選ぶべきでしょうか?

 

1つの判断軸として、手持ち資金(借入残高)の減り具合に着目します。

「②増額借り換え」の方が、残高の減り具合が鈍いため、手持ちの資金量が多く、資金繰り対策としては有利であるといえます。

 

【③追加融資】

借入A、Bは、予定通り、そのまま元本返済を行いながら、新規融資を受けたパターンです。毎年のキャッシュアウトは大きくなりますが、手持ち現金が増えるため、資金繰りが改善しているといえます。

 

では、「②増額借り換え」と「③追加融資」では、どちらを選ぶべきでしょうか?

 

こちらも同様に、手持ち資金の減り具合に着目すると、「②増額借り換え」の方が、手持ちの資金量が多く、資金繰り対策としては有利です。

 

(※借入額が増加すると支払利息も増加するため、上記の順序が必ずしも最適とは限りません。)

 

【④リスケジュール】

最後に、元本返済猶予によって、5年後から返済を開始するパターンです。

 

注意が必要なのはリスケです。

 

上記の理屈でいくと、手持ち現金を多く持てるリスケも有利に見えますが、リスケをすると新規融資を受けることが極めて難しくなります。(ほとんど不可です。)

目先の元本返済を止められるからといって安易にリスケに走るのは得策ではありません。

 

したがって、まずは銀行には融資を相談し、それが難しい場合にリスケを依頼するのが基本戦略になります。

 

ただし、元本返済により手元の現金が流出し、事業継続を余儀なくされている緊急事態の場合や、追加融資が受けられない場合は、早急にリスケ対応が必要なケースもあります。(※リスケをする際は、取引している全金融機関に対し、経営改善計画書を作成・提出し、全員の合意が必要となります。)

 

 

今回はとても簡単な事例でご紹介しましたが、実際は複数の金融機関と取引があり、借入の口数、残高、協会保証の有無、担保の有無などの既存の借入状況、資金繰り状況、金融機関との関係など様々な要素を考慮し、最適な銀行交渉の方法をご提案いたします。

そして、企業が緊急事態の場合は経営改善計画書を作成し、合意形成までご支援いたします。

 

中小企業診断士 谷 七音

2024.07.19

  • 経営改善

損益分岐点とは

 

ビジネスアナリストの社内です。

 

今回も「経営を学び、地道な改善を継続しろ」から一つ選んでお話しする回です。

もう少し続きますが、お付き合いください。

 

今回は「損益分岐点」についてです。

 

損益分岐点とは、事業を営む上で一つ大きな指標となる値と言えます。

 

どのくらい売上を獲得できれば、黒字になるのか、売上と費用がちょうど一致する額が損益分岐点です。

売上を上げて利益を少しずつ積み重ね、利益によって固定費をすっぽりカバーできるようになる点です。

 

つまりどういうことなのか、パン屋さんで例えてみましょう。

 

固定費とは以前のコラムでもお話ししましたが、

レジの従業員様のお給料や家賃など売上が一円も発生しなくても発生する費用です。

 

一方で、変動費は売上に比例して発生する費用です。

売上が2倍になれば、変動費も2倍かかります。

パンを2個売るには小麦も卵も2倍必要ですが、レジのお姉さんは2人はいりませんね。

 

企業は売上から利益を少しずつ積み重ねて、変動費だけでなく固定費も賄えるように売上計画を立て、達成を目指さなければなりません。

 

そこから、株主に還元したりする企業もありますから、利益とはまさに乾いた雑巾を絞ることだと感じます。

 

社内愛里

2024.07.11

  • 事業再生
  • 経営改善
  • 資金繰り
  • 資金調達

経営改善サポート保証(感染症対応型)が延長されました

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

先日の木戸の投稿にもあったように、コロナ禍における民間金融機関の中小企業向け資金繰り支援は段階的に終了し、新型コロナセーフティネット保証4号や伴走支援特別保証(コロナ借換保証)はこの6月末をもって終了しました。

 

ただし、経営改善サポート保証(感染症対応型)は12月末まで半年間延長されております。

 

経営サポート保証制度(感染症対策型)は、従来の経営改善サポート保証制度の据え置き期間を最大5年間に緩和した上で、保証料の企業負担を大幅に引き下げるものとして2021年4月から開始されました。

 

 

この制度は、感染症の影響を受けた中小企業が経営改善計画を策定し、その取り組み後押しするための制度です。経営改善計画については、信用保証協会による経営サポート会議や中小企業活性化協議会等の支援による経営改善計画のほか、認定支援機関が経営改善計画策定支援事業によって策定した計画についても、全債権者の同意を得ることが出来れば対象とすることが出来ます。

 

コロナ関連の資金繰り支援は経営改善サポート保証(感染症対応型)に一本化された形となり、企業の今後の資金調達の際には経営改善計画の策定が必要となってくるでしょう。

 

弊社では関西をはじめとして、全国の事業者様の経営改善計画の策定支援を行っております。

無料経営相談も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

お問い合わせはこちら

中小企業診断士 杉本貴弘

2024.07.08

  • 経営改善
  • 資金繰り

勘ピューターのOSをアップグレードする

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。新型コロナ関連の融資支援策も段階的に終わり、6月末には繰り返し延長されていた伴走支援型特別保証も新規受付を終了しました。

 

本日も保証協会や金融機関の方と話していたのですが、どの方とお話してもリスケジュールが増えていると話されています。TDBやTSRなどの統計情報などでも倒産やリスケが増えていることは記事にもなっており、現在の経済環境下を考えると外部環境による飛躍的な改善は期待ができないと腹をくくった方が良さそうです。

 

一方で、コロナ禍でも経営改善を進めている会社や赤字になることなく黒字を継続している会社があるのも事実です。業種や企業規模に関わらず業績が良い、良くなっている企業には共通点があるものです。

 

ここでは、外部環境(例えば、半導体関連で需要が増えた、コロナ禍での宅配需要が増えたなど)による要素は除いて考えていきます。

 

まずは、業績管理、資金管理が徹底されていることです。

 

過去のコラムでも述べていますが、赤字の会社、自転車操業の会社は総じて試算表の作成ができていません。特に無料相談で来られる方、公的支援で訪問した方で、毎月しっかりと試算表が作成でき、それを分析して対策を講じている企業は1社も無かったです。あくまで試算表は過去のことで、そこから未来は見えませんが、過去の微修正は早ければ早いにこしたことはありません。

 

また、良くあるのが、社長の頭の中では収入と支出が計算されており、そこでは収支が黒字になっているケースです(社長の頭の中で黒字なだけであって、実際の損益はマイナスであり、資金繰りは厳しくなっています)。

 

このパターンは厄介なことが多く、試算表を作って損益、貸借の状況を確認し、対策を考えなければならないことを理解してもらいにくいです。口ではやりますと言いますが、次の面談時に試算表を持参いただけるケースはレアです。

 

社長の頭の中(言い換えれば、勘ピューターでしょうか)を否定しているわけではなく、むしろその感覚を大切にする考えを持っています。

 

重要なのは、頭の中の感覚と試算表での損益やキャッシュの増減を擦り合わせることで、勘ピューターの精度をあげてほしいのです。

 

ただ、「試算表を税理士からもらっても何を見ればいいのかな?」、「税理士からアドバイスがあるけど腹落ちしていない」と言う経験も試算表を作らなくなるキッカケになっているかもしれません。

 

試算表を正しく理解し、自社にとって重要なポイントはどこなのか、どの数字を追っかけていけば改善できるのか等を知り、実際に業績を改善していくためには、第三者の意見を聞くのも一手です。

 

たかが試算表ですが、されど試算表です。ルールを決めてしまえば、毎月の試算表作成のハードルは決して高くありません。

 

業績、資金繰りでお悩みであれば、一度立ち止まって、客観的に自社の業績を把握されてみてはいかがでしょうか。

中小企業診断士 木戸貴也