2024.10.31

  • 経営改善

ポジショニングマップで自社の立ち位置を確認する

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

中小企業が日々繰り広げられる激しい市場競争の中で生き残っていくには、漠然と大企業を相手に価格競争をしていても勝ち目はありません。市場の中で自社の明確なポジションを確立することが重要です。

 

ポジション確立の前段階として、市場での自社の立ち位置を確認するのに有効なツールが「ポジショニングマップ」です。

 

ポジショニングマップは、縦軸と横軸に異なる属性(「価格」や「品質」など)を設定し、競合他社と比較して自社の製品やサービスがどこに位置するのかを示す図表です。

 

ポジショニングマップを使うことで、自社がどのようなポジションにいるかを視覚的に確認し、どのような差別化ポイントが求められるのかが明らかになります。

 

また、新商品の開発やサービスの改善においては、今後どの方向(ポジション)に進むべきかを考える際に役立ちます。

 

競合が数多くひしめき合っているポジションから、競合の存在しない空白のポジションに進出することで、競争を回避することができます。(顧客がいないために空白になっているケースもあるので注意が必要)

 

自社のポジションに応じて、誰に何を訴求するかといったブランデクイングの方向性も見えてきます。低価格でありながら質が高いといった「お得感」を打ち出すことや、高価格だが拘りぬいた材料を用いた製品により「コアなファン」をターゲットするなど、低価格路線に走りがちな戦略を見直すきっかけとなります。

 

 

具体的なポジショニングマップの作り方は次の通りです。

 

①軸を決める

自社の製品やサービスの特徴や差別化ポイントを考慮して、縦軸と横軸を設定します。たとえば、「価格」と「品質」や「手軽さ」と「デザイン性」など、業界や市場に適した軸を選びます。

 

②競合の配置

自社と競合他社の製品やサービスを評価し、マップ上に配置します。たとえば、A社が高価格で高品質な商品を提供している場合は右上に配置し、自社が中価格・中品質なら中央に配置するなど、一目見てポジションがわかるように表示します。

 

③自社の位置を確認する

マップ上で自社の位置を確認し、競合との差異や優位性がどういった点にあるのかを考えます。また、ポジショニングマップをもとに差別化の方向性の検討や具体的な行動を計画します。

 

 

ポジショニングマップは、企業の今後の戦略の方向性を考える上で非常に有効なツールです。経営改善においても、企業の現在の立ち位置を確認し改善の方向性を探る際に用いります。

市場での優位性を強化し顧客にとって価値ある存在となるために、ぜひポジショニングマップを作成し、活用して頂ければと思います。

 

中小企業診断士 杉本貴弘

2024.10.28

  • 経営改善

行動計画-経営改善を進め、目標達成の最強ツール-

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

経営や仕事に関するフレームワークは日々、新たなものが生み出されており、
新しい切り口、新しい使い方、新しい論点が取り入れられています。

一方で、何十年も前から変わらず最前線で活躍しているフレームワークもあります。

その1つに『PDCAサイクル』があり、あまりにも有名なため、
学生時代や新入社員研修などでも聞いたことがある方も多いと思います。

このPDCAサイクルと合わせて活用することで最強のツールとなるのが、『アクションプラン(行動計画)』です。

こちらも最前線で活躍するツールの1つであり、
目標達成に向けて考えたことがある方もいらっしゃるかと思います。

アクションプランとは、目標を達成するための具体的な行動計画であり、目標を達成するために必要な要素やタスクを検討し、
『いつ、誰が、何を、どこで、何故、どのように、どの程度』などを明確にすることで、目標達成の可能性を高めていきます。

経営改善計画がしっかりと実行され、効果がでるかどうかは、このアクションプランをどれだけ本気で作り込み、
本気で実行しているかが重要です。

アクションプラン作成の目的や検討すべき論点、考え方、作成の手順をしっかりと理解し、
経営者や責任者が主体的に取り組むことが重要です。

また、進捗状況を確認し、チェックとアクトを繰り返すことで、経営改善を前に進めていきます。

PDCAサイクルやアクションプランは、ありふれたツールではありますが、シンプルで分かりやすく、
実行性・再現性も高いことから、目標を達成するための最強ツールと考えています。

中小企業診断士 木戸貴也

2024.10.23

  • 経営改善
  • 経営者の姿勢

決算書と経営者の関係

皆さん、こんにちは。フラッグシップ経営の長尾です。

最近は新規の経営改善案件が立て続けに来ており、毎日、決算書を拝見しています。

 

実は決算書には経営者の性格が反映されており、決算書を見ただけで経営者と会わなくてもどんな考え方をしているかはイメージできます。

また、逆もしかりで決算書を見なくても経営者と話をしているだけで、決算書はこうなっているだろうなとイメージすることもできます。

 

今回は経営改善の最前線に立つ私が自信をもってお伝えする「決算書と経営者の関係」をご紹介しましょう。悪い事例ばかりですので、読者の皆さんはその逆をしていただきたく思います。

 

【その1】貸借対照表の資産の部が三角形やひし形になっている場合は経営者の性格は見栄っ張りでプライドが高い

【解説】

資産の部が三角形(△)ということは現預金や売掛金などの「流動資産」が小さく、「固定資産」や「投資その他の資産」が大きいことを意味します。ひし形(◇)は「流動資産」と「投資その他も資産」が小さく「有形固定資産」が大きいことを示しています。

要は、お金がないにもかかわらず、派手な車や会員制リゾートなどを買っているということです。堅実な経営者は資産の部が逆三角形(▽)になっています。つまり現預金が大きく、本業に注力しているので売掛金も大きいということです。資産の部の形状を見れば経営者の性格が分かります。

 

 

【その2】「節税のために○○している」とすぐに口に出す経営者は過去にも節税するほど利益を出したことがない。そのため自己資本比率が低いか債務超過である。

【解説】

「節税する」ということは「利益が出て仕方がないので何か考えないといけない」ということだと思うのですが、そんな経営者は極めて少数です。実際のところ、すぐに「節税のために○○している」という経営者は節税を考えるほど利益を出したことはありません。そればかりか節税しているとアピールする割には資金繰りが忙しいです。また、節税対策の中身は自分の私腹を肥やすための取り組みで、実は節税しない方が運転資金は残っていたケースがほとんどです。また、節税アピールする人は資金調達に追われているため、保証協会の制度や金融機関の顔色などに神経を使っています。「節税」というワードが出た瞬間に運転資金に忙しい人と認識して間違いないですし、実際に運転資金は極めて少ないです。

 

 

【その3】「コロナで大変だった。コロナ以降、赤字で苦しんでいる」という経営者はそれ以上にコロナ融資で助かっていることが多い。また、過去10か年の決算を確認するとコロナ前から赤字体質である。

【解説】

「コロナで経営が狂った」という経営者も一定数います。しかし、それ以上にコロナ融資を満額受けたおかげで、内心「助かった」と思っています。コロナがなければ融資は絶対に受けることができなかった企業は相当数あります。また、コロナ前から赤字体質の経営者に限って、「コロナのせいで・・」と責任転嫁します。とにかくコロナを言い訳にする会社の決算書は、コロナ以前から赤字です。

 

 

いかがでしょうか。

決めつけることは当然できませんが、傾向という意味では的を外していません。

少なくとも私が支援をしているケースではほぼ当てはまります。

 

決算書は経営者の通信簿ですし、数字は背景を語ってくれます。

 

会社経営をする者にとっては何を言おうが、言い訳しようが結果がすべてです。

私も利益が出れば役員報酬を上げますし、赤字であれば下げます。

 

決算書をよくするために働くわけではないですが、自分たちのビジネスを定量的かつ客観的に評価できるのは決算書しかありませんので、経営者自身の判断が決算書にどのようなインパクトを与えるかは考えて意思決定しましょう。

 

それでは、また次回です。

2024.10.18

  • 経営改善
  • 資金繰り

CCCを見直しましょう。

こんにちは、ビジネスアナリストの社内です。

 

CCCとは、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの略です。

企業が商品や原材料の仕入れなどによって投入した現金を、実際の現金収入によって回収するまでの期間を示す財務指標です。

つまり、CCCは企業の資金回転サイクルの効率性を意味しています。

このCCCが長いほど、資金を回収するまでの期間を要し、資金繰りが苦しくなりやすいです。

そのため、資金に余裕のない企業ほど、CCCを見直す必要があります。今回は、CCCを短期的に短くする方法を2つ紹介します。

 

1.受取サイトの短縮化を交渉する

受取サイトとは、お客様から受けた売上債権が実際に入金されるまでの期間を指します。

資金繰りが苦しい会社にとっては、受取サイトは短い方が良いです。

 

<交渉の例>

  • 手形取引ではなく、債券取引・現金取引を目指す

手形取引は、売上債権による取引に比べ、サイトが長期化する傾向にあります。

中小企業庁では、2026年度末の手形の利用廃止に向けた取り組みを進めています。

この情勢に乗って、手形から売上債権や電子記録債権、現金取引への移行を目指した交渉に取り組んでいきましょう。

また、100%手形支払いを半手半金(手形と現金が50%ずつ)にしてもらうなど工夫した提案も有効です。

 

  • 前払金を納めてもらう

大型設備の生産や工事を伴う受注である場合、一般にCCCは長期化します。

受取サイト自体を短くできなくても、一部仕入費用に対する前払金を納めてもらうことも資金繰りに有効な策です。

 

 

 2.支払サイトの延長を交渉する

支払サイトは仕入先や外注先に対する仕入債務や振り出した手形の支払期日を指します。

資金繰りが苦しい会社にとっては、支払サイトは長い方が好ましいです。

 

<交渉の例>

  • 一時的な延長措置をお願いする

3か月程度であれば支払サイトの延長を取引先に受け入れてもらいやすいです。

支払期限が到来してから依頼すると、仕入先の信頼を損ねる恐れがあります。また、仕入先の資金繰りにも支障をきたしかねません。前持った交渉が大切です。

 

  • 取引先を増やす

仕入先を複数持ち一社に対する依存度が低い方が、取引条件において自社が優位になりやすいです。

そうすることで、支払サイトの条件の交渉を飲んでもらいやすくなります。

 

ただし、無理な受取サイトの短縮、支払サイトの延長は取引先との関係性の悪化を招きかねません。

業界内の一般的なサイト期間からかけ離れないように気を付けましょう。

特に、下請け企業に対する支払サイトは、下請代金支払遅延等防止法など法的規制もあり、注意が必要です。

ビジネスアナリスト 社内 愛里

2024.10.08

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  • 経営改善

経営改善計画における損益計画の考え方

こんにちは中小企業診断士の谷です。

今回は経営改善計画における損益計画の考え方について解説します。

経営改善計画とは?

経営改善計画とは、事業の資金繰りや経営の課題を解決することを目的として、経営改善のための具体的な施策や実施時期などを記載した計画です。
経営改善計画の目的は、次のとおりです。
  • 金融機関から金融支援を取り付ける
     
  • 自社の事業が改善する可能性を社外に示す
     
  • 事業の継続と金融取引の正常化を実現する
     
経営改善計画は、金融機関から新規借入依頼や借入返済のリスケジュール依頼をするときに提出を求められることが一般的です。

よくあるNG例:返済額から逆算するバラ色の計画

経営者が陥りがちな間違いの一つに、「返済額から逆算して売上高を設定し、バラ色の計画を作成する」ことがあります。これは銀行との交渉において見栄えは良いかもしれませんが、実際の経営改善にはつながりません。合意が取れても、経営状況が改善しなければ問題を先送りすることになり、最悪の場合、倒産に至る可能性もあります。

現実的な損益計画の重要性

もちろん、返済額を基にある程度の利益目標を設定することは大切です。しかし、これを絶対的な基準にするのではなく、現実的な損益計画を作成する必要があります。返済に必要な利益を確保しながら、銀行とも現実的なラインで交渉していくためには、慎重な計画作成が求められます。

銀行員が見るポイント:実現可能な計画かどうか

銀行が経営改善計画を評価する際、特に注目するのは次の3点です。

1.売上計画は実現性が高いか?

売上が確実に見込める計画かどうかは、非常に重要です。過去の売上推移や受注見込みをもとに、現実的な売上目標を立てる必要があります。

売上計画は、「①成り行き」と「②α(努力)」に分けて考えると良いでしょう。

①成り行き:過去の売上傾向や窮境要因が取り除かれた場合の売上、または受注見込みの案件など、自然な推移に基づいた売上を予測します。

②α(努力):内部要因(新商品の投入、営業強化、値上げなど)や外部要因(市場の拡大、競合の減少など)を考慮し、追加の努力によって達成可能な売上を上乗せします。ここで、数字や具体的な根拠を明確にすることが重要です。

2.コストは最適化されているか?

コスト削減の余地があるか、固定費や変動費の見直しが行われているかも、銀行が注目するポイントです。

コスト計画を見直す際、まずは「成り行き売上」を基に損益分岐点を計算し、固定費の削減を検討します。固定費の削減が難しい場合には、変動費(原価率)の見直しや売上の向上による対策も併せて検討します。

3.利益を確保できるか?

結果として、利益がしっかり確保できているかどうか。銀行が納得できる返済能力を示すためには、具体的な利益の見通しが必要です。

まとめ

損益計画は、ただの数字の羅列ではなく、企業の現実に即した「実現可能な計画」でなければなりません。バラ色の売上目標を掲げても、現実の経営改善には結びつきません。外部コンサルタントとともに、現実的な計画を立てることで、銀行との交渉もスムーズに進みやすくなります。

我々が計画作成のご支援をさせて頂くときはこのような考えかたで、数値計画、アクションプラン(行動計画)を作成していきます。同じ目線、捉え方をもって経営改善に取り組めたらと思います。

中小企業診断士 谷 七音