2024.07.31

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  • 経営改善
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改善計画が未達の場合どうなるか

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

バンクミーティングを経て合意を得た経営改善計画については、認定支援機関が引き続きモニタリングを行い、計画の進捗確認や遂行を促します。

 

もし、モニタリングの結果、計画を達成が見込めない場合どうなるかという点を気にされる企業様も多いかと思います。

 

策定した実抜計画・合実計画の改善計画の達成が見込めない場合は、実質債務超過額の解消や債務償還年数についても当初計画の期間内の達成が困難になると考えられます。

全て個別対応となりますが、支援機関は取引金融機関と情報共有を行い、対応策を検討することとなります。

 

計画と実績の乖離が軽微であり、再度リスケジュールの支援により計画への復帰が可能と見込まれる場合は、取引金融機関の同意を得て再リスケジュールを検討します。

一方で、リスケジュールの支援では計画への復帰が見込めない場合については、計画の見直しを行い、再策定の検討となります。

ただし、実抜計画・合実計画の要件を満たす計画が困難となった場合は、抜本的な取り組みを用いた計画の策定が必要となります。

 

改善計画が暫定計画であった場合は、支援機関のアドバイスを受け、施策項目について1つ1つ個別に改善に取り組みます。

それでも計画と実績の乖離が大きい場合は、抜本的に事業再生が必要となると考えられます。

暫定リスケの場合、事業再生に取り組む準備期間として3年程度の猶予期間を与えられていることから、計画が達成できない場合は事業の継続可能性について疑義が生じていることとなります。

この場合、フリーキャッシュフローがプラスであれば返済原資を生み出していると考えられることから、まだ再リスケジュール等の検討の余地はあります。

しかし、フリーキャッシュフローがマイナスの場合は、事業継続が困難であると考えられ、金融機関からは事業を続けていても回収が見込めないと判断されることとなり、廃業の選択肢も浮かび上がってきます。

 

改善計画の未達の場合、金融機関からは非常に厳しい評価をされると言って良いでしょう。

金融機関からの評価のために事業を行う訳ではないですが、経営改善には本気で、全力で取り組まなければ、手遅れになってしまいます。

 

中小企業診断士 杉本貴弘

2024.07.31

  • 経営改善

先代経営者の経営結果を数値で客観的に知りたい

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

 

中小企業の経営者にとって、最も熱量が高い瞬間の1つは、会社を創業・設立した時なのではないかと思います。

 

一方で、開業率は長期トレンドで低下しており、新しい企業の経営者になる方よりも事業承継で既存企業の経営者になる方が圧倒的に多いのが現状です。

 

この事業承継時での後継者の思いは、創業者が創業した時とは異なるものかもしれませんが、代表者が変わるタイミングも経営者の熱量が特に高い瞬間に1つです。

 

創業時とは違い、事業承継後の新経営者には比較対象となる会社の実績があります。

 

先代や先々代の実績であり、端的には当時の決算書と比較すると計数面での良し悪しが判断できます(もちろん、各決算期の時代背景の影響もあり、単純に経営者の手腕だけのものでもありませんが)。

 

事業承継の際、新経営者となる後継者の実子や従業員の方などからは、『先代の経営が良かったのかどうかを数値で知りたい』との要望されることがあります。

 

ものづくりの技術や取引先との交渉力、新商品の開発力など定性的なことは、一緒に仕事をしている中で理解をされているのですが、経営の結果がどうなのかを気にされているようです。

 

特に代表的な経営者の成績表は、貸借対照表であり、経営者のクセ、正確、姿勢などが色々な項目に表れます。

 

ただ、みなさん共通するのは、先代を責めたいとか悪いところを知りたいとか、マイナスな動機ではなく、「どこが良くて、何が足りていないのか」を知り、自分の代で何をしていくべきなのかの1つの判断材料にするというプラスの動機です。

 

現在の経営状態を客観的に知る方法として、経営診断を受けるという選択肢があります。

 

経営診断は、公的機関(保証協会とか商工会議所など)で無料、低価格で受けられることもありますし、弊社の様な民間コンサルティング会社へ依頼する方法もあります。

 

事業承継の準備段階や事業承継後に経営改善に取り組むことは良くあります。

 

後継者に渡す前に良くしたい、今までよりもっと良くしたいなど思いは様々です。

まずは、現状値を客観的に知ってみることも検討してみてはいかがでしょうか。

 

中小企業診断士 木戸貴也

2024.07.24

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赤字体質に悩む経営者の特徴と効果的な処方箋

皆さん、こんにちは。

フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

6月、7月、8月とバンクミーティングとセミナー講師が続いており、その準備や対応に追われております。

バンクミーティングのほとんどは元本返済の猶予や返済方法についての協議で、対象となっている企業の財務状態は正直厳しいです。

直接的な窮境原因は様々ですが、驚くことに会社が傾いた背景や経営者の癖、行動特性は共通しています。

 

私は、20年にわたってこの仕事をしていますので、経営者の特徴や行動特性についての重要性は理解しており、経営顧問や経営改善の現場で実践的な指導を行っています。

 

今回は、傾いた会社の共通項をお伝えしますので、1つでも当てはまるようなことがあれば反省し、反面教師として今後に生かしていただければと思います。

 

1.経営者が経営の勉強をしない
 まず、経営者が経営の勉強をしないということです。経営とは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の配分を繰り返して成果を上げていくことだと定義できますが、その範囲は多岐にわたり、複雑ですので勉強が欠かせません。しかし、赤字の経営者のほどは飲み歩く、贅沢をする、従業員を安く雇う、賞与を出さず、税金も納めずという特徴があります。そのスタンスで経営すると、拡大成長ができないまま、借入に依存した経営になります。勉強をしないことのダメージは想像を絶するほど大きいのですが、残念ながらそれすらも気づいていないのがほとんどです。

 

2.金融機関から限界まで借りて、融資を断られてから事態の重さに気づく
 赤字で資金が不足した時、収益性の改善には全く取り組まない一方で、融資を申し込む動きは迅速かつ積極的に行います。損益計算書に原因があるにもかかわらず、「融資を申し込んで資金を補填して終わり」というのが赤字の会社の経営戦略です。収益改善は非常に時間もかかり労力も要しますので、金融機関からお金を借りるという楽な道に逃げます。
そして、いよいよ借りることができなくなってから、初めて「事の重大さ」に気づきますが、楽な道しか経験していませんので、私が指導する内容に取り組む精神力や耐性が全くありません。

 

3.顧問税理士や外部環境に原因を求める他責思考
 「自分のやり方が間違っていた。これからはしっかり勉強して立て直す」という経営者はほとんどいません。
「税理士が何も教えてくれない」「コロナが・・・」など、とにかく言い訳が多いです。経営者は全ての責任を負っており、言い訳が許されないということを知りません。時々、小学生と話をしているのかと思う時もあります。他責思考から自責思考への変換ができれば、すべてが上手く行くのですが・・・。プライドが邪魔をしているのか、本当に自分に責任がないと思っているのか分かりませんが、こういう経営者を支援するのは本当に大変ですし、私以上に従業員が大変でかわいそうと思ってしまいます。

4.試算表がない
 赤字の会社には試算表がありません。数字を見ずに経営しています。数字を見ずに経営をするということは、前を見ずに車を運転するようなもの、計器がない飛行機を飛ばすようなものです。よほど自分に自信があるのか、それとも何も考えていないのかは分かりませんが、多くの場合その両方のように思えます。そして「試算表を作成しましょう」と決定しても試算表が出てくることはありません。

 

5.創業以来ほとんど利益がない
 「コロナでおかしくなった」という会社の決算書を10年前から見ると、コロナ前から赤字であることが分かります。結局、1回もまともな利益を計上したことがなく、融資を受けるためにテクニックでちょっと黒字にした経験があるだけで、慢性的な赤字体質であるケースがほとんどです。

 

 

これら5つの特徴は弊社に支援を求めるほぼ全ての会社で複数個当てはまります。

 

私からこうした事態に陥らずに強い会社を作る、非常に簡単で効果的な処方箋がありますので、それをご紹介しましょう。

まずは「会社を良くしたい」「資金繰りに苦しみたくない」と強く願うことです。

 

そして、いますぐに「経営の勉強をする」ことです。

 

毎日朝早く出社し、お客様や社員をよく観察し、自社の製品やサービスについて疑うことから始めましょう。

 

劇的な変化は日々の何気ない積み上げから発生するものです。

 

それでは、また次回です。

 

2024.07.22

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金融機関に依頼すべきは追加融資?借換?それともリスケ?

こんにちは、中小企業診断士の谷です。

 

最大5年の据置期間が用意された新型コロナの緊急融資の元本返済の開始が本格化している今、その元本返済に耐えられず、資金繰りが圧迫している企業が徐々に増えております。

 

弊社にも、他の理由を含め、「最近資金繰りに困っている」、「今月の資金繰りが厳しい」、「来月資金ショートしそう」など、非常に状況が厳しい企業のご相談が寄せられます。

 

今回は、据置期間の終了への対策として「借り換え」「新規融資」「リスケ」など複数の金融支援についてご説明します。

 

具体例として以下のようなケースの企業を考えます。

・借入A(借入残高1,000万、毎年の元本返済200万、返済期間5年、※据置期間終了)

・借入B(借入残高1,000万、毎年の元本返済200万、返済期間5年、※据置期間終了)

通常に返済が開始すると、5年で借入による手持ち資金がなくなります。

 

【①借り換え】

既存の借入A,Bを、新たな借入Cに集約するパターンです。返済期間を10年に延ばしたことで、毎月の返済額を抑え、手持ちの現金の流出を抑制します。

 

【②増額借り換え】

先ほどの単純な借り換えと同時に、増額融資を受けたパターンです。

 

では、「①同額借り換え」「②増額借り換え」どちらを選ぶべきでしょうか?

 

1つの判断軸として、手持ち資金(借入残高)の減り具合に着目します。

「②増額借り換え」の方が、残高の減り具合が鈍いため、手持ちの資金量が多く、資金繰り対策としては有利であるといえます。

 

【③追加融資】

借入A、Bは、予定通り、そのまま元本返済を行いながら、新規融資を受けたパターンです。毎年のキャッシュアウトは大きくなりますが、手持ち現金が増えるため、資金繰りが改善しているといえます。

 

では、「②増額借り換え」と「③追加融資」では、どちらを選ぶべきでしょうか?

 

こちらも同様に、手持ち資金の減り具合に着目すると、「②増額借り換え」の方が、手持ちの資金量が多く、資金繰り対策としては有利です。

 

(※借入額が増加すると支払利息も増加するため、上記の順序が必ずしも最適とは限りません。)

 

【④リスケジュール】

最後に、元本返済猶予によって、5年後から返済を開始するパターンです。

 

注意が必要なのはリスケです。

 

上記の理屈でいくと、手持ち現金を多く持てるリスケも有利に見えますが、リスケをすると新規融資を受けることが極めて難しくなります。(ほとんど不可です。)

目先の元本返済を止められるからといって安易にリスケに走るのは得策ではありません。

 

したがって、まずは銀行には融資を相談し、それが難しい場合にリスケを依頼するのが基本戦略になります。

 

ただし、元本返済により手元の現金が流出し、事業継続を余儀なくされている緊急事態の場合や、追加融資が受けられない場合は、早急にリスケ対応が必要なケースもあります。(※リスケをする際は、取引している全金融機関に対し、経営改善計画書を作成・提出し、全員の合意が必要となります。)

 

 

今回はとても簡単な事例でご紹介しましたが、実際は複数の金融機関と取引があり、借入の口数、残高、協会保証の有無、担保の有無などの既存の借入状況、資金繰り状況、金融機関との関係など様々な要素を考慮し、最適な銀行交渉の方法をご提案いたします。

そして、企業が緊急事態の場合は経営改善計画書を作成し、合意形成までご支援いたします。

 

中小企業診断士 谷 七音

2024.07.19

  • 経営改善

損益分岐点とは

 

ビジネスアナリストの社内です。

 

今回も「経営を学び、地道な改善を継続しろ」から一つ選んでお話しする回です。

もう少し続きますが、お付き合いください。

 

今回は「損益分岐点」についてです。

 

損益分岐点とは、事業を営む上で一つ大きな指標となる値と言えます。

 

どのくらい売上を獲得できれば、黒字になるのか、売上と費用がちょうど一致する額が損益分岐点です。

売上を上げて利益を少しずつ積み重ね、利益によって固定費をすっぽりカバーできるようになる点です。

 

つまりどういうことなのか、パン屋さんで例えてみましょう。

 

固定費とは以前のコラムでもお話ししましたが、

レジの従業員様のお給料や家賃など売上が一円も発生しなくても発生する費用です。

 

一方で、変動費は売上に比例して発生する費用です。

売上が2倍になれば、変動費も2倍かかります。

パンを2個売るには小麦も卵も2倍必要ですが、レジのお姉さんは2人はいりませんね。

 

企業は売上から利益を少しずつ積み重ねて、変動費だけでなく固定費も賄えるように売上計画を立て、達成を目指さなければなりません。

 

そこから、株主に還元したりする企業もありますから、利益とはまさに乾いた雑巾を絞ることだと感じます。

 

社内愛里