2024.11.18

  • 経営改善
  • 資金繰り

CCCを見直すタイミング

こんにちは、ビジネスアナリストの社内です。

先月は「CCCを見直しましょう。」を投稿いたしました。

こちらの投稿では、さらに深堀りをして、どのようなときにCCCを見直せばよいのか、具体例を一つご紹介します。

 

おさらい

 

  • CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)

 

企業が商品や原材料の仕入れに対して投入した現金を、実際の現金収入によって回収するまでの期間を示す財務指標です。

CCCが短い(手元に現金を回収するまでの期間が短い)方が財務的な安全性は高いと言えます。

注意点は、帳簿上の売上が計上された日、買掛金が発生した日ではなく、実際に売上が入金された、費用を支払った日を計算することです。

 

  • 計算式

CCC=棚卸資産回転日数+売上債権回転日数―仕入債務回転日数

棚卸資産回転日数=棚卸資産÷売上高×365日

 材料や製品を仕入れて販売するまでの、在庫として保管される日数のこと。

売上債権回転日数=売上債権÷売上高×365日

 製品を販売してから入金されるまでの日数のこと。

仕入債務回転日数=仕入債務÷仕入債務支払い高×365日

 材料を仕入れてから費用を支払うまでの日数のこと。

計算式は難しいので、まずは定義だけを覚えましょう。

 

具体例

【事業の取引規模が大きくなる場合】

例としてA建設会社のお話をします。

A建設会社はこれまで売上高1,000万円程度の中小規模の工事を受注していました。

・工事にかかる(在庫状態である)日数20日 =棚卸資産回転日数

・工事金が入金されるまでの日数60日 =売上債権回転日数

・仕入から業者へ支払完了の期間が30日 =仕入債務回転日数

この場合のCCC=20日+60日―30日=50日

 

ところが、最近新しい依頼業者と知り合う機会があり、これまでより規模の大きい案件を受注することが決まりました。

売上高は3,000万円程度で、A建設会社は売上が上がると喜んでいました。

しかし、CCCを見ると…

・工事にかかる(在庫状態である)日数40日 =棚卸資産回転日数

・工事金が入金されるまでの日数は90日 =売上債権回転日数

・仕入から業者へ支払完了の日数30日 =仕入債務回転日数

CCC=40日+90日―30日=100日

従来よりも50日も伸びてしまいました。

工事規模が大きくなった分仕入高も大きくなり、工事にかかる日数も長くなります。

その一方で、仕入先には従来と変わらず30日後には費用を支払わなければなりません。

業界にもよりますが、取引規模が大きくなるとき、CCCは長期化する場合があります。

 

この場合の運転資金を借入で賄うこともできますが、借入には元本返済と利息が伴い、資金繰りがますます悪化する可能性があります。

最初から借入に頼るのではなく、まずは、

  • 売掛金の入金サイトの短縮
  • 前払金を納めてもらう
  • 買掛金の支払サイトの延長 

を取引先と交渉し改善を試みましょう。

 

ビジネスアナリスト 社内 愛里

2024.11.12

  • 経営者の姿勢
  • 資金繰り

会社のお金の流れを漠然としか把握できていない経営者

こんにちは、中小企業診断士の谷です。

 

 資金繰りに窮した会社の経営者の方々と対話すると、多くの経営者が自分の会社のお金の流れを正確に把握できていないことに強いストレスを感じています。

 お金の管理を全くしていない場合や、頭の中のみで「どんぶり勘定」に頼っている場合に、資金の流れを把握できないのは理解できますが、中には、毎月エクセルで売上やコスト、支払いを集計しているにもかかわらず、現預金が減り続け、資金繰りが苦しい状況に陥る経営者もいます。

 

「なぜこうなっているのか理解できない」ストレスと、適切な対処法がわからない不安は非常に苦しいと思います。

 

 このような状況の原因には、利益とキャッシュフローの違いや、損益と収支の関係を理解していないことや、適切な管理表の使い方を知らないこと、そもそもの会計の基礎知識が不足していることなどが考えられます。

 

 そんな経営者様との会話の中で、よく耳にするのが「お金の話をすると頭が痛くなる」「昔から数字が苦手で、面倒に感じる」「忙しすぎてお金の管理に割く時間がない」といったセリフです。

 

「お金の話になると頭が痛くなる」

 資金のことを考えるたびにストレスが積もり、頭が痛くなるのも無理はありません。
 しかし、問題をそのままにしていては状況が悪化する一方です。お金の話から目をそむけ続けることで、かえって頭が痛くなる悪循環に陥っていると思います。

 

「昔から数字が苦手で、面倒に感じる」

 実は資金管理には、複雑な数式はまったく不要です。
 設備投資の有効性など、複雑な計算は専門家に任せてしまえば良いのです。

 

「忙しすぎてお金の管理をする時間がない」

 これは確かにその通りだと思います。
 多くの中小企業経営者は現場の実務もこなしつつ、経営も行っているため、資金繰りやお金の管理に十分な時間を割くのが難しいのが現状です。

 しかし、話を詳しく聞くと、管理職がすべき業務や、掃除など他の人に任せられる業務も兼務しているケースが少なくありません。
 組織のトップが現場に関わり、従業員の信頼や士気を高めることは重要ですが、資金繰りの管理は経営者にしかできない優先度の高い仕事です。特に資金繰りが厳しい状況下では、資金管理を最優先に取り組むべきだと思います。

 

 とはいっても、業績が悪化してから独学で資金管理を学び直す時間も余裕もありませんし、焦って無計画な資金調達に走ることも得策ではありません。

 

 コンサルタント費用を「もったいない」と考える経営者もいらっしゃいますが、手探りでお金の知識を一から身につけたり、経営管理のすべてを一人で抱え込むのは、非効率ですし、経営状況が悪い中、それらを行うのは非現実的です。経営に専念する時間とその効果を考えると、費用対効果が高いと思います。ご自身の時間コストと比較してみてください。

 

中小企業診断士 谷 七音   

2024.10.18

  • 経営改善
  • 資金繰り

CCCを見直しましょう。

こんにちは、ビジネスアナリストの社内です。

 

CCCとは、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの略です。

企業が商品や原材料の仕入れなどによって投入した現金を、実際の現金収入によって回収するまでの期間を示す財務指標です。

つまり、CCCは企業の資金回転サイクルの効率性を意味しています。

このCCCが長いほど、資金を回収するまでの期間を要し、資金繰りが苦しくなりやすいです。

そのため、資金に余裕のない企業ほど、CCCを見直す必要があります。今回は、CCCを短期的に短くする方法を2つ紹介します。

 

1.受取サイトの短縮化を交渉する

受取サイトとは、お客様から受けた売上債権が実際に入金されるまでの期間を指します。

資金繰りが苦しい会社にとっては、受取サイトは短い方が良いです。

 

<交渉の例>

  • 手形取引ではなく、債券取引・現金取引を目指す

手形取引は、売上債権による取引に比べ、サイトが長期化する傾向にあります。

中小企業庁では、2026年度末の手形の利用廃止に向けた取り組みを進めています。

この情勢に乗って、手形から売上債権や電子記録債権、現金取引への移行を目指した交渉に取り組んでいきましょう。

また、100%手形支払いを半手半金(手形と現金が50%ずつ)にしてもらうなど工夫した提案も有効です。

 

  • 前払金を納めてもらう

大型設備の生産や工事を伴う受注である場合、一般にCCCは長期化します。

受取サイト自体を短くできなくても、一部仕入費用に対する前払金を納めてもらうことも資金繰りに有効な策です。

 

 

 2.支払サイトの延長を交渉する

支払サイトは仕入先や外注先に対する仕入債務や振り出した手形の支払期日を指します。

資金繰りが苦しい会社にとっては、支払サイトは長い方が好ましいです。

 

<交渉の例>

  • 一時的な延長措置をお願いする

3か月程度であれば支払サイトの延長を取引先に受け入れてもらいやすいです。

支払期限が到来してから依頼すると、仕入先の信頼を損ねる恐れがあります。また、仕入先の資金繰りにも支障をきたしかねません。前持った交渉が大切です。

 

  • 取引先を増やす

仕入先を複数持ち一社に対する依存度が低い方が、取引条件において自社が優位になりやすいです。

そうすることで、支払サイトの条件の交渉を飲んでもらいやすくなります。

 

ただし、無理な受取サイトの短縮、支払サイトの延長は取引先との関係性の悪化を招きかねません。

業界内の一般的なサイト期間からかけ離れないように気を付けましょう。

特に、下請け企業に対する支払サイトは、下請代金支払遅延等防止法など法的規制もあり、注意が必要です。

ビジネスアナリスト 社内 愛里

2024.09.30

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  • 資金繰り

売上を伸ばす目的

皆さん、こんにちは。フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

さて、今日は「売上」の話です。

 

売上は少ないより多い方が良いですし、前期よりも伸びた方が良いので必死に営業活動に取り組んでいることと思います。

 

「売上を伸ばさなければならない」というのは古今東西どこの会社も共通する至上命題です。

 

しかし、「何のため(目的)に売上を伸ばすのか?」ということをあまり考えることはありません。

 

売上を伸ばす目的はズバリ「売上総利益(粗利益)」を伸ばすためです。

 

粗利益を最大化することが売上を伸ばす目的です。

 

粗利益が増えることが会社の成長です。

 

反対に粗利益を生み出さない売上は資金繰りを圧迫する、無駄な仕事が増えるなど、むしろ会社を悪い方向にもっていく不必要な売上です。

 

ですから、

 

売上高3億円 粗利益1億円

 

の会社が

 

売上高10億円 粗利益1億円

 

になったとしたら「売上高3億円」の方が魅力的だということです。

 

「売上を伸ばす」ということを命題にする場合は必ず「売上総利益(粗利益)も伸びる」ということを確認しましょう。

 

この考え方は経営者が率先して現場に浸透させないといけません。

 

売上は売上総利益(粗利益)と連動して伸ばさなければ資金繰りが悪化し、会社が傾く可能性が高いと自分の肝に銘じましょう。

 

売上を伸ばしていくことは絶対に必要ですが、売上至上主義にならず原価管理をして、「100円売ったらいくら儲かるのか(粗利率30%なら30円、35%なら35円)」を把握しましょう。

 

ひつこいようですが売上を伸ばす目的は「売上総利益(粗利益)を伸ばすこと」だということを絶対に忘れないでください。

 

2024.08.29

  • 経営者の姿勢
  • 資金繰り

会社と個人の財布を分ける

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

「会社と個人の財布を分ける」

 

当たり前のことですが、これが出来ていない会社は一定数存在します。

特に小規模の個人事業や同族会社で見られます。

 

家の買い物を経費で落とす様な小さいものから、数万円から数十万円の飲食代や旅行代を会社の経費に算入させようとするケースも見られます。

これらを良しとはしませんがまだかわいいもので、本当に財布が同質化している場合は会社に現金がいくら残っているのかすら分かっていません。

 

社長に「今日現在の手許現金はいくら残っていますか」と質問すると、「分からない」と返ってきます。

帳簿と金庫にある現金の残高が異なるため何が正しいのかわからないのです。

日頃帳簿と現金の実残高を合わせている会社が殆どだとは思いますが、こういったどんぶり勘定を行っている会社は、会社の状態を正確に把握することができず経営難に陥ることが多いです。

 

経営難で資金不足に陥ると、金融機関からの借入の延滞、税金や社会保険料の滞納、仕入先への支払い遅延、果ては従業員給与の未払いなど、企業はあらゆる支払を止めてでも資金の確保を行い、事業継続の可能性を追求することになります。

 

上記の企業は、私が関わった段階で既に社保滞納、給与未払いにより退職者が続出しており、間もなく再建不能のため廃業となりました。

 

現預金は目に見えて価値がわかる資産です。

本来ならば貸借対照表の科目の中で一番正確な数字を示せる科目と言えるでしょう。

 

会社は会社の財布、個人は個人の財布を使う。

最低限このルールを守らなければ、試算表や決算書の信憑性が無くなり会社の正確な財務状態や経営成績を知ることはできません。

 

正しい会計知識とルールを守って経営状態の把握に努めましょう。

 

中小企業診断士 杉本貴弘