2023.10.11

  • 経営改善
  • 資金繰り

キャッシュフロー計算書を読み解く

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

今回はキャッシュフロー計算書についてお話します。

 

企業の決算書には、財務三表と呼ばれる特に重要な書類があり、そのうちの1つがキャッシュフロー計算書です。

毎年申告した決算書類の中に綴られているのを見たことがある方も多いかと思います。

【例:キャッシュフロー計算書】
キャッシュフロー計算書

 

キャッシュフロー計算書は、企業の現預金の増減を⓵営業活動、②投資活動、③財務活動の3つの活動に分けて示します。

 

①営業活動によるキャッシュフロー
 営業活動キャッシュフローは、仕入や売上、販売活動、一般管理などの企業の本業の活動による資金の増減を表します。

 

②投資活動によるキャッシュフロー
 投資活動キャッシュフローは、企業の設備投資や有価証券の売買などの、将来の利益のための投資活動による資金の増減を表したものです。設備投資を行えばマイナス、資産を売却すればプラスとなります。

 

③財務活動によるキャッシュフロー
 財務活動キャッシュフローは、金融機関からの借入や返済などの資金の調達・返済に関する資金の増減を表します。借入を行えばプラス、返済を行えばマイナスとなり、最終的にマイナスであれば、調達より返済が多かったことを示しています。

 

キャッシュフロー計算書の仕組みについての説明は省略しますが、着目すべき点をいくつかご紹介します。

 

1:営業活動によるキャッシュフローがプラスであるか
 前述しましたが、営業キャッシュフローは本業での資金の増減です。営業キャッシュフローがマイナスであれば本業で資金が減っていることになります。支払や入金サイトの関係で一時的にマイナスになる場合もあるので、マイナスの理由の説明ができるのであれば単年のマイナスはある程度問題ないかと思われます。しかし、2期3期と続くようでは本業で利益が出ておらず資金も稼げていない状態であるため大変危険であり、この場合は金融機関からの借入で資金を充当していることが多いです。上の例では、令和4年3月期の営業キャッシュフローの赤字を借入で補っています。

 

2:投資活動によるキャッシュフローのマイナス額をどの活動が賄っているか
 資産を購入すると資金が流出するため、基本的には投資キャッシュフローはマイナスとなりますが、その際のマイナスをどの活動が賄っているか注意が必要です。営業活動のプラスの範囲内や過去の利益によるものであれば問題ないですが、財務キャッシュフローのプラス(金融機関からの借入)で賄っている場合は、翌期以降はその借入の返済に耐えうる営業キャッシュフローを生み出さねばなりません。上の例では、令和3年3月期に2,000千円の投資を行ったにもかかわらず、令和4年3月期では営業キャッシュフローがマイナスとなってしまっており、投資による利益を生み出せていない状態です。

 

3:フリーキャッシュフロー(営業+投資活動によるキャッシュフロー)
 上記を踏まえると、フリーキャッシュフロー(営業+投資キャッシュフロー)がプラスであるかが重要となります。フリーキャッシュフローがプラスであれば、少しずつでも借入金を減らして行くことができます。逆にフリーキャッシュフローのマイナスが続けば、借入を増やさなければ資金が底を尽き、いずれは倒産してしまいます。 決算書類のうち損益計算書にばかり目が行きがちですが、キャッシュフロー計算書を読み解くことで自社の資金がどの活動で増減しているのかを把握することができます。直近3期程度のキャッシュフロー計算書を比較し、自社の傾向を掴み、将来の資金難や倒産といった最悪のケースを回避しましょう。

 

中小企業診断士 杉本貴弘

2023.08.22

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無知な経営者が陥る負の連鎖

皆さん、こんにちは。フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

ここ数か月、本当に経営相談が増えました。

 

すべての案件が資金繰りの悪化で、その大半が資金ショート目前という段階です。

 

業種や規模は様々ですが、状況としては下記のような【負の連鎖】がどの企業にも当てはまります。

 

 

【負の連鎖】

損益の悪化→資金調達→過剰債務→損益はまだ改善されず→資金調達→過剰財務に拍車がかかる→損益はまだ改善されず→融資拒否→リスケ→ファクタリング・消費者金融の活用→税金・社会保険の滞納→当社への経営相談

 

 

正直、このタイミングで相談に来られてもほとんど説教で終わります。

 

 

「経営者の資質が全くない」「この状況でできることなどほとんどない」そう伝えます。

 

多くの経営者が陥ってしまうこの【負の連鎖】はなぜ起こってしまうのか。

 

損益の問題を直視せず、収益改善に取り組まず、安易に赤字を補填する方法を考えるその思考回路に問題があるのではと思っています。

 

例えば、赤字で資金繰りが悪化した時に「なんとか黒字にしよう」ではなく、まず「融資を受けよう」と考えるのです。

 

経営をしているとそういう時もあるかと思いますが、融資を受けた後でも良いので「黒字化させよう」と考える経営者はほとんどいません。

 

融資により資金繰りが改善されたため赤字の話は頭の中からなくなってしまいます。

 

まさに「のど元過ぎれば・・・」です。

 

残念なことにこの考え方は過剰債務になり、債務超過になり融資を断られるまで延々と続きます。

 

そして、金融機関との関係性が悪化してからファクタリングの活用や税金等の滞納が始まります。

 

この時点でも「黒字にする」という動きはほとんどありません。

 

赤字の垂れ流しを続けたまま、金策に走り回り、それも尽きてから専門家に相談するというのが共通の行動パターンです。

 

損益の問題(赤字)に対しては損益の改善という切り口でアプローチするのは当たり前なのですが、それをするのには相当なエネルギーが必要なので、資金を集めるというある意味において楽な道に逃げてしまうのです。

 

損益の改善には経費の見直しや仕入先への交渉、お客様へ訪問、地道な営業、値上げ交渉など時間も労力も費やす必要があります。

 

また、エネルギーを費やしても結果が出ないかもしれませんが、それでも継続しなければなりません。

 

数百円や数パーセントの改善を継続するのは大変なことですが、そこに対して真摯に取り組み続けるのが優秀な経営者です。

 

無知な経営者が学ばずに経営をすると多くの割合で【負の連鎖】に陥ります。

 

経営を学ぶ前に商売(利益の出し方)を学んでほしいと切に思います。

 

しかし、それでも見捨てることができないのが私の性分です。

 

相談に来られた以上、何とかしなければなりませんね。

2023.05.26

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リスケ状態から間もなく脱する2社の事例

皆さん、こんにちは。株式会社フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

新型コロナ融資の返済がこの夏から本格化するということもあり、弊社にも多くの資金繰りに関する相談が寄せられています。

 

赤字を借入金で補い、その間に経営改善を行ってこなかった会社は今後、過剰債務と赤字、物価高の三重苦との戦いになるでしょう。

現実的には元本返済ゼロのリスケを要請し、その間に経営改善を行うことになるケースがほとんどかと思いますが、経営改善に耐えうる余力があるのか、また経営者にその覚悟があるのかがその企業が生き残るのかそうでないかの分かれ目かと思います。

 

一方で弊社が過去に経営改善計画を策定し、リスケジュールの支援を行った先を2社訪問してきましたが、2社共に経営改善に取り組んでいただけていました。

 

1社目・・・縫製工場

加工単価が低く、利益が出にくい費用構造になっていた。外国人技能実習生を数多く採用し、単価よりも受注量を確保することで収益を確保しようとしていたが、元本返済までカバーできずリスケジュールの要請を行った。(今から3年前です)

経営改善計画では受注量よりも加工単価の向上を重視し、価格交渉を行うことや外国人技能実習生の教育を行い、検品は日本人が対応することなどを盛り込みました。取り組んだ結果が数字として出てきたので、この7月までに新計画を完成させ、バンクミーティングを経てリスケ状態から抜ける予定です。

 

2社目・・・子供服販売

複数店舗を運営されていたが、収益の改善が見込むことのできない不採算店舗は閉鎖し、4店舗から2店舗へと事業規模を縮小しました。過剰在庫もセールやネット販売で現金化するなどを経営改善計画に盛り込みました。(こちらも今から3年前です)

現在は店舗数が半分になったにもかかわらず、4店舗あった時の売上に近い水準まで売り上げを増加させた。固定費の削減や利益率の改善も相まって、収益性を大幅に改善することに成功しました。1社目と同様に新計画を策定し、こちらも7月にはバンクミーティングを行い、リスケ状態から抜け出す予定です。

 

 

この2社様は経営改善計画書の内容に対して真摯に向き合っていた(自分が率先して現場に出るだけでなく、営業や仕入れ等も責任をもってやっていた)結果が出たのだと思います。

 

今現在、経営や資金繰りに苦しんでいる事業者様も大勢いらっしゃるかと思いますが、我々のような専門家と一緒に、覚悟をもって真剣に経営に取り組んでいけば道は開けるということを強く想ってください

 

「まだいけるだろう」「また、融資を受ければ何とかなるだろう」ではなく、自分の力で業績を改善させる、利益を出すという覚悟や情熱、行動力をもって難局を乗り切っていただければと思います。

 

私どもにも経営改善のノウハウは多数ございますので、何なりとご相談ください。

2023.04.19

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資金繰り相談の増加について

中小企業診断士の長尾です。最近のコンサルティング現場で感じることです。
予想した通りと申しますか、資金繰りの相談がかなりのペースで増加してきています。

相談に来られる企業様の多くは新型コロナ関連の融資もすべて受けたが、業況が改善するどころか悪化する一方で融資の話は全て断られています。金融機関が支援してくれないことに対して不満や愚痴を言っていても仕方ありません。仮に今、融資を受けることができたとしても数か月後にはまた同じ問題に直面します。

経営者がすべきことは金融機関に依存するのではなく、自分が中心となって道を切り拓くという強いリーダーシップを発揮して経営改善に臨むことです。

そして、経営改善を行う術を身に付けることです。

私なら最初に支出を減らします。具体的には以下の2つを行います。

(1)固定費の削減、不採算事業の撤退

遅らせることのできる支払いを遅らせる(入金サイトを早めることも同時に)

1.固定費の削減、不採算事業の撤退

固定費や不採算事業の中には経営者の思い入れやこだわりがあって、なかなか踏み込むことができない聖域があります。しかし、コロナ禍においては聖域など関係ありません。徹底的な改革を推し進めてください。経費の削減を検討する際には経費を2つに大別することです。1つはプロフィットコスト(利益を生むコスト)、2つ目はロスコスト(利益を生まないコスト)です。プロフィットコストは利益を生むためのコスト、ロスコストは何も生まない経費のことです。決算書や試算表を眺めて、すべての科目をプロフィットコストかロスコストに仕分けしましょう。経費の総額が変わらなくとも、ロスコストを削減してプロフィットコストに充当することで利益が伸びる場合もあります。

2.支払いを遅らせる

仕入サイトの変更や金融機関の返済条件の変更を行い、キャッシュアウトを少なくする、遅らせることです。特に金融機関への返済ですが、資金調達ができなくなった場合はこれまで通り返済するのではなく、返済条件の変更を行いましょう。借りることができないのに今返すのは得策ではありません。これにより単月で数百万から数千万の効果があります。社会保険や税金も当局と相談して納付のタイミングを交渉しましょう。

 

このように、まずは赤字や資金の流出を防ぐことに全神経を使い、資金繰りの目途を立てることから経営改善をスタートさせましょう。それから利益率の改善や売上アップに取り組むことが正しい順番です。

自社の経営を見つめなおし、金融機関の依存しない経営状況にもっていく不退転の覚悟が求められていると私は考えます。

2023.04.19

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売上アップの考え方

中小企業診断士の長尾です。私は経営コンサルタントとして日々業務にあたっていますが、一方で経営者でもあります。経営者としては自社の業績アップや組織の構築などに取り組んでいます。
中小企業診断士として経営コンサルティング業務を行なっている以上、戦略的に事業の拡大を行なっています。特に私はマーケティングの分野が好きなので、このジャンルの本をよく読みます。私が師事しているのはジェイ・エイブラハムというアメリカのマーケッターです。ジェイの教えはセミナー等でもよく取り上げられるのでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、大企業ではなく中小企業でも取り組めることがたくさんありますので、実践的で参考になることばかりです。
特に私がジェイのマーケット理論を勉強して、意識しているのはパルテノン戦略です。
パルテノン戦略とは「集客するチャネルを複数持ち、経営を安定させる(売上を伸ばす)」という考え方です。
製造業に多いのですが売上の80%や90%を1社に依存しているということがあります。また、製造業でなくとも集客チャネルが紹介だけという商売をしている方もいらっしゃると思います。
パルテノン戦略ではとにかく集客の柱を複数持つことが会社経営にとっては非常に重要だということを説いています。紹介だけに依存するのではなく、ホームページ、SNS、口コミ、DM、キーワード広告、など複数の集客チャネルから集客する仕組みを構築することが経営の安定や売上アップにつながるということですね。
このパルテノン戦略の話もそうなのですが、マーケティングの話をさせていただくと、拒否反応を示す経営者が意外と多いです。
「うちの会社には向いてないから」「業界的にSNSは・・・」などと理由をつけます。このようなことを言う経営者に限って、業績が悪化した時に新規開拓を慌てて行うのですが、集客チャネルが1種類であるため、途方もない時間を使ってはみるものの結果が出ないという結末になります。
一度に複数の集客チャネルを構築するのは無理がありますので、1つずつでも構いません。売上に直結するチャネルを増やしていくことに取り組んでください。