2025.03.21

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「赤字企業がすべき売上アップの施策」

株式会社フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

全員ではないのですが大幅な赤字を計上している会社の経営者は危機感から固定費の削減を徹底的に進めており、これ以上経費の削減が難しい水準まで取り組まれているケースがあります。

 

私は、赤字でも何も手を打たない経営者をこれまでたくさん見てきましたので、「経費の削減だけでも取り組んでくれて良かった」と一定の評価をしますが、一方で、売上アップについては何も取り組んでいないケースが大半で、その方法も何も考えていない経営者ばかりで呆れてしまいます。

 

そこで、赤字企業の売上アップについての考え方を今回はお伝えします。

 

赤字企業の売上アップはとにかく既存事業の中で伸び代を探すことです。

 

経営者の多くは新事業や新しい取り組み、新しい話が大好きで、既存事業にフォーカスすることを嫌がりますが、既存事業で黒字化できない人間が新しいことに取り組んでも結果は見えていますし、新規事業や新しい話は先行投資や運転資金が先にいることが多く、現状よりもさらに厳しい状況に追い込まれます。

 

まずは、しっかりと既存事業で売上のトップラインを伸ばしていく事に注力すべきです。

 

具体的には既存顧客を売上や粗利の規模でABC分析し、顧客をランク分けします。

 

次にランク分けされた顧客の中で、まだ売上が伸ばせそうな先はないか経営者や幹部が営業担当と濃密に打ち合わせを行います。

 

この時に経営者が参加することが絶対に必要です。

 

経営者が率先して現場に入ることで危機感や必死さが生まれますし、一担当が見逃している事に気付く可能性もあります。

 

売上の伸ばし方としては単純に値上げ交渉も必要ですが、重要なのは他社に回している仕事を自社に回してもらうことです。

 

そのために平時(仕事がない時)から人間関係を構築しなければなりません。

 

人間関係を構築するための方法としてゴルフや飲み食いを想像するかもしれませんが、私の考えは異なっていて業界の情報をいち早く提供すること、取引先のニーズを聞き出すことを平時から徹底しておくことがとても大事です。

 

徹底と言ってもイメージが湧かないと思いますので、週に1回、月に2回など指標を決めて訪問する、提案書を作成する業界動向をメールするなどが良いでしょう。

 

赤字の会社に限って自社が困った時だけ営業する会社が多いですが、いつ何時も取引先のニーズを把握する姿勢やお困りごとを解決する姿勢があるかないかが、とても重要です。

 

私はこのやり方で自社の売上を12.7倍まで上げましたが、その間一度もゴルフやお酒の席は設けておりません。

 

新しい発想ではなく、既存事業の中で、既存の取引先の中で、相手の目線に立ってお困りごとはないか、ニーズはないか愚直に取り組んでいくことが赤字企業に必要な売上アップの施策です。

 

とにかく経営者が現場に出て、お客様の声を聞かなければならないのは言うまでもありません。

 

それではまた次回です。

2025.03.19

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良かれと思って…は危険?

こんにちは、中小企業診断士の社内です。

 

事業者様のお話を伺っていると、

時々、良かれと思って判断した結果、資金繰りや収益性を一層悪化させてしまっていたということがあります。

 

たとえば、弊社が支援する事業者様は支払サイトを120日から60日にしないと追加の融資はできないと金融機関に言われてしまいました。

それを聞いた社員様は、良かれと思って資金繰りが苦しい中ですぐに60日に変えてしまいました。

その結果、2か月後には資金繰りに困窮する見込みとなり、大慌てしたという事案がございます。

 

よくある事案としては、お客様が喜ぶ、当社も受注できるから会社が喜ぶと思って、

担当者様が各々値引きを続けていていつの間にか利幅が目減りしていたということも当てはまるでしょうか。

 

「良かれと思って」は状況によっては、むしろ良くない、自社を苦しめることになりかねません。

特に資金繰りに困窮している時期は、一つの誤りが命取りになってしまいます。

 

ご支援に携わっていると、自社はどういう状況にあって、何を優先すべきなのかを常に把握し続け、

都度慎重に判断しなければならないことの難しさを感じます。

こういう時はどうすればいいのか、と悩む場合は迷わずに当社のような専門家にご相談ください。

 

中小企業診断士 社内 愛里

2025.02.19

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なぜ、売上は増加しているのに、資金繰りが悪化したのか?

こんにちは。中小企業診断士の谷です。

 

資金繰りの悪化には、「業績拡大時の資金繰り悪化」と「業績低迷時の資金繰り悪化」の2パターンがあります。

 

今回は、前者のケースについて、最近、経営顧問としてご支援させていただくこととなった運送業の事業者様の事例をもとにご説明します。

(※その他の資金繰り悪化の原因については、こちらのブログで詳細にまとめております。)

 

この事業者様からは、「売上が増加しているのに、手元の資金繰りがどんどん苦しくなっている」というご相談を受けました。

実際に直近の決算や試算表を確認してみると、確かに毎月の売上高は増加傾向にありました。しかし、月末の現預金はどんどん目減りしており、ご相談いただいた時点では、ほぼゼロに近い状態。資金ショートを回避するためにファクタリングを活用せざるを得ない状況となっていました。

 

なぜ、売上が増加しているにもかかわらず、手元のキャッシュが減少しているのでしょうか?

 

資金繰り悪化の要因として考えられる要素はいくつかありますが、

主な原因となっていたのは、

「入金サイトと支払いサイトのズレによる運転資金の増加」にありました。

 

資金繰りが悪化した具体的な流れを見てみましょう。

① 事業開始当初は黒字で採算がとれていた。

② 事業規模を拡大し、ドライバーの増員や車両の増車を実施。

③ しかし、手元資金が少ない中で、支払いが先行(外注費、人件費、燃料費など)し、売上の入金までに時間差があるため、立て替える運転資金が増加(これを「増加運転資金」といいます)。

④ 資金不足を補うために、金利の高いノンバンクやファクタリングを活用。

⑤ その結果、支払利息や手数料がかさみ、利益率が低下。

⑥ 翌月も資金不足が続き、さらにファクタリングの利用額が増加。

⑦ 利益率の低下が続き、最終的に赤字転落。

 

このような悪循環に陥り、抜け出すのが非常に困難になっていました。

 

この事例から学ぶべきこと

今回のケースから言えるのは、「体力をためてから拡大する」ことの重要性です。

売上が増加すれば、当然事業拡大のチャンスと考えがちです。しかし、十分な運転資金を確保せずに規模を拡大すると、キャッシュフローが回らなくなり、事業の継続が危ぶまれる事態に陥る可能性があります。

したがって、

  • 事業拡大の前に運転資金を十分に蓄えること

  • 入金と支払いのサイト管理を徹底すること

  • 資金調達手段の選択肢を慎重に検討すること

これらのポイントを押さえながら、健全な資金繰りを維持することが重要です。

 

 

中小企業診断士 谷

2024.11.18

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CCCを見直すタイミング

こんにちは、ビジネスアナリストの社内です。

先月は「CCCを見直しましょう。」を投稿いたしました。

こちらの投稿では、さらに深堀りをして、どのようなときにCCCを見直せばよいのか、具体例を一つご紹介します。

 

おさらい

 

  • CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)

 

企業が商品や原材料の仕入れに対して投入した現金を、実際の現金収入によって回収するまでの期間を示す財務指標です。

CCCが短い(手元に現金を回収するまでの期間が短い)方が財務的な安全性は高いと言えます。

注意点は、帳簿上の売上が計上された日、買掛金が発生した日ではなく、実際に売上が入金された、費用を支払った日を計算することです。

 

  • 計算式

CCC=棚卸資産回転日数+売上債権回転日数―仕入債務回転日数

棚卸資産回転日数=棚卸資産÷売上高×365日

 材料や製品を仕入れて販売するまでの、在庫として保管される日数のこと。

売上債権回転日数=売上債権÷売上高×365日

 製品を販売してから入金されるまでの日数のこと。

仕入債務回転日数=仕入債務÷仕入債務支払い高×365日

 材料を仕入れてから費用を支払うまでの日数のこと。

計算式は難しいので、まずは定義だけを覚えましょう。

 

具体例

【事業の取引規模が大きくなる場合】

例としてA建設会社のお話をします。

A建設会社はこれまで売上高1,000万円程度の中小規模の工事を受注していました。

・工事にかかる(在庫状態である)日数20日 =棚卸資産回転日数

・工事金が入金されるまでの日数60日 =売上債権回転日数

・仕入から業者へ支払完了の期間が30日 =仕入債務回転日数

この場合のCCC=20日+60日―30日=50日

 

ところが、最近新しい依頼業者と知り合う機会があり、これまでより規模の大きい案件を受注することが決まりました。

売上高は3,000万円程度で、A建設会社は売上が上がると喜んでいました。

しかし、CCCを見ると…

・工事にかかる(在庫状態である)日数40日 =棚卸資産回転日数

・工事金が入金されるまでの日数は90日 =売上債権回転日数

・仕入から業者へ支払完了の日数30日 =仕入債務回転日数

CCC=40日+90日―30日=100日

従来よりも50日も伸びてしまいました。

工事規模が大きくなった分仕入高も大きくなり、工事にかかる日数も長くなります。

その一方で、仕入先には従来と変わらず30日後には費用を支払わなければなりません。

業界にもよりますが、取引規模が大きくなるとき、CCCは長期化する場合があります。

 

この場合の運転資金を借入で賄うこともできますが、借入には元本返済と利息が伴い、資金繰りがますます悪化する可能性があります。

最初から借入に頼るのではなく、まずは、

  • 売掛金の入金サイトの短縮
  • 前払金を納めてもらう
  • 買掛金の支払サイトの延長 

を取引先と交渉し改善を試みましょう。

 

ビジネスアナリスト 社内 愛里

2024.11.12

  • 経営者の姿勢
  • 資金繰り

会社のお金の流れを漠然としか把握できていない経営者

こんにちは、中小企業診断士の谷です。

 

 資金繰りに窮した会社の経営者の方々と対話すると、多くの経営者が自分の会社のお金の流れを正確に把握できていないことに強いストレスを感じています。

 お金の管理を全くしていない場合や、頭の中のみで「どんぶり勘定」に頼っている場合に、資金の流れを把握できないのは理解できますが、中には、毎月エクセルで売上やコスト、支払いを集計しているにもかかわらず、現預金が減り続け、資金繰りが苦しい状況に陥る経営者もいます。

 

「なぜこうなっているのか理解できない」ストレスと、適切な対処法がわからない不安は非常に苦しいと思います。

 

 このような状況の原因には、利益とキャッシュフローの違いや、損益と収支の関係を理解していないことや、適切な管理表の使い方を知らないこと、そもそもの会計の基礎知識が不足していることなどが考えられます。

 

 そんな経営者様との会話の中で、よく耳にするのが「お金の話をすると頭が痛くなる」「昔から数字が苦手で、面倒に感じる」「忙しすぎてお金の管理に割く時間がない」といったセリフです。

 

「お金の話になると頭が痛くなる」

 資金のことを考えるたびにストレスが積もり、頭が痛くなるのも無理はありません。
 しかし、問題をそのままにしていては状況が悪化する一方です。お金の話から目をそむけ続けることで、かえって頭が痛くなる悪循環に陥っていると思います。

 

「昔から数字が苦手で、面倒に感じる」

 実は資金管理には、複雑な数式はまったく不要です。
 設備投資の有効性など、複雑な計算は専門家に任せてしまえば良いのです。

 

「忙しすぎてお金の管理をする時間がない」

 これは確かにその通りだと思います。
 多くの中小企業経営者は現場の実務もこなしつつ、経営も行っているため、資金繰りやお金の管理に十分な時間を割くのが難しいのが現状です。

 しかし、話を詳しく聞くと、管理職がすべき業務や、掃除など他の人に任せられる業務も兼務しているケースが少なくありません。
 組織のトップが現場に関わり、従業員の信頼や士気を高めることは重要ですが、資金繰りの管理は経営者にしかできない優先度の高い仕事です。特に資金繰りが厳しい状況下では、資金管理を最優先に取り組むべきだと思います。

 

 とはいっても、業績が悪化してから独学で資金管理を学び直す時間も余裕もありませんし、焦って無計画な資金調達に走ることも得策ではありません。

 

 コンサルタント費用を「もったいない」と考える経営者もいらっしゃいますが、手探りでお金の知識を一から身につけたり、経営管理のすべてを一人で抱え込むのは、非効率ですし、経営状況が悪い中、それらを行うのは非現実的です。経営に専念する時間とその効果を考えると、費用対効果が高いと思います。ご自身の時間コストと比較してみてください。

 

中小企業診断士 谷 七音