2024.11.19

  • 経営改善

明文化によって経営者とコンサルの共通認識を作る

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

経営者の中には、コンサル嫌いな方も多い印象を持っています。

過去に何度か支援を受けたことがあるが、経営が改善されなかったり、収益が上がらなかったりなど、
費用に見合った効果が得られなかったことの積み重ねで、コンサルに抵抗感を持たれていたり、
そもそもコンサルという職種そのものを避けられていたりとさまざまな原因が考えられます。

一方で、コンサルタントに依頼し、短期的、長期的な改善を実現している経営者もいます。

例えば、下記のような事例です。

「毎月、月末の支払や銀行への返済など資金繰りで頭がいっぱいだった経営者」が、
資金繰り改善の支援を受けることで、成長に向けた前向きな取り組みにフォーカスできるようになった。

「赤字決算が続いており、大幅な債務超過に陥っていた経営者」が、値上げ交渉や新規取引の開拓など
収益改善の支援を受けることで、債務超過の解消や金融機関への返済を進められるようになった。

経営者がコンサルタントの支援を更に効果的なものにするため、コンサルタントが支援の実効性を更に高めるためには、
当たり前ですが、両者で共通の認識を持つ必要があります。

現状の把握、目標の状態、そのギャップ度合い、解決の方策やコンサルの支援範囲、経営者の取組範囲などを明文化し、
お互いに同じ認識を持ち同じベクトルを持てば、経営改善は思っている以上に前に進むものです。

そして、共通認識は口頭だけでなく、明文化することをおススメします。

文字に起こすことで、ちょっとしたニュアンス感の相違とか会社の違いが見えてくることもありますので、
簡単な整理シートや議事録などにまとめましょう。

また、経営者だけで経営改善を進めるのは難しいです。

必ず他の役員や幹部社員、現場リーダーなどを巻き込んでいく必要があります。

その時にも明文化していれば、認識をそろえやすくなりますので、ぜひやってみてください。

過去、コンサルに依頼してみたけど「あんまりうまく行かなかったな。」などと思わらることがあれば、
その当時、明文化して共通認識を作ってくれるコンサルだったかを一度、思い出してみてください。

中小企業診断士 木戸貴也

2024.11.18

  • 経営改善
  • 資金繰り

CCCを見直すタイミング

こんにちは、ビジネスアナリストの社内です。

先月は「CCCを見直しましょう。」を投稿いたしました。

こちらの投稿では、さらに深堀りをして、どのようなときにCCCを見直せばよいのか、具体例を一つご紹介します。

 

おさらい

 

  • CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)

 

企業が商品や原材料の仕入れに対して投入した現金を、実際の現金収入によって回収するまでの期間を示す財務指標です。

CCCが短い(手元に現金を回収するまでの期間が短い)方が財務的な安全性は高いと言えます。

注意点は、帳簿上の売上が計上された日、買掛金が発生した日ではなく、実際に売上が入金された、費用を支払った日を計算することです。

 

  • 計算式

CCC=棚卸資産回転日数+売上債権回転日数―仕入債務回転日数

棚卸資産回転日数=棚卸資産÷売上高×365日

 材料や製品を仕入れて販売するまでの、在庫として保管される日数のこと。

売上債権回転日数=売上債権÷売上高×365日

 製品を販売してから入金されるまでの日数のこと。

仕入債務回転日数=仕入債務÷仕入債務支払い高×365日

 材料を仕入れてから費用を支払うまでの日数のこと。

計算式は難しいので、まずは定義だけを覚えましょう。

 

具体例

【事業の取引規模が大きくなる場合】

例としてA建設会社のお話をします。

A建設会社はこれまで売上高1,000万円程度の中小規模の工事を受注していました。

・工事にかかる(在庫状態である)日数20日 =棚卸資産回転日数

・工事金が入金されるまでの日数60日 =売上債権回転日数

・仕入から業者へ支払完了の期間が30日 =仕入債務回転日数

この場合のCCC=20日+60日―30日=50日

 

ところが、最近新しい依頼業者と知り合う機会があり、これまでより規模の大きい案件を受注することが決まりました。

売上高は3,000万円程度で、A建設会社は売上が上がると喜んでいました。

しかし、CCCを見ると…

・工事にかかる(在庫状態である)日数40日 =棚卸資産回転日数

・工事金が入金されるまでの日数は90日 =売上債権回転日数

・仕入から業者へ支払完了の日数30日 =仕入債務回転日数

CCC=40日+90日―30日=100日

従来よりも50日も伸びてしまいました。

工事規模が大きくなった分仕入高も大きくなり、工事にかかる日数も長くなります。

その一方で、仕入先には従来と変わらず30日後には費用を支払わなければなりません。

業界にもよりますが、取引規模が大きくなるとき、CCCは長期化する場合があります。

 

この場合の運転資金を借入で賄うこともできますが、借入には元本返済と利息が伴い、資金繰りがますます悪化する可能性があります。

最初から借入に頼るのではなく、まずは、

  • 売掛金の入金サイトの短縮
  • 前払金を納めてもらう
  • 買掛金の支払サイトの延長 

を取引先と交渉し改善を試みましょう。

 

ビジネスアナリスト 社内 愛里

2024.11.12

  • 経営者の姿勢
  • 資金繰り

会社のお金の流れを漠然としか把握できていない経営者

こんにちは、中小企業診断士の谷です。

 

 資金繰りに窮した会社の経営者の方々と対話すると、多くの経営者が自分の会社のお金の流れを正確に把握できていないことに強いストレスを感じています。

 お金の管理を全くしていない場合や、頭の中のみで「どんぶり勘定」に頼っている場合に、資金の流れを把握できないのは理解できますが、中には、毎月エクセルで売上やコスト、支払いを集計しているにもかかわらず、現預金が減り続け、資金繰りが苦しい状況に陥る経営者もいます。

 

「なぜこうなっているのか理解できない」ストレスと、適切な対処法がわからない不安は非常に苦しいと思います。

 

 このような状況の原因には、利益とキャッシュフローの違いや、損益と収支の関係を理解していないことや、適切な管理表の使い方を知らないこと、そもそもの会計の基礎知識が不足していることなどが考えられます。

 

 そんな経営者様との会話の中で、よく耳にするのが「お金の話をすると頭が痛くなる」「昔から数字が苦手で、面倒に感じる」「忙しすぎてお金の管理に割く時間がない」といったセリフです。

 

「お金の話になると頭が痛くなる」

 資金のことを考えるたびにストレスが積もり、頭が痛くなるのも無理はありません。
 しかし、問題をそのままにしていては状況が悪化する一方です。お金の話から目をそむけ続けることで、かえって頭が痛くなる悪循環に陥っていると思います。

 

「昔から数字が苦手で、面倒に感じる」

 実は資金管理には、複雑な数式はまったく不要です。
 設備投資の有効性など、複雑な計算は専門家に任せてしまえば良いのです。

 

「忙しすぎてお金の管理をする時間がない」

 これは確かにその通りだと思います。
 多くの中小企業経営者は現場の実務もこなしつつ、経営も行っているため、資金繰りやお金の管理に十分な時間を割くのが難しいのが現状です。

 しかし、話を詳しく聞くと、管理職がすべき業務や、掃除など他の人に任せられる業務も兼務しているケースが少なくありません。
 組織のトップが現場に関わり、従業員の信頼や士気を高めることは重要ですが、資金繰りの管理は経営者にしかできない優先度の高い仕事です。特に資金繰りが厳しい状況下では、資金管理を最優先に取り組むべきだと思います。

 

 とはいっても、業績が悪化してから独学で資金管理を学び直す時間も余裕もありませんし、焦って無計画な資金調達に走ることも得策ではありません。

 

 コンサルタント費用を「もったいない」と考える経営者もいらっしゃいますが、手探りでお金の知識を一から身につけたり、経営管理のすべてを一人で抱え込むのは、非効率ですし、経営状況が悪い中、それらを行うのは非現実的です。経営に専念する時間とその効果を考えると、費用対効果が高いと思います。ご自身の時間コストと比較してみてください。

 

中小企業診断士 谷 七音   

2024.10.31

  • 経営改善

ポジショニングマップで自社の立ち位置を確認する

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

中小企業が日々繰り広げられる激しい市場競争の中で生き残っていくには、漠然と大企業を相手に価格競争をしていても勝ち目はありません。市場の中で自社の明確なポジションを確立することが重要です。

 

ポジション確立の前段階として、市場での自社の立ち位置を確認するのに有効なツールが「ポジショニングマップ」です。

 

ポジショニングマップは、縦軸と横軸に異なる属性(「価格」や「品質」など)を設定し、競合他社と比較して自社の製品やサービスがどこに位置するのかを示す図表です。

 

ポジショニングマップを使うことで、自社がどのようなポジションにいるかを視覚的に確認し、どのような差別化ポイントが求められるのかが明らかになります。

 

また、新商品の開発やサービスの改善においては、今後どの方向(ポジション)に進むべきかを考える際に役立ちます。

 

競合が数多くひしめき合っているポジションから、競合の存在しない空白のポジションに進出することで、競争を回避することができます。(顧客がいないために空白になっているケースもあるので注意が必要)

 

自社のポジションに応じて、誰に何を訴求するかといったブランデクイングの方向性も見えてきます。低価格でありながら質が高いといった「お得感」を打ち出すことや、高価格だが拘りぬいた材料を用いた製品により「コアなファン」をターゲットするなど、低価格路線に走りがちな戦略を見直すきっかけとなります。

 

 

具体的なポジショニングマップの作り方は次の通りです。

 

①軸を決める

自社の製品やサービスの特徴や差別化ポイントを考慮して、縦軸と横軸を設定します。たとえば、「価格」と「品質」や「手軽さ」と「デザイン性」など、業界や市場に適した軸を選びます。

 

②競合の配置

自社と競合他社の製品やサービスを評価し、マップ上に配置します。たとえば、A社が高価格で高品質な商品を提供している場合は右上に配置し、自社が中価格・中品質なら中央に配置するなど、一目見てポジションがわかるように表示します。

 

③自社の位置を確認する

マップ上で自社の位置を確認し、競合との差異や優位性がどういった点にあるのかを考えます。また、ポジショニングマップをもとに差別化の方向性の検討や具体的な行動を計画します。

 

 

ポジショニングマップは、企業の今後の戦略の方向性を考える上で非常に有効なツールです。経営改善においても、企業の現在の立ち位置を確認し改善の方向性を探る際に用いります。

市場での優位性を強化し顧客にとって価値ある存在となるために、ぜひポジショニングマップを作成し、活用して頂ければと思います。

 

中小企業診断士 杉本貴弘

2024.10.28

  • 経営改善

行動計画-経営改善を進め、目標達成の最強ツール-

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

経営や仕事に関するフレームワークは日々、新たなものが生み出されており、
新しい切り口、新しい使い方、新しい論点が取り入れられています。

一方で、何十年も前から変わらず最前線で活躍しているフレームワークもあります。

その1つに『PDCAサイクル』があり、あまりにも有名なため、
学生時代や新入社員研修などでも聞いたことがある方も多いと思います。

このPDCAサイクルと合わせて活用することで最強のツールとなるのが、『アクションプラン(行動計画)』です。

こちらも最前線で活躍するツールの1つであり、
目標達成に向けて考えたことがある方もいらっしゃるかと思います。

アクションプランとは、目標を達成するための具体的な行動計画であり、目標を達成するために必要な要素やタスクを検討し、
『いつ、誰が、何を、どこで、何故、どのように、どの程度』などを明確にすることで、目標達成の可能性を高めていきます。

経営改善計画がしっかりと実行され、効果がでるかどうかは、このアクションプランをどれだけ本気で作り込み、
本気で実行しているかが重要です。

アクションプラン作成の目的や検討すべき論点、考え方、作成の手順をしっかりと理解し、
経営者や責任者が主体的に取り組むことが重要です。

また、進捗状況を確認し、チェックとアクトを繰り返すことで、経営改善を前に進めていきます。

PDCAサイクルやアクションプランは、ありふれたツールではありますが、シンプルで分かりやすく、
実行性・再現性も高いことから、目標を達成するための最強ツールと考えています。

中小企業診断士 木戸貴也