2024.07.08

  • 経営改善
  • 資金繰り

勘ピューターのOSをアップグレードする

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。新型コロナ関連の融資支援策も段階的に終わり、6月末には繰り返し延長されていた伴走支援型特別保証も新規受付を終了しました。

 

本日も保証協会や金融機関の方と話していたのですが、どの方とお話してもリスケジュールが増えていると話されています。TDBやTSRなどの統計情報などでも倒産やリスケが増えていることは記事にもなっており、現在の経済環境下を考えると外部環境による飛躍的な改善は期待ができないと腹をくくった方が良さそうです。

 

一方で、コロナ禍でも経営改善を進めている会社や赤字になることなく黒字を継続している会社があるのも事実です。業種や企業規模に関わらず業績が良い、良くなっている企業には共通点があるものです。

 

ここでは、外部環境(例えば、半導体関連で需要が増えた、コロナ禍での宅配需要が増えたなど)による要素は除いて考えていきます。

 

まずは、業績管理、資金管理が徹底されていることです。

 

過去のコラムでも述べていますが、赤字の会社、自転車操業の会社は総じて試算表の作成ができていません。特に無料相談で来られる方、公的支援で訪問した方で、毎月しっかりと試算表が作成でき、それを分析して対策を講じている企業は1社も無かったです。あくまで試算表は過去のことで、そこから未来は見えませんが、過去の微修正は早ければ早いにこしたことはありません。

 

また、良くあるのが、社長の頭の中では収入と支出が計算されており、そこでは収支が黒字になっているケースです(社長の頭の中で黒字なだけであって、実際の損益はマイナスであり、資金繰りは厳しくなっています)。

 

このパターンは厄介なことが多く、試算表を作って損益、貸借の状況を確認し、対策を考えなければならないことを理解してもらいにくいです。口ではやりますと言いますが、次の面談時に試算表を持参いただけるケースはレアです。

 

社長の頭の中(言い換えれば、勘ピューターでしょうか)を否定しているわけではなく、むしろその感覚を大切にする考えを持っています。

 

重要なのは、頭の中の感覚と試算表での損益やキャッシュの増減を擦り合わせることで、勘ピューターの精度をあげてほしいのです。

 

ただ、「試算表を税理士からもらっても何を見ればいいのかな?」、「税理士からアドバイスがあるけど腹落ちしていない」と言う経験も試算表を作らなくなるキッカケになっているかもしれません。

 

試算表を正しく理解し、自社にとって重要なポイントはどこなのか、どの数字を追っかけていけば改善できるのか等を知り、実際に業績を改善していくためには、第三者の意見を聞くのも一手です。

 

たかが試算表ですが、されど試算表です。ルールを決めてしまえば、毎月の試算表作成のハードルは決して高くありません。

 

業績、資金繰りでお悩みであれば、一度立ち止まって、客観的に自社の業績を把握されてみてはいかがでしょうか。

中小企業診断士 木戸貴也

2024.06.24

  • バンクミーティング
  • 事業再生
  • 資金調達

事業再生の実務 ~リスケ中に受けた「コロナ融資」の返済方法~

皆さん、こんにちは。フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

大阪はようやく梅雨入り宣言されました。

 

梅雨入りが非常に遅かったので、早く明けると思いますが短時間に強烈な雨が降ることが多くなっているので皆様もお気を付けください。

 

さて、今回は私が支援している事業者様のケースを紹介します。

 

現在、支援させていただいている事業者様ですが、約10年前からリスケしており、新規融資を受けることができない状態が続いていました。

 

そんな中、2010年の春ごろから新型コロナが蔓延し、いわゆる「コロナ融資」ということで、リスケしている企業にも新規融資が出ました。

 

この事業者様もリスケ中でしたので原則、資金調達はできなかったのですが「コロナ融資」は審査も緩く、融資を受けることができました。

 

コロナ融資の多くは据置期間(一定期間、元本返済を行わず利息のみを払う)を設けることができますので、この事業者様も3年の据置期間を設定しました。

ここまでは、リスケしている企業の多くが同じ状況かと思います。

 

しかし、コロナ融資の据え置き期間が終わり、返済が始まると様々な問題が出てきます。

 

例えば、この事業者様のように元々リスケしており、経営改善計画に沿って僅かの額を返済していた状態で、リスケ中に借りた「コロナ融資」の返済はどのように取り扱うべきかという問題が出てきます。

 

明確なルールがあるわけではないのですが、リスケ中に行った借入はそうでない借入よりも優先的に返済されるとするのが一般的です(あくまで私の経験則ですが)。

 

なぜなら、リスケ中は原則として借入はできませんが、金融機関からすればその中で無理をして融資したため、まずはそれを優先的に弁済すべきだとする考え方が成り立つからです。

 

ですから、この事業者様もリスケ中にコロナ融資を受けたわけですから、まずはコロナ融資を優先弁済すべきだと言えます。

 

しかし、コロナ融資の返済を優先すると、元々あった借入の返済が向こう数年できないという問題が発生します。

 

ですので、リスケ中に借りた融資を優先的に弁済するのが一般原則としながらも、明確なルールがあるわけではありませんので、私どものような専門家はメインバンクや保証協会と連携し、ケースバイケースで対応します。

 

今回の事業者様については、当初メインバンクは「コロナ融資を優先弁済」と強く主張しておりました(メインバンクがコロナ融資を行っていた)が、他行と調整した結果、それでは衡平性が著しく棄損されるということで、結局は全ての借入と同様に取り扱うことで落ち着きました。

 

このように、リスケ中に受けた新規融資の取り扱いは非常にナーバスな問題となることが多いのですが、コロナ以前はこうした状況はレアケースでしたので、返済についての議論の中で大きく取り扱われることはありませんでした。

 

しかし、コロナ融資はリスケ中の事業者様も借りている場合が多く、こうした問題は実際に増えてきています。

 

メインバンクの担当者がしっかりしていれば上手くハンドリングしてくれると思いますが、そうでない場合もありますし、金融機関同士で調整が取れない場合もあります。

 

そうした場合には必ず速やかに専門家にご相談ください。

 

それではまた次回です。

2024.06.10

  • 経営改善

売上アップの4つの方法

フラッグシップ経営の社内です。

 

前回に引き続き、以前のコラム「経営を学び、地道な改善を継続しろ」から

一要素を選んでひも解いてみたいと思います。

 

今回は「売上アップ4つの方法」です。

 

売上とは何の要素で構成されているのでしょうか。

たとえば、お客様の数。より多くのお客様がお店に来て商品を買ってくれれば売上は増えます。

 

しかし売上の要素はそれだけではありません。

他には単価、点数、購入頻度(回数)、取引継続期間などが挙げられます。

 

また、単価ひとつをとっても商品の単価、お客様一人当たりの単価と、

各要素をさらに展開して考えることができます。

 

売上と一括りにしてしまうとなかなか方策は思い浮かばないものですが、

このように分解してみると自社にとってどこから取り組むべきなのかヒントが見えてくるかもしれません。

 

社内 愛里

2024.06.04

  • 経営改善

倒産のアラート!

こんにちは、中小企業診断士の谷です。

 

外部環境が急速に変化する昨今、企業が将来どうなるかは誰にも確実には分かりません。

しかし、多くの倒産する企業にはいくつかパターンがあり、しかも経営状態が悪化する「予兆」があります。

それが「倒産のアラート」です。

 

その予兆は、業種・業態、企業規模などによって様々ですが、今回はその一例をご紹介します。

まず、基本的な考え方として、企業は投資を行うことによって売上高を伸ばし、利益を獲得します。

そして、その利益を原資に、さらなる設備投資を行い、企業を成長させます。

しかし、中小企業の倒産事例を調べると、その多くに「設備投資の失敗」が潜んでいます。

 

設備投資成功パターン

【設備投資が成功した会社】

積極的に設備投資を行うと、固定資産の金額が増加します。

この会社は、設備投資を行うことで、固定資産が増加し、売上も拡大しています。

設備投資が売り上げに貢献しており、かつ、事業が成長している成功会社です。

 

設備投資失敗パターン

【設備投資に失敗した会社】

逆に、設備投資に失敗した会社はどうでしょうか。設備投資を行っているにも関わらず、徐々に売上が減少しています。また、設備投資を行ったことで減価償却費などの経費の増加し、売上減少時には、大幅な赤字計上を余儀なくされます。

それに加え、設備投資には当然お金がかかっているので、その資金を借金で行っていた場合、支払利息による更なる収益の圧迫や、利益不足での元本返済による資金繰りの悪化など、倒産に向けた悪循環が始まります。

つまり、設備投資の後に売上高が増えないのは倒産の兆候があり、注意が必要になります。

 

予兆を素早くとらえるには?

我々が経営顧問等でご支援させていただく際、事業者様の毎月の試算表をモニタリングし、会社の健康状態に異常がないか(アラートがでていないか)チェックします。

上記のような設備投資と売上の関係については、「有形固定資産回転率」と呼ばれる経営指標を見て、我々は分析します。

 

有形固定資産回転率は、下記の式で計算します。

有形固定資産回転率 = 売上高 ÷ 有形固定資産

 

固定資産が一定で、売上拡大している場合は、回転率が増加します。

逆に、設備投資を行い固定資産が増加したにもかかわらず、売上が減少している場合は、大幅に回転率が低下します。

つまり、有形固定資産回転率が低下しはじめている場合、「倒産のアラートがなっているのではないか?」と疑います。

そして、アラートが鳴ると、倒産の悪循環に陥る前に、素早く対応します。(異常を早期発見することで、改善策の選択肢が広がります。)

 

これはあくまで一例ですが、我々は様々なアプローチで企業の健康状態をモニタリングします。

もし会社の健康に不安がある場合は、一度、弊社の健康診断にお越しください。

 

中小企業診断士 谷 七音

2024.05.13

  • 経営者の姿勢
  • 資金繰り

資金調達に会社の運命の全てを託すな

フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

弊社に相談に来られる案件の内、「資金調達」を希望されるケースが3割から4割程度あります。

 

単に資金調達を希望するのであればメインバンクや取引銀行に相談すれば済む話なのですが、なぜ弊社にご相談に来られるのでしょうか。

 

そうです、皆様のご想像の通り、取引金融機関から資金調達を断られて、資金ショートの危険性をようやく理解したためです。

 

目先の資金ショートを回避するために、どうしても資金が必要という状況でご相談に来られるのですが、そうしたケースのほとんどが「資金調達はできない」状態です。

 

メインバンクや他の取引金融機関に断られているというのは表面的な事象で、話を聞きますと色々出てきます。

 

  • すでにリスケしている
  • 債務超過である
  • 税金を滞納している
  • ファクタリングを活用している
  • 代表者個人も消費者金融から借入がある
  • その他もろもろ・・・

 

貸す側からすると「融資を絶対にしたくない」と思ってしまう条件が全部盛りの状態ですので、そもそも資金調達を望むことが間違っています。

(よく、資金調達コンサルタントと名乗る専門家が資金調達に奔走し、調達をしたという話を聞きますが、真っ当な会社であれば金融機関がきちんと対応してくれます。資金調達に外部専門家を活用するということ自体が非常に怪しく、粉飾や金融機関を欺く資料を作成し、半ば強引に資金調達をして後で問題になるケースが多いのが実態です。)

 

私は経営者の方々には「資金調達の可否が自分の会社の運命を握っている状態」は絶対に作らないでくださいと強く伝えています。

 

まずは、しっかりと利益が出る体制になるよう全身全霊で取り組む。

 

何をおいても黒字化。

 

少しの黒字ではなく、営業利益率10%以上の黒字化を目指す。

 

営業利益でしっかりとプラスになるよう、固定費の削減、利益率の改善、新規顧客の開拓、既存取引先のシェアアップなどを不退転の気持ちで取り組む。

 

とはいえ、黒字化には時間がかかりますので資金ショートを回避するために換金できそうな資産はすべて現金に換える(車、有価証券、会員権、保険など)、売掛先に入金を速めていただくように依頼する、買掛先に支払いの猶予を申し出る、その他にも親族から借りるなど、目先の資金ショートの対策もアドバイスはします。

 

資金ショート回避のために金融機関からの資金調達にすべてを託すのではなく、経営者が「今自分がすべきこと」をしましょう。

 

また、赤字を借入で補填するという「悪い癖」が骨の髄までしみ込んでいる経営者が本当に多いですが、その考え方を根本から改めなければ、その経営者にも会社にも未来はありません。

 

借入に依存するのではなく、「商売で稼ぐ=お客様に喜んでもらう」というビジネスの原理原則を思い出してください。

 

借入に依存した経営はお客様から評価されていない証拠です。

 

資金調達に会社の全ての運命を託すような経営とは決別し、お客様に喜んでいただく価値を提供し、収益性の高い会社を目指す。

 

弊社はそのような気持ちをもった経営者と伴走したいと考えています。