経営者が“経営に本気になる”ために必要なこと

皆さん、こんにちは。
フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。
今回は経営者の意識についての話です。
赤字の企業を立て直すにはビジネスモデルを再設計するのはもちろんですが、経営者がこれまでの意識を変える覚悟がなければなりません。
その辺りを最前線で経営改善支援を行っている私が感じたことをまとめてみました。
【赤字企業を変える意識の再起動】
企業が赤字に陥ったとき、真に問題となるのは財務状態そのものではなく、「経営者の意識」の在り方です。
多くの経営者が、数字に対して鈍感になったり、「なんとかなるだろう」という惰性の経営に陥ってしまっています。
しかし、組織を立て直すためには、まず経営者自身が“本気で経営と向き合う”ことが不可欠です。
では、どうすればその意識転換が起こるのか。以下に、実務的な視点と心理的側面を交えて考察していきます。
1. 「現実」と「危機」の認識を促す
経営者が経営に向き合わない最大の要因の一つは、「自社の危機に気づいていない」または「見て見ぬふりをしている」ことです。
客観的な数値で現状を“見える化”する
→ 損益、キャッシュフロー、債務超過リスクなどを具体的に分析
もし何もしなかった場合の“未来”を提示する
→ 資金枯渇の時期や倒産リスクを時系列で示す
社外の目(金融機関、取引先、専門家)を通して事実を突きつける
→ 第三者の評価は、当事者に強いインパクトを与える
➡ 経営者自身が“もう逃げられない”と腑に落とすことが、意識改革の第一歩です。
2. 「本音」から再起の動機を引き出す
赤字経営の中でも事業を続けるのには、何かしらの理由があるはずです。
本音に向き合うことで、再び“やる気の種”を掘り起こせることがあります。
「なぜ今までこの会社をやってきたのか?」を掘り下げる
「何のために事業を続けたいのか?」という問いを自分に投げかける
“生活のため”や“家族のため”も立派な動機になる
➡ 原点を思い出すことで、表面的な危機感ではなく“腹の底からの覚悟”が芽生えることがある。
3. 「孤独からの脱却」を支援する
本気になれない経営者の多くは、孤独で疲弊しています。支援者や信頼できる人の存在が、再起のきっかけになります。
相談できる右腕・外部顧問・士業の存在を用意する
愚痴や不安も言える安全な対話の場をつくる(定期的な面談など)
「経営に向き合うのは自分一人ではない」という安心感を与える
➡ 経営は孤独との戦いだが、“一緒に向き合う人がいる”と認識できると、前に進む意欲が生まれる。
4. 「小さな成果体験」を仕組みとして設計する
いきなり黒字化を求めるのではなく、改善の手応えを“体感”できる設計が重要です。
固定費の1割削減、原価率の見直しなど、限定的な改善プロジェクトを実施
数字に表れる前に、社員の声や顧客の反応をフィードバックとして届ける
成果が出たら小さくても大きく称賛する
➡ 「やれば変わる」という実感が、経営に対する本気度を強くしていく。
5. 「ビジョンの再構築」で未来を描かせる
目の前の赤字にばかりとらわれていると、経営者の視野はどんどん狭くなっていきます。
だからこそ、未来を語れるビジョンの再定義が必要です。
3年後・5年後の「理想の会社像」を言語化するワークを設ける
経営者の“ワクワク”を呼び起こすような問いを投げる(「もし資金や人材が無限にあるとしたら?」など)
社員と共有できる“物語”として構築する
➡ ビジョンが明確になると、経営にエネルギーが戻り始める。
6. 「覚悟」を問う最後の問いかけ
すべての働きかけをしても、変わらない経営者もいます。
そのときは、「続けるか、やめるか」という人生の岐路として、経営を再定義させる必要があります。
事業を続けることが、自身と家族、従業員にとって幸せか?
続けるなら、何を捨て、何を守る覚悟があるのか?
「経営者として生きる」ということの意味を再認識させる
➡ 逃げ道を断ち、自らの人生をかけて「本気でやるか」を問う局面が必要になることもある。
最後に
赤字企業の再生において、最も重要なのは「数字」ではなく、「経営者の意識改革」です。
その改革は、強制や叱責では起こりません。
事実を直視させ、心に火を灯し、伴走することで初めて本気になるきっかけが生まれるのです。
“再生”は技術でなく、覚悟と変化の連続。
その第一歩は、経営者が「もう一度、本気で経営と向き合う」と決意することにあります。