2025.04.16

  • 経営改善
  • 経営者の姿勢

経営者が“経営に本気になる”ために必要なこと

皆さん、こんにちは。
フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

今回は経営者の意識についての話です。
赤字の企業を立て直すにはビジネスモデルを再設計するのはもちろんですが、経営者がこれまでの意識を変える覚悟がなければなりません。

その辺りを最前線で経営改善支援を行っている私が感じたことをまとめてみました。

【赤字企業を変える意識の再起動】
 企業が赤字に陥ったとき、真に問題となるのは財務状態そのものではなく、「経営者の意識」の在り方です。
多くの経営者が、数字に対して鈍感になったり、「なんとかなるだろう」という惰性の経営に陥ってしまっています。
しかし、組織を立て直すためには、まず経営者自身が“本気で経営と向き合う”ことが不可欠です。

では、どうすればその意識転換が起こるのか。以下に、実務的な視点と心理的側面を交えて考察していきます。

 

 

1. 「現実」と「危機」の認識を促す
経営者が経営に向き合わない最大の要因の一つは、「自社の危機に気づいていない」または「見て見ぬふりをしている」ことです。

客観的な数値で現状を“見える化”する
→ 損益、キャッシュフロー、債務超過リスクなどを具体的に分析

もし何もしなかった場合の“未来”を提示する
→ 資金枯渇の時期や倒産リスクを時系列で示す

社外の目(金融機関、取引先、専門家)を通して事実を突きつける
→ 第三者の評価は、当事者に強いインパクトを与える

➡ 経営者自身が“もう逃げられない”と腑に落とすことが、意識改革の第一歩です。

 

 

2. 「本音」から再起の動機を引き出す
赤字経営の中でも事業を続けるのには、何かしらの理由があるはずです。
本音に向き合うことで、再び“やる気の種”を掘り起こせることがあります。

「なぜ今までこの会社をやってきたのか?」を掘り下げる

「何のために事業を続けたいのか?」という問いを自分に投げかける

“生活のため”や“家族のため”も立派な動機になる

➡ 原点を思い出すことで、表面的な危機感ではなく“腹の底からの覚悟”が芽生えることがある。

 

 

3. 「孤独からの脱却」を支援する
本気になれない経営者の多くは、孤独で疲弊しています。支援者や信頼できる人の存在が、再起のきっかけになります。

相談できる右腕・外部顧問・士業の存在を用意する

愚痴や不安も言える安全な対話の場をつくる(定期的な面談など)

「経営に向き合うのは自分一人ではない」という安心感を与える

➡ 経営は孤独との戦いだが、“一緒に向き合う人がいる”と認識できると、前に進む意欲が生まれる。

 

 

4. 「小さな成果体験」を仕組みとして設計する
いきなり黒字化を求めるのではなく、改善の手応えを“体感”できる設計が重要です。

固定費の1割削減、原価率の見直しなど、限定的な改善プロジェクトを実施

数字に表れる前に、社員の声や顧客の反応をフィードバックとして届ける

成果が出たら小さくても大きく称賛する

➡ 「やれば変わる」という実感が、経営に対する本気度を強くしていく。

 

 

5. 「ビジョンの再構築」で未来を描かせる
目の前の赤字にばかりとらわれていると、経営者の視野はどんどん狭くなっていきます。
だからこそ、未来を語れるビジョンの再定義が必要です。

3年後・5年後の「理想の会社像」を言語化するワークを設ける

経営者の“ワクワク”を呼び起こすような問いを投げる(「もし資金や人材が無限にあるとしたら?」など)

社員と共有できる“物語”として構築する

➡ ビジョンが明確になると、経営にエネルギーが戻り始める。

 

6. 「覚悟」を問う最後の問いかけ
すべての働きかけをしても、変わらない経営者もいます。
そのときは、「続けるか、やめるか」という人生の岐路として、経営を再定義させる必要があります。

事業を続けることが、自身と家族、従業員にとって幸せか?

続けるなら、何を捨て、何を守る覚悟があるのか?

「経営者として生きる」ということの意味を再認識させる

➡ 逃げ道を断ち、自らの人生をかけて「本気でやるか」を問う局面が必要になることもある。

 

 

最後に
赤字企業の再生において、最も重要なのは「数字」ではなく、「経営者の意識改革」です。
その改革は、強制や叱責では起こりません。

事実を直視させ、心に火を灯し、伴走することで初めて本気になるきっかけが生まれるのです。

“再生”は技術でなく、覚悟と変化の連続。

その第一歩は、経営者が「もう一度、本気で経営と向き合う」と決意することにあります。

2025.01.20

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言い訳して逃げたい、自分を守りたい気持ちとの葛藤

こんにちは。ビジネスアナリストの社内です。

 

先日、経営改善を支援させていただいている事業者様の元に伺いました。

こちらの事業者様は主な事業から全く無関連な分野へと事業を多角化した結果、資金繰りが苦しくなってしまいました。

「なぜこのような事態になったのか」とご一緒に要因分析を進めていたところ、

事業者様は

「〇〇さんの収益管理がずさんだった。」、

「物価高騰、賃上げが苦しい。」、

「銀行員が融資してくれると言っていたのに手のひらを返された。」、

「補助金に採択される算段で△△事業を始めたら、不採択になって全額自社負担になってしまった。」

というようにお話しされていました。

 

しかし、本当はこうではないでしょうか。

「〇〇さんが収益管理をできるように教育できていなかった自分のせい。」、

「物価高騰、賃上げに対し、値上げ交渉や売上拡大を図ってこなかったせい。」、

「銀行員の話や補助金等確証のないものを頼りに、本業の業績を改善することから目を背けていたせい。」など、

すべては自分の失敗であったとご本人もきっと分かっておられると思います。

 

今こんなにも困窮してしまっている現実を他の人や外部環境のせいにしなければ、精神状態を保てないかもしれません。

しかし、現実を見なければ時間だけが過ぎて事態は悪化していきます。

 

1つ前のコラムでも「自責思考」が話題になっていますが、

私は今回、自分の失敗を認めることには、大きな勇気が必要であるけれども会社を立て直すために必要不可欠なことだと学びました。

これまでの自分の失敗を認めることができて初めて、学びを得て、これからの経営に活かすことができると思います。

 

ビジネスアナリスト 社内 愛里

2025.01.14

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ポストが赤いのも全て社長の責任

こんにちは。中小企業診断士の谷です。

 

何か思うようにいかないとき、つい「環境のせい」「他人のせい」にしてしまうことはありませんか?

 

私の周りにも、学生時代、資格受験時代、社会人になってからでも、言い訳、周りの愚痴ばかり言って、
結局、本人の望んでいる状態になれず苦しんでいる人は多いと思います。

 

たしかに、うまくいかないとき、「他責」にしたくなる気持ちはものすごく分かります。しかし、それを嘆いているだけでは、状況は決して改善しません。他人や、環境を変えることはできないからです。自分が変えることができのは「自分だけ」だと思います。

常に「自責思考」でいるのは難しくても、やはり、うまくいかないときは、一度立ち止まって、
「他責思考→自責思考」に切り替える時間を取る必要があると思います。

 

会社経営でも同じように、外部環境や従業員の問題が影響し、経営状態が悪化することはあります。
そんな経営がうまくいかないときこそ「自責思考」に切り替える時間が必要です。

 

一倉定氏が示す「経営者の責任感」

伝説の経営コンサルタントと称される一倉定氏は、「ポストが赤いのも全て社長の責任」と語りました。この言葉は一見極端に聞こえますが、経営者があらゆる出来事を「自分ごと」として捉える姿勢の重要性を教えてくれます。

この考え方は、経営者としての成長だけでなく、経営改善を成功に導くための大切な姿勢です。

 

思考を変えて、行動を変える

中小企業の経営者として、従業員のモチベーション低下、営業成績の停滞、取引先との関係悪化など、多くの課題に直面することがあるでしょう。しかし、それらを「従業員のせい」「環境のせい」と片付けてしまうだけでは、状況は変わりません。

例えば、「営業成績が上がらない」と嘆くのではなく、「営業体制や指導方法に問題がなかったか?」と、起きている状況を「自責思考」で捉えなおし、考え直すことが大切です。このように考えることで、具体的な改善策を見いだすことが可能になるからです。

 

経営改善における「自責思考」

経営改善では、苦境の原因を「窮境要因」として分析します。この要因は以下の2つに分類されます:

  • 内部要因(会社内部の問題)
  • 外部要因(市場の変化や景気など会社外部の環境)

多くの場合、外部要因に対しては「どうしようもない」と諦めがちです。しかし、自責思考を持つ経営者は、「市場の変化への対応が遅れた」「景気動向を見越した計画が不十分だった」と捉え直します。このように、外部要因さえも自らの責任として考え直すことで、主体的に解決策を見出す力が生まれます。

 

経営改善の第一歩

自責思考を持つことは、決して簡単ではありません。しかし、問題を他人や環境のせいにせず、自ら行動の主体となる姿勢は、経営者としての成長を加速させる重要な鍵です。

中小企業の経営者の皆様へお伝えしたいのは、「すべてを自分の責任として捉えることで、初めて経営改善への第一歩が踏み出せる」ということです。

経営が悪化した今こそ、「自責思考」に切り替え、自らの行動を変えることで、復活の糸口が見えてくると思います。

 

中小企業診断士 谷 七音

2024.12.13

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小さな成功体験の積み重ね

こんにちは、ビジネスアナリストの社内です。

 

最近「一倉定の社長学(作間信司、2019)」を読みました。

本著作の内容のうち、「シンデレラの発見」という言葉が心に残ったので、ご紹介します。

 

シンデレラの発見とは、お客様のニーズはどこにあるのか、「お客様がお金を払ってくれている事実」を先入観なしに見て

ヒントを得ること、そしてヒントから行動に移していくと、新たな発見があるということです。

 

私がご支援に携わっている食品卸売業の事業者様は、全国各地の料亭に高級食材を販売しておられます。

しかし、長年の間、売上が低迷しており悩んでおられました。

その際、弊社代表の長尾が事業者様に申し上げたことは、

ただ漠然と悩むのではなく、市場を見ることと、行動を起こすことでした。

 

市場にはよりよい食材を使って付加価値を高めたい料亭がたくさんいます。

そこで、全国の料亭へDMを送ってみたところ、喜ばしいことに各地から問い合わせや発注がありました。

長年売上が下がるばかりで悩んでいた事業者様も、

自分の商品の市場価値が高いことを再発見でき、自信と元気を取り戻された様子でした。

さらなる販路の拡大に前向きに取り組むことができそうです。

 

売上額としてはほんの少額で、目標の1%にも及ばないかもしれません。しかし、そのほんの少しがすべての始まりだと思います。

 

本作には、成功の決め手の一つは「足元に未来に繋がる芽がないか」、

「小規模であってもお客様が支持してくれる芽がないかを丹念に探してみること」であると書かれています。

 

もし今、業績に悩んでいらっしゃるなら、無駄だと決めつけずに、小さなことから試してみるのはいかがでしょうか。

 

社内 愛里

2024.11.30

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赤字会社の共通項

皆さん、こんにちは。フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

11月は出張も多く、非常に多忙でした。

 

大阪を拠点にしながら仙台、京都、岡山、山口、和歌山、福井、三重、東京と主に経営改善支援で各地を行脚してきました。

 

案件の多くはすでにリスケジュール(元本返済の減額または猶予)をしている、もしくはまもなくリスケジュールを行う支援先様で、財務状態が相当程度に毀損されています。

 

業種も規模も様々ですが、財務状態が著しく毀損されている会社の特徴は驚くほど似通っています。

 

私が経営改善の最前線で見てきた経営改善が必要な会社の共通項をいくつかご紹介しましょう。

 

 

1.過剰債務

慢性的な赤字に対して収益性の改善に取り組まず、金融機関から借りることで何とか資金を繋いできたパターンです。特にコロナ融資は満額借りた会社ほど、負債額だけが大幅に増加しています。融資が難しくなると次はリースバックやファクタリングなど限界まで資金調達に奔走し、どうにもこうにも行かなくなってから事の重大性に気づきます。

 

 

2.判断の遅さ

例えば新規開拓営業、値上げ交渉、経費の削減など、すぐに着手しなければならない事案であってもとにかく行動が遅いパターンです。様子を見る、今期はこのままで、業界の慣習だから・・・などの言い訳ばかりで行動に移すまでに数ヶ月もしくは数年を要するケースもあります。

 

 

3.行動量の少なさ

何か新しい取り組みを行う時、赤字体質の会社は1度行動を起こして結果が出なければすぐにやめてしまいます。例えばSNSやHPの更新などです。ビジネスの世界ではすぐに結果が出ないことが多く、継続性が要求されます。経費の削減など即効性のある取り組みも重要ですが、同時に中長期的な飯の種を蒔かなければなりません。しかし、赤字体質の会社には継続性が全くなく、諦めるのが早い傾向にあります。

 

4.外部環境に原因を求める

自社の弱みにフォーカスするのではなく、外部環境に自社の赤字の要因を求めてしまいます。自社の弱みに向き合わず、経営改善から逃げ、時間だけが経過してしまいます。

 

他にもありますが、上記4つの項目は経営状況の悪い会社の多くに共通する特徴です。

 

皆様も一つでも自社に当てはまる場合は、必ず考え方を改めてください。

 

中小企業を取り巻く環境は決して優しいものではありません。

 

経営に対して真摯に取り組む姿勢、結果やプロセスにこだわる姿勢は常に持ち続けましょう。