2025.04.02

  • 経営改善

課題を緩和課題と根治課題に分けて経営改善に取り組む

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

経営改善に必要な課題には、解決策が明確に分かっており、今ある経営資源で解決できるものもあれば、企業の置かれている環境や企業内外の関係性を変更しなければならない、新たな知識や技術、ノウハウを導入しなければ解決できない課題があります。

これらの課題の解決に時間軸を加えて、優先順位を付けていく考え方があります。短期的に素早く解決するべき課題を『緩和課題』、長期的にゆっくりと解決していく課題を『根治課題』と言います。

  • 緩和課題
    目の前の問題やリスクを「一時的に軽減・回避すること」を目的とした課題。発生した事象への対処が中心。
  • 根治課題
    問題の「根本原因を特定し、構造的に解消すること」を目的とした課題。仕組みや制度そのものの変更、変革が中心。

緩和課題の特徴は「応急処置的」、「短期的な効果」、「症状の緩和に焦点」などであり、例えば『クレームが増加している➡対応マニュアルを作成、改定する』、『離職率が増加している➡給与体系や福利厚生を改善する』などです。

一方で、根治課題の特徴は「根本的な解決に焦点」、「中長期視点でのアプローチ」、「本質的な変革・改革が必要」などであり、例えば『クレームが増加している➡サービス提供プロセスやサービス内容そのものの見直し』、『離職率が増加している➡組織文化や職場環境の再構築』などです。

これらの使い分けですが、時間軸(短期OR中長期)だけでなく、課題の対象(表面的OR根本的)、期待する効果(一時的OR持続的)も含めて、判断していきます。

また、緩和措置だけでは、再発リスクが強く、根治措置には、時間面、投資面でのコスト負担が大きいことが多いことにも留意しなければなりません。

これらの課題を段階的、戦略的に組み合わせることで、経営改善に取り組んでいきましょう。

中小企業診断士 木戸貴也

2025.04.01

  • 経営改善

収益構造を理解することで経営者の行動が変わる

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

経営者の多くは、肌感覚で収支がトントンになる売上水準を持たれています。特に創業者の場合は、非常に高い精度で理解されているように感じます。

一方で、決算書や試算表の損益計算書で実際に収支がプラマイゼロの売上を算出している方は非常に少ないです。

実際に、経営改善を進めていく中で、タイミングを見て経営者や幹部社員、後継者の方々と一緒に損益分岐点売上高を算出し、目標利益(借入金の返済も加味して)を達成するための売上高を出していくと現状の売上から30%とか50%くらいの増収がないことには、そもそも収支トントンにならないケースが大半です。

ひどい場合、現状の3倍の売上が理論上必要なケースもあり、現在のビジネスモデルでは到底不可能な状態です。

この現状を把握されると経営者の行動が変わる場合が多いです。

ただ現状を知るだけではあるのですが、例えばダイエットをするのであれば、久しぶりに体重計に乗ったら思っていた以上に体重や体脂肪率が増えており、びっくりすると食事や運動などに自然と気を付けるようなイメージです。

「自社のことだから、経営者の自分が一番理解している」のかもしれませんが、意外と自分のことを客観的に理解できる方は少ないと思いますので、まずは自社の収益構造がどのようになっているのか、何が利益に貢献していて、何が足を引っ張っているのか、どこにどのように手を打てば改善できるのかを知ることだけでもおススメします。

中小企業診断士 木戸貴也

2025.03.21

  • 経営改善
  • 資金繰り

「赤字企業がすべき売上アップの施策」

株式会社フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

全員ではないのですが大幅な赤字を計上している会社の経営者は危機感から固定費の削減を徹底的に進めており、これ以上経費の削減が難しい水準まで取り組まれているケースがあります。

 

私は、赤字でも何も手を打たない経営者をこれまでたくさん見てきましたので、「経費の削減だけでも取り組んでくれて良かった」と一定の評価をしますが、一方で、売上アップについては何も取り組んでいないケースが大半で、その方法も何も考えていない経営者ばかりで呆れてしまいます。

 

そこで、赤字企業の売上アップについての考え方を今回はお伝えします。

 

赤字企業の売上アップはとにかく既存事業の中で伸び代を探すことです。

 

経営者の多くは新事業や新しい取り組み、新しい話が大好きで、既存事業にフォーカスすることを嫌がりますが、既存事業で黒字化できない人間が新しいことに取り組んでも結果は見えていますし、新規事業や新しい話は先行投資や運転資金が先にいることが多く、現状よりもさらに厳しい状況に追い込まれます。

 

まずは、しっかりと既存事業で売上のトップラインを伸ばしていく事に注力すべきです。

 

具体的には既存顧客を売上や粗利の規模でABC分析し、顧客をランク分けします。

 

次にランク分けされた顧客の中で、まだ売上が伸ばせそうな先はないか経営者や幹部が営業担当と濃密に打ち合わせを行います。

 

この時に経営者が参加することが絶対に必要です。

 

経営者が率先して現場に入ることで危機感や必死さが生まれますし、一担当が見逃している事に気付く可能性もあります。

 

売上の伸ばし方としては単純に値上げ交渉も必要ですが、重要なのは他社に回している仕事を自社に回してもらうことです。

 

そのために平時(仕事がない時)から人間関係を構築しなければなりません。

 

人間関係を構築するための方法としてゴルフや飲み食いを想像するかもしれませんが、私の考えは異なっていて業界の情報をいち早く提供すること、取引先のニーズを聞き出すことを平時から徹底しておくことがとても大事です。

 

徹底と言ってもイメージが湧かないと思いますので、週に1回、月に2回など指標を決めて訪問する、提案書を作成する業界動向をメールするなどが良いでしょう。

 

赤字の会社に限って自社が困った時だけ営業する会社が多いですが、いつ何時も取引先のニーズを把握する姿勢やお困りごとを解決する姿勢があるかないかが、とても重要です。

 

私はこのやり方で自社の売上を12.7倍まで上げましたが、その間一度もゴルフやお酒の席は設けておりません。

 

新しい発想ではなく、既存事業の中で、既存の取引先の中で、相手の目線に立ってお困りごとはないか、ニーズはないか愚直に取り組んでいくことが赤字企業に必要な売上アップの施策です。

 

とにかく経営者が現場に出て、お客様の声を聞かなければならないのは言うまでもありません。

 

それではまた次回です。

2025.03.19

  • 経営改善
  • 資金繰り

良かれと思って…は危険?

こんにちは、中小企業診断士の社内です。

 

事業者様のお話を伺っていると、

時々、良かれと思って判断した結果、資金繰りや収益性を一層悪化させてしまっていたということがあります。

 

たとえば、弊社が支援する事業者様は支払サイトを120日から60日にしないと追加の融資はできないと金融機関に言われてしまいました。

それを聞いた社員様は、良かれと思って資金繰りが苦しい中ですぐに60日に変えてしまいました。

その結果、2か月後には資金繰りに困窮する見込みとなり、大慌てしたという事案がございます。

 

よくある事案としては、お客様が喜ぶ、当社も受注できるから会社が喜ぶと思って、

担当者様が各々値引きを続けていていつの間にか利幅が目減りしていたということも当てはまるでしょうか。

 

「良かれと思って」は状況によっては、むしろ良くない、自社を苦しめることになりかねません。

特に資金繰りに困窮している時期は、一つの誤りが命取りになってしまいます。

 

ご支援に携わっていると、自社はどういう状況にあって、何を優先すべきなのかを常に把握し続け、

都度慎重に判断しなければならないことの難しさを感じます。

こういう時はどうすればいいのか、と悩む場合は迷わずに当社のような専門家にご相談ください。

 

中小企業診断士 社内 愛里

2025.02.19

  • 経営改善
  • 資金繰り

なぜ、売上は増加しているのに、資金繰りが悪化したのか?

こんにちは。中小企業診断士の谷です。

 

資金繰りの悪化には、「業績拡大時の資金繰り悪化」と「業績低迷時の資金繰り悪化」の2パターンがあります。

 

今回は、前者のケースについて、最近、経営顧問としてご支援させていただくこととなった運送業の事業者様の事例をもとにご説明します。

(※その他の資金繰り悪化の原因については、こちらのブログで詳細にまとめております。)

 

この事業者様からは、「売上が増加しているのに、手元の資金繰りがどんどん苦しくなっている」というご相談を受けました。

実際に直近の決算や試算表を確認してみると、確かに毎月の売上高は増加傾向にありました。しかし、月末の現預金はどんどん目減りしており、ご相談いただいた時点では、ほぼゼロに近い状態。資金ショートを回避するためにファクタリングを活用せざるを得ない状況となっていました。

 

なぜ、売上が増加しているにもかかわらず、手元のキャッシュが減少しているのでしょうか?

 

資金繰り悪化の要因として考えられる要素はいくつかありますが、

主な原因となっていたのは、

「入金サイトと支払いサイトのズレによる運転資金の増加」にありました。

 

資金繰りが悪化した具体的な流れを見てみましょう。

① 事業開始当初は黒字で採算がとれていた。

② 事業規模を拡大し、ドライバーの増員や車両の増車を実施。

③ しかし、手元資金が少ない中で、支払いが先行(外注費、人件費、燃料費など)し、売上の入金までに時間差があるため、立て替える運転資金が増加(これを「増加運転資金」といいます)。

④ 資金不足を補うために、金利の高いノンバンクやファクタリングを活用。

⑤ その結果、支払利息や手数料がかさみ、利益率が低下。

⑥ 翌月も資金不足が続き、さらにファクタリングの利用額が増加。

⑦ 利益率の低下が続き、最終的に赤字転落。

 

このような悪循環に陥り、抜け出すのが非常に困難になっていました。

 

この事例から学ぶべきこと

今回のケースから言えるのは、「体力をためてから拡大する」ことの重要性です。

売上が増加すれば、当然事業拡大のチャンスと考えがちです。しかし、十分な運転資金を確保せずに規模を拡大すると、キャッシュフローが回らなくなり、事業の継続が危ぶまれる事態に陥る可能性があります。

したがって、

  • 事業拡大の前に運転資金を十分に蓄えること

  • 入金と支払いのサイト管理を徹底すること

  • 資金調達手段の選択肢を慎重に検討すること

これらのポイントを押さえながら、健全な資金繰りを維持することが重要です。

 

 

中小企業診断士 谷