黒字倒産のメカニズムを解説「利益は出ているのに倒産する二つの主要な理由」
皆さん、こんにちは。
株式会社フラッグシップ経営の長尾です。
今回は黒字倒産についてです。先日、取引先様とお話ししていまして、黒字倒産についてのメカニズムを説明してほしいとのご依頼を受けました。
そもそも黒字倒産とはどういう事でしょうか。
黒字倒産とは帳簿上は利益(黒字)を出しているにもかかわらず、資金が尽きて倒産してしまう現象のことです。
これは「利益」と「現金(キャッシュ)」の間にズレが生じることで起こり、特に中小企業にとって大きなリスクとなります。
今回は、黒字倒産を引き起こす代表的な二つのメカニズムについて、詳しくご説明いたします。
1.「入金サイト」と「支払いサイト」の違いによるタイムラグ
企業間の取引では、商品やサービスを提供した(売上を計上した)その場で現金を受け取る即時決済は少なく、一定期間後に代金を受け取る掛取引が一般的です。
この代金の回収期限を入金サイト(または回収サイト)と呼び、反対に仕入れ代金などを支払う期限を支払いサイトと呼びます。
黒字倒産の多くは、この入金サイトと支払いサイトの「ズレ」によって引き起こされます。
例えば、
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入金サイトが「月末締め・翌々月末払い」(売上から入金まで最長で約90日)
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支払いサイトが「月末締め・翌月末払い」(仕入れから支払いまで最長で約60日)
という取引条件だったとしましょう。
この場合、商品を売ってから現金が入ってくるまでに最大で3ヶ月近くかかりますが、仕入れ代金は1〜2ヶ月後には支払う必要があります。
つまり、お金が出ていく(支払い)タイミングが、お金が入ってくる(入金)タイミングよりも早いのです。
売上が順調に伸び、利益が増えている時期ほど、仕入れも増えます。
その結果、手元に現金がない状態で、先に仕入れの支払期限が到来し、一時的な資金不足に陥ってしまうのです。
帳簿上は黒字でも、目の前の支払いができなければ、会社は倒産せざるを得ません。
2.利益よりも「元本返済額」が多い場合の資金流出
二つ目のメカニズムは、会計上の利益と、現金の減少額が一致しないという点にあります。
特に、金融機関からの借入金の元本返済が、このズレの大きな原因となります。
会社の利益を計算する損益計算書(P/L)では、借入金の「利息」は費用として計上されますが、「元本」の返済は費用とは見なされません。
元本返済は、バランスシート(貸借対照表)上で負債が減少する処理となり、利益の計算には影響しないからです。
利益が出ていても、それとは別に毎月の借入元本返済分だけ、現金が大きく流出していきます。
例えば、毎月50万円の利益が出ている会社でも、銀行への元本返済が毎月80万円ある場合、差し引きで毎月30万円の現金が会社から出ていってしまうことになります。
この状態が続けば、いずれ手元の現金は底をつき、たとえ黒字であっても、人件費や家賃、仕入れ代金などの支払いができなくなり、倒産に追い込まれてしまうのです。
黒字倒産を防ぐためには、帳簿上の利益だけでなく、このキャッシュフロー(現金の流れ)を常に把握し、特に「入金と支払いのタイミング」と「借入金の返済計画」を慎重に管理することが極めて重要となります。
当たり前と言えば当たり前の話ですが、帳簿だけ(特に損益計算書だけ)見ていても、メカニズムは黒字倒産の原因は解明できないですね。
それではまた次回です。