2024.08.29

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会社と個人の財布を分ける

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

「会社と個人の財布を分ける」

 

当たり前のことですが、これが出来ていない会社は一定数存在します。

特に小規模の個人事業や同族会社で見られます。

 

家の買い物を経費で落とす様な小さいものから、数万円から数十万円の飲食代や旅行代を会社の経費に算入させようとするケースも見られます。

これらを良しとはしませんがまだかわいいもので、本当に財布が同質化している場合は会社に現金がいくら残っているのかすら分かっていません。

 

社長に「今日現在の手許現金はいくら残っていますか」と質問すると、「分からない」と返ってきます。

帳簿と金庫にある現金の残高が異なるため何が正しいのかわからないのです。

日頃帳簿と現金の実残高を合わせている会社が殆どだとは思いますが、こういったどんぶり勘定を行っている会社は、会社の状態を正確に把握することができず経営難に陥ることが多いです。

 

経営難で資金不足に陥ると、金融機関からの借入の延滞、税金や社会保険料の滞納、仕入先への支払い遅延、果ては従業員給与の未払いなど、企業はあらゆる支払を止めてでも資金の確保を行い、事業継続の可能性を追求することになります。

 

上記の企業は、私が関わった段階で既に社保滞納、給与未払いにより退職者が続出しており、間もなく再建不能のため廃業となりました。

 

現預金は目に見えて価値がわかる資産です。

本来ならば貸借対照表の科目の中で一番正確な数字を示せる科目と言えるでしょう。

 

会社は会社の財布、個人は個人の財布を使う。

最低限このルールを守らなければ、試算表や決算書の信憑性が無くなり会社の正確な財務状態や経営成績を知ることはできません。

 

正しい会計知識とルールを守って経営状態の把握に努めましょう。

 

中小企業診断士 杉本貴弘

2024.08.28

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苦渋の決断を先延ばしにした経営者の末路

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

 

経営改善計画を策定し、金融機関からのリスケ等の金融支援を受けてながら、経営改善に取り組んでいても残念ながら再生できずに倒産にいたることがあります。

 

弊社にご相談いただいたタイミングでの経営の毀損状態は様々で、今月末の支払ができず打てる手が限られるケースもあれば、まだリスケ前であり複数の選択肢を持ったうえで改善に取り組めるケースもあります。

 

後者であれば、リスケによって資金繰りを改善し、『固定費削減→利益率改善→売上高増加』のステップに沿って経営改善に取り組むことをベースに考えるべきです。

 

前者の場合でも基本的なステップは同じなのですが、とにかく1、2か月の資金繰りを確保しなければなりません。

 

返済を止める、納税を遅らせる、仕入の支払を待ってもらう、代金回収を早めるなどで対応できることもありますが、この段階で資金がショートしてしまうことが実際のところあります。

 

何とか資金を確保して乗り越えた先で問題が発生します。

 

それは、経営者が今までのやり方、考え方、仕事の進め方、組織体制、営業拠点などを変えることができず、結果として直ぐに資金が枯渇してしまうことです。

 

経営改善が必要になる背景には、経営者の判断ミス、戦略の誤りなど経営者に起因する原因があるものです。

 

赤字になってしまったやり方、考え方を改めない限りは、黒字化し、経営改善を進めることは厳しいです。

 

コンサルタントとしてクライアントが倒産することを回避し、少しでも早く再生してほしいとの思いから、厳しい言い方や言いたくないようなことなども経営者に伝えます。

 

しかし、最終的な意思決定をするのは経営者ですし、伝えるべきことは伝えた上での意思決定なのであればその意見を尊重して経営改善に取り組みます。

 

人に言われたからやっているからでは力は入らないでしょうし、何より自分で決めたことに責任を持って取り組むことに意味があると思います。

 

一方で、倒産に至った経営者から、「あの時、木戸さんが言ったようにしていたら良かった。」との話がありました。

 

この案件については、他の経費削減や収益改善、売上アップに取り組んでも赤字幅が大きすぎるため、他の策を検討し続けた上で、どうしても人件費の削減が必要であると提言していました。

 

何度も資金繰りや損益を確認しながら話し合った結果、現体制で継続するとの意思決定でした。

 

結果的に倒産に至った案件の話ですので、苦渋の決断を先延ばしにしたことの結果論ではありますが、意思決定した内容には強い気持ちでコミットしなければなりません。

 

コンサルタントとして、提言内容や経営改善の方向性などがクライアント企業と合わないのであれば、他者にアドバイスを求めていただいて構わないと考えています。

 

その内容がいいと思ったのであれば、それを採用したらいいのです。決めることが経営者の仕事です。

 

特に再生局面では、重たい意思決定に迫られることが多々あります。

 

納得いかないこと、理解が不十分なことがあれば、とことん考えて、相談して、経営の改善に向き合いましょう。

 

中小企業診断士 木戸貴也

2024.08.26

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強い意志がない経営者は何をやっても無理

皆さん、こんにちは。フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

最近の経営支援の案件は、以前にも増して厳しい案件が増えています。

 

このまま倒産件数が加速度的に増えていくのではないかと不安になります。

 

特に目立つのは「すでにリスケ中で資金調達ができないにもかかわらず手元キャッシュが少なすぎる」ケースです。

中には運転資金が数万円、数十万円のケースもありますし、百万円を工面するのも難しいケースも多くなりました。

 

そのような状況に至らないと置かれている状況が理解できない経営者の方も多くなりましたし、落ち込んで泣き言や他責思考の経営者の方も多くなりました。

 

私は自社のコンサルタント職にも伝えるのですが「できないものはできない。」という考え方をもっています。

 

経営者の能力や気持ち、手元の運転資金、金融機関の支援スタンスを総合考慮すると残念ながら「倒産やむなし」と判断せざるを得ないことはあります。

 

経営支援をしている専門家から「そのような言葉は聞きたくない」とお叱りを受けるかもしれませんが、それが現実です。

 

経営する能力がないのに経営者をやってしまった、赤字に向き合わず借入でその場逃れをしてきた経営者には明るい将来はありません。

 

再生できる可能性があるとすれば、必死に問題と向き合い、改善に向けて実践することです。

 

まずは、気持ちを強く持つことがスタートなのですが、ここが難しいようです。

 

私も人生を振り返るととても辛い時期がありました。

 

でも、強い気持ちで何とか乗り越えることができました。

 

強い気持ちと行動が状況を打破することができます。

 

資金繰りを改善する方法、業績を改善する方法、金融機関の支援を取り付ける方法はたくさんありますが、すべて経営者自身に強い心がなければ道半ばで終わります。

 

プライドを捨て、自分の責任で経営を立て直すという強い意志をもって経営に真摯に向き合えば道は開かれます。

 

精神論と揶揄する人も大勢いますが、経営者の正しい方向の強い精神力こそが経営をする上で最も重要な経営資源なのです。

2024.07.31

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改善計画が未達の場合どうなるか

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

バンクミーティングを経て合意を得た経営改善計画については、認定支援機関が引き続きモニタリングを行い、計画の進捗確認や遂行を促します。

 

もし、モニタリングの結果、計画を達成が見込めない場合どうなるかという点を気にされる企業様も多いかと思います。

 

策定した実抜計画・合実計画の改善計画の達成が見込めない場合は、実質債務超過額の解消や債務償還年数についても当初計画の期間内の達成が困難になると考えられます。

全て個別対応となりますが、支援機関は取引金融機関と情報共有を行い、対応策を検討することとなります。

 

計画と実績の乖離が軽微であり、再度リスケジュールの支援により計画への復帰が可能と見込まれる場合は、取引金融機関の同意を得て再リスケジュールを検討します。

一方で、リスケジュールの支援では計画への復帰が見込めない場合については、計画の見直しを行い、再策定の検討となります。

ただし、実抜計画・合実計画の要件を満たす計画が困難となった場合は、抜本的な取り組みを用いた計画の策定が必要となります。

 

改善計画が暫定計画であった場合は、支援機関のアドバイスを受け、施策項目について1つ1つ個別に改善に取り組みます。

それでも計画と実績の乖離が大きい場合は、抜本的に事業再生が必要となると考えられます。

暫定リスケの場合、事業再生に取り組む準備期間として3年程度の猶予期間を与えられていることから、計画が達成できない場合は事業の継続可能性について疑義が生じていることとなります。

この場合、フリーキャッシュフローがプラスであれば返済原資を生み出していると考えられることから、まだ再リスケジュール等の検討の余地はあります。

しかし、フリーキャッシュフローがマイナスの場合は、事業継続が困難であると考えられ、金融機関からは事業を続けていても回収が見込めないと判断されることとなり、廃業の選択肢も浮かび上がってきます。

 

改善計画の未達の場合、金融機関からは非常に厳しい評価をされると言って良いでしょう。

金融機関からの評価のために事業を行う訳ではないですが、経営改善には本気で、全力で取り組まなければ、手遅れになってしまいます。

 

中小企業診断士 杉本貴弘

2024.07.24

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赤字体質に悩む経営者の特徴と効果的な処方箋

皆さん、こんにちは。

フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

6月、7月、8月とバンクミーティングとセミナー講師が続いており、その準備や対応に追われております。

バンクミーティングのほとんどは元本返済の猶予や返済方法についての協議で、対象となっている企業の財務状態は正直厳しいです。

直接的な窮境原因は様々ですが、驚くことに会社が傾いた背景や経営者の癖、行動特性は共通しています。

 

私は、20年にわたってこの仕事をしていますので、経営者の特徴や行動特性についての重要性は理解しており、経営顧問や経営改善の現場で実践的な指導を行っています。

 

今回は、傾いた会社の共通項をお伝えしますので、1つでも当てはまるようなことがあれば反省し、反面教師として今後に生かしていただければと思います。

 

1.経営者が経営の勉強をしない
 まず、経営者が経営の勉強をしないということです。経営とは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の配分を繰り返して成果を上げていくことだと定義できますが、その範囲は多岐にわたり、複雑ですので勉強が欠かせません。しかし、赤字の経営者のほどは飲み歩く、贅沢をする、従業員を安く雇う、賞与を出さず、税金も納めずという特徴があります。そのスタンスで経営すると、拡大成長ができないまま、借入に依存した経営になります。勉強をしないことのダメージは想像を絶するほど大きいのですが、残念ながらそれすらも気づいていないのがほとんどです。

 

2.金融機関から限界まで借りて、融資を断られてから事態の重さに気づく
 赤字で資金が不足した時、収益性の改善には全く取り組まない一方で、融資を申し込む動きは迅速かつ積極的に行います。損益計算書に原因があるにもかかわらず、「融資を申し込んで資金を補填して終わり」というのが赤字の会社の経営戦略です。収益改善は非常に時間もかかり労力も要しますので、金融機関からお金を借りるという楽な道に逃げます。
そして、いよいよ借りることができなくなってから、初めて「事の重大さ」に気づきますが、楽な道しか経験していませんので、私が指導する内容に取り組む精神力や耐性が全くありません。

 

3.顧問税理士や外部環境に原因を求める他責思考
 「自分のやり方が間違っていた。これからはしっかり勉強して立て直す」という経営者はほとんどいません。
「税理士が何も教えてくれない」「コロナが・・・」など、とにかく言い訳が多いです。経営者は全ての責任を負っており、言い訳が許されないということを知りません。時々、小学生と話をしているのかと思う時もあります。他責思考から自責思考への変換ができれば、すべてが上手く行くのですが・・・。プライドが邪魔をしているのか、本当に自分に責任がないと思っているのか分かりませんが、こういう経営者を支援するのは本当に大変ですし、私以上に従業員が大変でかわいそうと思ってしまいます。

4.試算表がない
 赤字の会社には試算表がありません。数字を見ずに経営しています。数字を見ずに経営をするということは、前を見ずに車を運転するようなもの、計器がない飛行機を飛ばすようなものです。よほど自分に自信があるのか、それとも何も考えていないのかは分かりませんが、多くの場合その両方のように思えます。そして「試算表を作成しましょう」と決定しても試算表が出てくることはありません。

 

5.創業以来ほとんど利益がない
 「コロナでおかしくなった」という会社の決算書を10年前から見ると、コロナ前から赤字であることが分かります。結局、1回もまともな利益を計上したことがなく、融資を受けるためにテクニックでちょっと黒字にした経験があるだけで、慢性的な赤字体質であるケースがほとんどです。

 

 

これら5つの特徴は弊社に支援を求めるほぼ全ての会社で複数個当てはまります。

 

私からこうした事態に陥らずに強い会社を作る、非常に簡単で効果的な処方箋がありますので、それをご紹介しましょう。

まずは「会社を良くしたい」「資金繰りに苦しみたくない」と強く願うことです。

 

そして、いますぐに「経営の勉強をする」ことです。

 

毎日朝早く出社し、お客様や社員をよく観察し、自社の製品やサービスについて疑うことから始めましょう。

 

劇的な変化は日々の何気ない積み上げから発生するものです。

 

それでは、また次回です。