2024.07.11

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経営改善サポート保証(感染症対応型)が延長されました

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

先日の木戸の投稿にもあったように、コロナ禍における民間金融機関の中小企業向け資金繰り支援は段階的に終了し、新型コロナセーフティネット保証4号や伴走支援特別保証(コロナ借換保証)はこの6月末をもって終了しました。

 

ただし、経営改善サポート保証(感染症対応型)は12月末まで半年間延長されております。

 

経営サポート保証制度(感染症対策型)は、従来の経営改善サポート保証制度の据え置き期間を最大5年間に緩和した上で、保証料の企業負担を大幅に引き下げるものとして2021年4月から開始されました。

 

 

この制度は、感染症の影響を受けた中小企業が経営改善計画を策定し、その取り組み後押しするための制度です。経営改善計画については、信用保証協会による経営サポート会議や中小企業活性化協議会等の支援による経営改善計画のほか、認定支援機関が経営改善計画策定支援事業によって策定した計画についても、全債権者の同意を得ることが出来れば対象とすることが出来ます。

 

コロナ関連の資金繰り支援は経営改善サポート保証(感染症対応型)に一本化された形となり、企業の今後の資金調達の際には経営改善計画の策定が必要となってくるでしょう。

 

弊社では関西をはじめとして、全国の事業者様の経営改善計画の策定支援を行っております。

無料経営相談も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

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中小企業診断士 杉本貴弘

2024.06.24

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事業再生の実務 ~リスケ中に受けた「コロナ融資」の返済方法~

皆さん、こんにちは。フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

大阪はようやく梅雨入り宣言されました。

 

梅雨入りが非常に遅かったので、早く明けると思いますが短時間に強烈な雨が降ることが多くなっているので皆様もお気を付けください。

 

さて、今回は私が支援している事業者様のケースを紹介します。

 

現在、支援させていただいている事業者様ですが、約10年前からリスケしており、新規融資を受けることができない状態が続いていました。

 

そんな中、2010年の春ごろから新型コロナが蔓延し、いわゆる「コロナ融資」ということで、リスケしている企業にも新規融資が出ました。

 

この事業者様もリスケ中でしたので原則、資金調達はできなかったのですが「コロナ融資」は審査も緩く、融資を受けることができました。

 

コロナ融資の多くは据置期間(一定期間、元本返済を行わず利息のみを払う)を設けることができますので、この事業者様も3年の据置期間を設定しました。

ここまでは、リスケしている企業の多くが同じ状況かと思います。

 

しかし、コロナ融資の据え置き期間が終わり、返済が始まると様々な問題が出てきます。

 

例えば、この事業者様のように元々リスケしており、経営改善計画に沿って僅かの額を返済していた状態で、リスケ中に借りた「コロナ融資」の返済はどのように取り扱うべきかという問題が出てきます。

 

明確なルールがあるわけではないのですが、リスケ中に行った借入はそうでない借入よりも優先的に返済されるとするのが一般的です(あくまで私の経験則ですが)。

 

なぜなら、リスケ中は原則として借入はできませんが、金融機関からすればその中で無理をして融資したため、まずはそれを優先的に弁済すべきだとする考え方が成り立つからです。

 

ですから、この事業者様もリスケ中にコロナ融資を受けたわけですから、まずはコロナ融資を優先弁済すべきだと言えます。

 

しかし、コロナ融資の返済を優先すると、元々あった借入の返済が向こう数年できないという問題が発生します。

 

ですので、リスケ中に借りた融資を優先的に弁済するのが一般原則としながらも、明確なルールがあるわけではありませんので、私どものような専門家はメインバンクや保証協会と連携し、ケースバイケースで対応します。

 

今回の事業者様については、当初メインバンクは「コロナ融資を優先弁済」と強く主張しておりました(メインバンクがコロナ融資を行っていた)が、他行と調整した結果、それでは衡平性が著しく棄損されるということで、結局は全ての借入と同様に取り扱うことで落ち着きました。

 

このように、リスケ中に受けた新規融資の取り扱いは非常にナーバスな問題となることが多いのですが、コロナ以前はこうした状況はレアケースでしたので、返済についての議論の中で大きく取り扱われることはありませんでした。

 

しかし、コロナ融資はリスケ中の事業者様も借りている場合が多く、こうした問題は実際に増えてきています。

 

メインバンクの担当者がしっかりしていれば上手くハンドリングしてくれると思いますが、そうでない場合もありますし、金融機関同士で調整が取れない場合もあります。

 

そうした場合には必ず速やかに専門家にご相談ください。

 

それではまた次回です。

2023.07.13

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声のトーンで経営者の心理状況を感じる

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

東京商工リサーチの調査によると2023年1月から6月までの倒産件数は4042件であり、コロナ禍での資金繰り支援によって減少していた倒産件数が大幅に上向き傾向にシフトしました。

昨年から倒産件数は増加基調となっていたのですが、今年の上期で大幅に増加する結果となっています。

弊社へご相談に来られる企業様も資金繰りが深刻な企業が多く、早急にリスケを金融機関へ相談するケースが続いています。

背景には新型コロナ禍での減収・減益や昨年からの原油価格・物価高騰、人手不足・人件費上昇などが考えられますが、コロナ禍での3年超にどのような経営をしてきたのか、と疑問を持つケースも少なくありません。

既存事業の売上が減少し、赤字となり、資金繰りが窮屈な状態に手を打たないまま、新事業へ投資したり、新事業をウルトラCとして改善に取り組んだりと再生に取り組む中小・零細企業の戦略としては体力的にキツイ判断をしています。

その瞬間は、隣の芝が青く見え、新事業に飛びつきたくなる気持ちはわかりますが、まずは既存事業を何としてでも立て直すことに全力で取り組むべきです。

拠点や体制の見直しによる大幅な固定費の削減、今までは当たり前にやっていた販売戦略の見直しなど、何としても既存事業の収支を黒字化していかなければなりません。

厳しい言い方かもしれませんが、既存事業を立て直せない人が新事業をやっても収益化できるとは思えません。

とはいえ、始めてしまったものは仕方ありませんので、今後の方針を経営者と一緒に考えていくと、少し不安が解消されたのか、声のトーンが明るくなることが多いです。

弊社に相談しただけでは何も変わらないのですが、誰かに相談し、方向性や改善策が見えてくるだけでも資金繰りの悩みが小さくなれば、夜もしっかりと寝れ、事業に集中してもらえるのではないかと考えています。

現在の経済状況を考えるとほっておいて事業が良くなることは考えにくいですので、ポストコロナを見据えて、経営改善に取り組んでいきましょう。

中小企業診断士 木戸貴也

2023.05.11

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中小企業の経営改善・事業再生 その3

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。全3回の中小企業の経営改善・事業再生シリーズの最終回です。今回は、具体的な経営改善の事例をご紹介します。

3.具体的な経営改善の例

(1)製缶板金加工業の事例

年商規模を大きく超える過大な設備投資や無計画な事業承継などにより、経営が不安定となり、資金繰りが非常に厳しい状況でした。

金融機関への返済は遅れることなく行っていましたが、ご相談を受けた時には「今月末の支払いが厳しい」という状況でしたので、当日中にメインバンクの担当者へ相談し、早急なリスケジュールにも応じていただけました。

その後、経営改善計画を代表者と何度も打ち合わせを行い、約3カ月かけて作成し、バンクミーティングにより、計画説明とリスケジュールの期間延長を依頼しました。

計画策定後、代表者が中心となって徹底した固定費の削減、生産性向上や受注価格の見直しによる利益率の改善、そして自社HPでの販路開拓や既存取引先への営業によって売上高を増加させたことで、資金繰りは劇的に改善され、十分に利益計上できるようになりました。

事業承継も問題なく進み、金融機関への返済も間もなく開始できる状況まで経営改善が進んでいます。

まだまだ経営改善の道中ですが、経営改善のステップを忠実に実行した経営改善の例だと言えます。

 

(2)食品卸売業の事例

市場規模が年々縮小している分野であり、業績は長期的に低迷していたため、借入金の返済を新たな借入金で返済していました。

売上高が減少する中で、借入金が増加していたため、年商対比での借入金が非常に過大となっており、金融機関からの追加融資を受けることが出来なくなっていました。

年商1億円超ですが、預金残高は数十万円であり、資金繰りが非常に切迫していました。この事例も当月から金融機関に対してリスケジュールの交渉を行い、経営改善計画書を作成しました。

売上高が減少している中で仕入高は変わっておらず、年々在庫・冷凍保管料が増加し、利益率や資金繰りを圧迫していたことから、真っ先に在庫の圧縮を行いました。

仕入を抑制し、既存の在庫を販売することを約半年続けると大幅に在庫を削減でき、冷凍保管料も減少し、少額ですが利益計上できるようになりました。

この事例も経営改善のステップに従って経営改善を実行している例です。

いまだ、利益率の改善や売上高の増加は十分に行えていない状況ですが、預金残高も月商1か月分程度を確保できており、資金繰りは大幅に改善しています。

4.専門家へは早めに相談を

まずは自分でやってみてダメなら専門家へ相談することも悪くはないのですが、後からご相談をいただいたときには手遅れとなることも少なくありません。

「あと数か月早く相談を受けていれば、もっといい選択肢があったのに」というケースは多くありますので、少しでも迷われたときなどは専門家へ相談されることをお勧めします。

2023.05.10

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中小企業の経営改善・事業再生 その2

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。前回の中小企業の経営改善・事業再生その1に続いて、3回シリーズの2回目です。

2.経営改善のステップ

経営改善・事業再生は、収益性の改善、金融機関へのリスケジュールの申込、資金繰りの改善などを行うのですが、これには明確な手順があります。

経営を改善するには、固定費の削減、利益率の改善、売上高の増加の3つが必要であり、この順番を守ることが重要です。

固定費が高く、収益性が低い赤字体質の状態で売上高の増加を急ぐと赤字幅が拡大し、資金繰りも更に悪化するケースは少なくありません。

まずは、固定費(役員報酬、家賃など定期契約、広告宣伝費、交通費、交際費、雑費など)や利益率(=粗利益率。仕入や外注費など)の見直しや改善を行い、ぜい肉をそぎ落とし、筋肉質となった状態で売上高の増加を目指します。

借入金の返済は固定費ではないのですが、毎月の支出を見直す必要がある場合には、金融機関に対して、元金返済猶予などのリスケジュールを依頼します。

必ずしも「経営改善・事業再生=リスケジュール」ではないのです。

返済を猶予しても先延ばしをしているだけですので、いずれ返さなければなりません。

しかし、経営改善は、固定費削減のように直ぐに効果が出るものもあれば、利益率改善や売上高増加など取り組んでから結果が出るまでに相当期間を要するものもあります。

固定費削減は一時的な改善であり、中長期的には利益率改善や売上高増加が不可欠です。

そのため、経営改善・事業再生を進めるためには、定期的なモニタリングと見直し、軌道修正が必要です。

計画通りに進んでいない原因や資金繰りの変化、取引状況などをリアルタイムで確認することで、経営改善・事業再生を進めていきます。

次回では、経営改善の具体的な事例を2案件ご紹介したいと思います。