2024.08.28

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苦渋の決断を先延ばしにした経営者の末路

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

 

経営改善計画を策定し、金融機関からのリスケ等の金融支援を受けてながら、経営改善に取り組んでいても残念ながら再生できずに倒産にいたることがあります。

 

弊社にご相談いただいたタイミングでの経営の毀損状態は様々で、今月末の支払ができず打てる手が限られるケースもあれば、まだリスケ前であり複数の選択肢を持ったうえで改善に取り組めるケースもあります。

 

後者であれば、リスケによって資金繰りを改善し、『固定費削減→利益率改善→売上高増加』のステップに沿って経営改善に取り組むことをベースに考えるべきです。

 

前者の場合でも基本的なステップは同じなのですが、とにかく1、2か月の資金繰りを確保しなければなりません。

 

返済を止める、納税を遅らせる、仕入の支払を待ってもらう、代金回収を早めるなどで対応できることもありますが、この段階で資金がショートしてしまうことが実際のところあります。

 

何とか資金を確保して乗り越えた先で問題が発生します。

 

それは、経営者が今までのやり方、考え方、仕事の進め方、組織体制、営業拠点などを変えることができず、結果として直ぐに資金が枯渇してしまうことです。

 

経営改善が必要になる背景には、経営者の判断ミス、戦略の誤りなど経営者に起因する原因があるものです。

 

赤字になってしまったやり方、考え方を改めない限りは、黒字化し、経営改善を進めることは厳しいです。

 

コンサルタントとしてクライアントが倒産することを回避し、少しでも早く再生してほしいとの思いから、厳しい言い方や言いたくないようなことなども経営者に伝えます。

 

しかし、最終的な意思決定をするのは経営者ですし、伝えるべきことは伝えた上での意思決定なのであればその意見を尊重して経営改善に取り組みます。

 

人に言われたからやっているからでは力は入らないでしょうし、何より自分で決めたことに責任を持って取り組むことに意味があると思います。

 

一方で、倒産に至った経営者から、「あの時、木戸さんが言ったようにしていたら良かった。」との話がありました。

 

この案件については、他の経費削減や収益改善、売上アップに取り組んでも赤字幅が大きすぎるため、他の策を検討し続けた上で、どうしても人件費の削減が必要であると提言していました。

 

何度も資金繰りや損益を確認しながら話し合った結果、現体制で継続するとの意思決定でした。

 

結果的に倒産に至った案件の話ですので、苦渋の決断を先延ばしにしたことの結果論ではありますが、意思決定した内容には強い気持ちでコミットしなければなりません。

 

コンサルタントとして、提言内容や経営改善の方向性などがクライアント企業と合わないのであれば、他者にアドバイスを求めていただいて構わないと考えています。

 

その内容がいいと思ったのであれば、それを採用したらいいのです。決めることが経営者の仕事です。

 

特に再生局面では、重たい意思決定に迫られることが多々あります。

 

納得いかないこと、理解が不十分なことがあれば、とことん考えて、相談して、経営の改善に向き合いましょう。

 

中小企業診断士 木戸貴也

2024.07.24

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赤字体質に悩む経営者の特徴と効果的な処方箋

皆さん、こんにちは。

フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

6月、7月、8月とバンクミーティングとセミナー講師が続いており、その準備や対応に追われております。

バンクミーティングのほとんどは元本返済の猶予や返済方法についての協議で、対象となっている企業の財務状態は正直厳しいです。

直接的な窮境原因は様々ですが、驚くことに会社が傾いた背景や経営者の癖、行動特性は共通しています。

 

私は、20年にわたってこの仕事をしていますので、経営者の特徴や行動特性についての重要性は理解しており、経営顧問や経営改善の現場で実践的な指導を行っています。

 

今回は、傾いた会社の共通項をお伝えしますので、1つでも当てはまるようなことがあれば反省し、反面教師として今後に生かしていただければと思います。

 

1.経営者が経営の勉強をしない
 まず、経営者が経営の勉強をしないということです。経営とは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の配分を繰り返して成果を上げていくことだと定義できますが、その範囲は多岐にわたり、複雑ですので勉強が欠かせません。しかし、赤字の経営者のほどは飲み歩く、贅沢をする、従業員を安く雇う、賞与を出さず、税金も納めずという特徴があります。そのスタンスで経営すると、拡大成長ができないまま、借入に依存した経営になります。勉強をしないことのダメージは想像を絶するほど大きいのですが、残念ながらそれすらも気づいていないのがほとんどです。

 

2.金融機関から限界まで借りて、融資を断られてから事態の重さに気づく
 赤字で資金が不足した時、収益性の改善には全く取り組まない一方で、融資を申し込む動きは迅速かつ積極的に行います。損益計算書に原因があるにもかかわらず、「融資を申し込んで資金を補填して終わり」というのが赤字の会社の経営戦略です。収益改善は非常に時間もかかり労力も要しますので、金融機関からお金を借りるという楽な道に逃げます。
そして、いよいよ借りることができなくなってから、初めて「事の重大さ」に気づきますが、楽な道しか経験していませんので、私が指導する内容に取り組む精神力や耐性が全くありません。

 

3.顧問税理士や外部環境に原因を求める他責思考
 「自分のやり方が間違っていた。これからはしっかり勉強して立て直す」という経営者はほとんどいません。
「税理士が何も教えてくれない」「コロナが・・・」など、とにかく言い訳が多いです。経営者は全ての責任を負っており、言い訳が許されないということを知りません。時々、小学生と話をしているのかと思う時もあります。他責思考から自責思考への変換ができれば、すべてが上手く行くのですが・・・。プライドが邪魔をしているのか、本当に自分に責任がないと思っているのか分かりませんが、こういう経営者を支援するのは本当に大変ですし、私以上に従業員が大変でかわいそうと思ってしまいます。

4.試算表がない
 赤字の会社には試算表がありません。数字を見ずに経営しています。数字を見ずに経営をするということは、前を見ずに車を運転するようなもの、計器がない飛行機を飛ばすようなものです。よほど自分に自信があるのか、それとも何も考えていないのかは分かりませんが、多くの場合その両方のように思えます。そして「試算表を作成しましょう」と決定しても試算表が出てくることはありません。

 

5.創業以来ほとんど利益がない
 「コロナでおかしくなった」という会社の決算書を10年前から見ると、コロナ前から赤字であることが分かります。結局、1回もまともな利益を計上したことがなく、融資を受けるためにテクニックでちょっと黒字にした経験があるだけで、慢性的な赤字体質であるケースがほとんどです。

 

 

これら5つの特徴は弊社に支援を求めるほぼ全ての会社で複数個当てはまります。

 

私からこうした事態に陥らずに強い会社を作る、非常に簡単で効果的な処方箋がありますので、それをご紹介しましょう。

まずは「会社を良くしたい」「資金繰りに苦しみたくない」と強く願うことです。

 

そして、いますぐに「経営の勉強をする」ことです。

 

毎日朝早く出社し、お客様や社員をよく観察し、自社の製品やサービスについて疑うことから始めましょう。

 

劇的な変化は日々の何気ない積み上げから発生するものです。

 

それでは、また次回です。

 

2024.07.11

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経営改善サポート保証(感染症対応型)が延長されました

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

先日の木戸の投稿にもあったように、コロナ禍における民間金融機関の中小企業向け資金繰り支援は段階的に終了し、新型コロナセーフティネット保証4号や伴走支援特別保証(コロナ借換保証)はこの6月末をもって終了しました。

 

ただし、経営改善サポート保証(感染症対応型)は12月末まで半年間延長されております。

 

経営サポート保証制度(感染症対策型)は、従来の経営改善サポート保証制度の据え置き期間を最大5年間に緩和した上で、保証料の企業負担を大幅に引き下げるものとして2021年4月から開始されました。

 

 

この制度は、感染症の影響を受けた中小企業が経営改善計画を策定し、その取り組み後押しするための制度です。経営改善計画については、信用保証協会による経営サポート会議や中小企業活性化協議会等の支援による経営改善計画のほか、認定支援機関が経営改善計画策定支援事業によって策定した計画についても、全債権者の同意を得ることが出来れば対象とすることが出来ます。

 

コロナ関連の資金繰り支援は経営改善サポート保証(感染症対応型)に一本化された形となり、企業の今後の資金調達の際には経営改善計画の策定が必要となってくるでしょう。

 

弊社では関西をはじめとして、全国の事業者様の経営改善計画の策定支援を行っております。

無料経営相談も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

お問い合わせはこちら

中小企業診断士 杉本貴弘

2024.06.24

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事業再生の実務 ~リスケ中に受けた「コロナ融資」の返済方法~

皆さん、こんにちは。フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

大阪はようやく梅雨入り宣言されました。

 

梅雨入りが非常に遅かったので、早く明けると思いますが短時間に強烈な雨が降ることが多くなっているので皆様もお気を付けください。

 

さて、今回は私が支援している事業者様のケースを紹介します。

 

現在、支援させていただいている事業者様ですが、約10年前からリスケしており、新規融資を受けることができない状態が続いていました。

 

そんな中、2010年の春ごろから新型コロナが蔓延し、いわゆる「コロナ融資」ということで、リスケしている企業にも新規融資が出ました。

 

この事業者様もリスケ中でしたので原則、資金調達はできなかったのですが「コロナ融資」は審査も緩く、融資を受けることができました。

 

コロナ融資の多くは据置期間(一定期間、元本返済を行わず利息のみを払う)を設けることができますので、この事業者様も3年の据置期間を設定しました。

ここまでは、リスケしている企業の多くが同じ状況かと思います。

 

しかし、コロナ融資の据え置き期間が終わり、返済が始まると様々な問題が出てきます。

 

例えば、この事業者様のように元々リスケしており、経営改善計画に沿って僅かの額を返済していた状態で、リスケ中に借りた「コロナ融資」の返済はどのように取り扱うべきかという問題が出てきます。

 

明確なルールがあるわけではないのですが、リスケ中に行った借入はそうでない借入よりも優先的に返済されるとするのが一般的です(あくまで私の経験則ですが)。

 

なぜなら、リスケ中は原則として借入はできませんが、金融機関からすればその中で無理をして融資したため、まずはそれを優先的に弁済すべきだとする考え方が成り立つからです。

 

ですから、この事業者様もリスケ中にコロナ融資を受けたわけですから、まずはコロナ融資を優先弁済すべきだと言えます。

 

しかし、コロナ融資の返済を優先すると、元々あった借入の返済が向こう数年できないという問題が発生します。

 

ですので、リスケ中に借りた融資を優先的に弁済するのが一般原則としながらも、明確なルールがあるわけではありませんので、私どものような専門家はメインバンクや保証協会と連携し、ケースバイケースで対応します。

 

今回の事業者様については、当初メインバンクは「コロナ融資を優先弁済」と強く主張しておりました(メインバンクがコロナ融資を行っていた)が、他行と調整した結果、それでは衡平性が著しく棄損されるということで、結局は全ての借入と同様に取り扱うことで落ち着きました。

 

このように、リスケ中に受けた新規融資の取り扱いは非常にナーバスな問題となることが多いのですが、コロナ以前はこうした状況はレアケースでしたので、返済についての議論の中で大きく取り扱われることはありませんでした。

 

しかし、コロナ融資はリスケ中の事業者様も借りている場合が多く、こうした問題は実際に増えてきています。

 

メインバンクの担当者がしっかりしていれば上手くハンドリングしてくれると思いますが、そうでない場合もありますし、金融機関同士で調整が取れない場合もあります。

 

そうした場合には必ず速やかに専門家にご相談ください。

 

それではまた次回です。

2023.07.13

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声のトーンで経営者の心理状況を感じる

こんにちは、中小企業診断士の木戸です。

東京商工リサーチの調査によると2023年1月から6月までの倒産件数は4042件であり、コロナ禍での資金繰り支援によって減少していた倒産件数が大幅に上向き傾向にシフトしました。

昨年から倒産件数は増加基調となっていたのですが、今年の上期で大幅に増加する結果となっています。

弊社へご相談に来られる企業様も資金繰りが深刻な企業が多く、早急にリスケを金融機関へ相談するケースが続いています。

背景には新型コロナ禍での減収・減益や昨年からの原油価格・物価高騰、人手不足・人件費上昇などが考えられますが、コロナ禍での3年超にどのような経営をしてきたのか、と疑問を持つケースも少なくありません。

既存事業の売上が減少し、赤字となり、資金繰りが窮屈な状態に手を打たないまま、新事業へ投資したり、新事業をウルトラCとして改善に取り組んだりと再生に取り組む中小・零細企業の戦略としては体力的にキツイ判断をしています。

その瞬間は、隣の芝が青く見え、新事業に飛びつきたくなる気持ちはわかりますが、まずは既存事業を何としてでも立て直すことに全力で取り組むべきです。

拠点や体制の見直しによる大幅な固定費の削減、今までは当たり前にやっていた販売戦略の見直しなど、何としても既存事業の収支を黒字化していかなければなりません。

厳しい言い方かもしれませんが、既存事業を立て直せない人が新事業をやっても収益化できるとは思えません。

とはいえ、始めてしまったものは仕方ありませんので、今後の方針を経営者と一緒に考えていくと、少し不安が解消されたのか、声のトーンが明るくなることが多いです。

弊社に相談しただけでは何も変わらないのですが、誰かに相談し、方向性や改善策が見えてくるだけでも資金繰りの悩みが小さくなれば、夜もしっかりと寝れ、事業に集中してもらえるのではないかと考えています。

現在の経済状況を考えるとほっておいて事業が良くなることは考えにくいですので、ポストコロナを見据えて、経営改善に取り組んでいきましょう。

中小企業診断士 木戸貴也