2024.10.08

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経営改善計画における損益計画の考え方

経営改善計画とは?

経営改善計画とは、事業の資金繰りや経営の課題を解決することを目的として、経営改善のための具体的な施策や実施時期などを記載した計画です。
経営改善計画の目的は、次のとおりです。
  • 金融機関から金融支援を取り付ける
     
  • 自社の事業が改善する可能性を社外に示す
     
  • 事業の継続と金融取引の正常化を実現する
     
経営改善計画は、金融機関から新規借入依頼や借入返済のリスケジュール依頼をするときに提出を求められることが一般的です。

よくあるNG例:返済額から逆算するバラ色の計画

経営者が陥りがちな間違いの一つに、「返済額から逆算して売上高を設定し、バラ色の計画を作成する」ことがあります。これは銀行との交渉において見栄えは良いかもしれませんが、実際の経営改善にはつながりません。合意が取れても、経営状況が改善しなければ問題を先送りすることになり、最悪の場合、倒産に至る可能性もあります。

現実的な損益計画の重要性

もちろん、返済額を基にある程度の利益目標を設定することは大切です。しかし、これを絶対的な基準にするのではなく、現実的な損益計画を作成する必要があります。返済に必要な利益を確保しながら、銀行とも現実的なラインで交渉していくためには、慎重な計画作成が求められます。

銀行員が見るポイント:実現可能な計画かどうか

銀行が経営改善計画を評価する際、特に注目するのは次の3点です。

1.売上計画は実現性が高いか?

売上が確実に見込める計画かどうかは、非常に重要です。過去の売上推移や受注見込みをもとに、現実的な売上目標を立てる必要があります。

売上計画は、「①成り行き」と「②α(努力)」に分けて考えると良いでしょう。

①成り行き:過去の売上傾向や窮境要因が取り除かれた場合の売上、または受注見込みの案件など、自然な推移に基づいた売上を予測します。

②α(努力):内部要因(新商品の投入、営業強化、値上げなど)や外部要因(市場の拡大、競合の減少など)を考慮し、追加の努力によって達成可能な売上を上乗せします。ここで、数字や具体的な根拠を明確にすることが重要です。

2.コストは最適化されているか?

コスト削減の余地があるか、固定費や変動費の見直しが行われているかも、銀行が注目するポイントです。

コスト計画を見直す際、まずは「成り行き売上」を基に損益分岐点を計算し、固定費の削減を検討します。固定費の削減が難しい場合には、変動費(原価率)の見直しや売上の向上による対策も併せて検討します。

3.利益を確保できるか?

結果として、利益がしっかり確保できているかどうか。銀行が納得できる返済能力を示すためには、具体的な利益の見通しが必要です。

まとめ

損益計画は、ただの数字の羅列ではなく、企業の現実に即した「実現可能な計画」でなければなりません。バラ色の売上目標を掲げても、現実の経営改善には結びつきません。外部コンサルタントとともに、現実的な計画を立てることで、銀行との交渉もスムーズに進みやすくなります。

我々が計画作成のご支援をさせて頂くときはこのような考えかたで、数値計画、アクションプラン(行動計画)を作成していきます。同じ目線、捉え方をもって経営改善に取り組めたらと思います。

2024.08.26

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経営改善計画策定支援事業(405)とは  ~国から専門家費用の補助があります!~

こんにちは、ビジネスアナリストの社内です。

 

当ブログでは経営改善計画策定支援事業、あるいは405事業についてよく話題にあげております。

今回はそもそもどんなものなのかをお話ししたいと思います。

 

経営改善計画策定支援事業とは、借入の返済負担が重く資金繰りが苦しいという財務上の問題を抱えている事業者様の経営改善を促進するための国の事業です。

金融機関にリスケを依頼すると、経営改善計画を策定するよう求められます。

ただし、多くの中小企業や小規模事業者の経営者様にはこれら計画を策定したご経験がないため、自ら策定することは難しいと思われます。

 

そこで、当該事業は中小企業経営強化支援法に基づき、

当社のような認定支援機関が事業者様の依頼を受けて計画書の策定バンクミーティングその後の計画遂行にあたるご支援(伴走支援)を実施するものです。

 

事業者様にとってのメリット

  • 金融機関から金融支援をスムーズに受けられる。
  • 資金繰りが安定し、本業の経営改善に集中できる。
  • 認定支援機関による3年間の伴走支援を受けられる。
  • 計画策定と伴走支援について、国から2/3までの費用補助を受けられる(諸条件あり)。

 

当社はこれまで数多くの事業者様に対し、経営改善計画の策定やその後の再生に向けたご支援に携わってまいりました。

円滑にリスケジュールができ、資金流出の一時停止ができるだけでなく、専門家の意見を踏まえ、事業を抜本的に立て直す機会となります。

どうすれば赤字体質から脱出、自社を再建できるのかできるのか、ご一緒に考えてまいりましょう。

ビジネスアナリスト 社内 愛里

2024.07.31

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改善計画が未達の場合どうなるか

こんにちは、中小企業診断士の杉本です。

 

バンクミーティングを経て合意を得た経営改善計画については、認定支援機関が引き続きモニタリングを行い、計画の進捗確認や遂行を促します。

 

もし、モニタリングの結果、計画を達成が見込めない場合どうなるかという点を気にされる企業様も多いかと思います。

 

策定した実抜計画・合実計画の改善計画の達成が見込めない場合は、実質債務超過額の解消や債務償還年数についても当初計画の期間内の達成が困難になると考えられます。

全て個別対応となりますが、支援機関は取引金融機関と情報共有を行い、対応策を検討することとなります。

 

計画と実績の乖離が軽微であり、再度リスケジュールの支援により計画への復帰が可能と見込まれる場合は、取引金融機関の同意を得て再リスケジュールを検討します。

一方で、リスケジュールの支援では計画への復帰が見込めない場合については、計画の見直しを行い、再策定の検討となります。

ただし、実抜計画・合実計画の要件を満たす計画が困難となった場合は、抜本的な取り組みを用いた計画の策定が必要となります。

 

改善計画が暫定計画であった場合は、支援機関のアドバイスを受け、施策項目について1つ1つ個別に改善に取り組みます。

それでも計画と実績の乖離が大きい場合は、抜本的に事業再生が必要となると考えられます。

暫定リスケの場合、事業再生に取り組む準備期間として3年程度の猶予期間を与えられていることから、計画が達成できない場合は事業の継続可能性について疑義が生じていることとなります。

この場合、フリーキャッシュフローがプラスであれば返済原資を生み出していると考えられることから、まだ再リスケジュール等の検討の余地はあります。

しかし、フリーキャッシュフローがマイナスの場合は、事業継続が困難であると考えられ、金融機関からは事業を続けていても回収が見込めないと判断されることとなり、廃業の選択肢も浮かび上がってきます。

 

改善計画の未達の場合、金融機関からは非常に厳しい評価をされると言って良いでしょう。

金融機関からの評価のために事業を行う訳ではないですが、経営改善には本気で、全力で取り組まなければ、手遅れになってしまいます。

 

中小企業診断士 杉本貴弘

2024.07.22

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金融機関に依頼すべきは追加融資?借換?それともリスケ?

こんにちは、中小企業診断士の谷です。

 

最大5年の据置期間が用意された新型コロナの緊急融資の元本返済の開始が本格化している今、その元本返済に耐えられず、資金繰りが圧迫している企業が徐々に増えております。

 

弊社にも、他の理由を含め、「最近資金繰りに困っている」、「今月の資金繰りが厳しい」、「来月資金ショートしそう」など、非常に状況が厳しい企業のご相談が寄せられます。

 

今回は、据置期間の終了への対策として「借り換え」「新規融資」「リスケ」など複数の金融支援についてご説明します。

 

具体例として以下のようなケースの企業を考えます。

・借入A(借入残高1,000万、毎年の元本返済200万、返済期間5年、※据置期間終了)

・借入B(借入残高1,000万、毎年の元本返済200万、返済期間5年、※据置期間終了)

通常に返済が開始すると、5年で借入による手持ち資金がなくなります。

 

【①借り換え】

既存の借入A,Bを、新たな借入Cに集約するパターンです。返済期間を10年に延ばしたことで、毎月の返済額を抑え、手持ちの現金の流出を抑制します。

 

【②増額借り換え】

先ほどの単純な借り換えと同時に、増額融資を受けたパターンです。

 

では、「①同額借り換え」「②増額借り換え」どちらを選ぶべきでしょうか?

 

1つの判断軸として、手持ち資金(借入残高)の減り具合に着目します。

「②増額借り換え」の方が、残高の減り具合が鈍いため、手持ちの資金量が多く、資金繰り対策としては有利であるといえます。

 

【③追加融資】

借入A、Bは、予定通り、そのまま元本返済を行いながら、新規融資を受けたパターンです。毎年のキャッシュアウトは大きくなりますが、手持ち現金が増えるため、資金繰りが改善しているといえます。

 

では、「②増額借り換え」と「③追加融資」では、どちらを選ぶべきでしょうか?

 

こちらも同様に、手持ち資金の減り具合に着目すると、「②増額借り換え」の方が、手持ちの資金量が多く、資金繰り対策としては有利です。

 

(※借入額が増加すると支払利息も増加するため、上記の順序が必ずしも最適とは限りません。)

 

【④リスケジュール】

最後に、元本返済猶予によって、5年後から返済を開始するパターンです。

 

注意が必要なのはリスケです。

 

上記の理屈でいくと、手持ち現金を多く持てるリスケも有利に見えますが、リスケをすると新規融資を受けることが極めて難しくなります。(ほとんど不可です。)

目先の元本返済を止められるからといって安易にリスケに走るのは得策ではありません。

 

したがって、まずは銀行には融資を相談し、それが難しい場合にリスケを依頼するのが基本戦略になります。

 

ただし、元本返済により手元の現金が流出し、事業継続を余儀なくされている緊急事態の場合や、追加融資が受けられない場合は、早急にリスケ対応が必要なケースもあります。(※リスケをする際は、取引している全金融機関に対し、経営改善計画書を作成・提出し、全員の合意が必要となります。)

 

 

今回はとても簡単な事例でご紹介しましたが、実際は複数の金融機関と取引があり、借入の口数、残高、協会保証の有無、担保の有無などの既存の借入状況、資金繰り状況、金融機関との関係など様々な要素を考慮し、最適な銀行交渉の方法をご提案いたします。

そして、企業が緊急事態の場合は経営改善計画書を作成し、合意形成までご支援いたします。

 

中小企業診断士 谷 七音

2023.05.26

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リスケ状態から間もなく脱する2社の事例

皆さん、こんにちは。株式会社フラッグシップ経営代表、中小企業診断士の長尾です。

 

新型コロナ融資の返済がこの夏から本格化するということもあり、弊社にも多くの資金繰りに関する相談が寄せられています。

 

赤字を借入金で補い、その間に経営改善を行ってこなかった会社は今後、過剰債務と赤字、物価高の三重苦との戦いになるでしょう。

現実的には元本返済ゼロのリスケを要請し、その間に経営改善を行うことになるケースがほとんどかと思いますが、経営改善に耐えうる余力があるのか、また経営者にその覚悟があるのかがその企業が生き残るのかそうでないかの分かれ目かと思います。

 

一方で弊社が過去に経営改善計画を策定し、リスケジュールの支援を行った先を2社訪問してきましたが、2社共に経営改善に取り組んでいただけていました。

 

1社目・・・縫製工場

加工単価が低く、利益が出にくい費用構造になっていた。外国人技能実習生を数多く採用し、単価よりも受注量を確保することで収益を確保しようとしていたが、元本返済までカバーできずリスケジュールの要請を行った。(今から3年前です)

経営改善計画では受注量よりも加工単価の向上を重視し、価格交渉を行うことや外国人技能実習生の教育を行い、検品は日本人が対応することなどを盛り込みました。取り組んだ結果が数字として出てきたので、この7月までに新計画を完成させ、バンクミーティングを経てリスケ状態から抜ける予定です。

 

2社目・・・子供服販売

複数店舗を運営されていたが、収益の改善が見込むことのできない不採算店舗は閉鎖し、4店舗から2店舗へと事業規模を縮小しました。過剰在庫もセールやネット販売で現金化するなどを経営改善計画に盛り込みました。(こちらも今から3年前です)

現在は店舗数が半分になったにもかかわらず、4店舗あった時の売上に近い水準まで売り上げを増加させた。固定費の削減や利益率の改善も相まって、収益性を大幅に改善することに成功しました。1社目と同様に新計画を策定し、こちらも7月にはバンクミーティングを行い、リスケ状態から抜け出す予定です。

 

 

この2社様は経営改善計画書の内容に対して真摯に向き合っていた(自分が率先して現場に出るだけでなく、営業や仕入れ等も責任をもってやっていた)結果が出たのだと思います。

 

今現在、経営や資金繰りに苦しんでいる事業者様も大勢いらっしゃるかと思いますが、我々のような専門家と一緒に、覚悟をもって真剣に経営に取り組んでいけば道は開けるということを強く想ってください

 

「まだいけるだろう」「また、融資を受ければ何とかなるだろう」ではなく、自分の力で業績を改善させる、利益を出すという覚悟や情熱、行動力をもって難局を乗り切っていただければと思います。

 

私どもにも経営改善のノウハウは多数ございますので、何なりとご相談ください。