なぜ、売上は増加しているのに、資金繰りが悪化したのか?
こんにちは。中小企業診断士の谷です。
資金繰りの悪化には、「業績拡大時の資金繰り悪化」と「業績低迷時の資金繰り悪化」の2パターンがあります。
今回は、前者のケースについて、最近、経営顧問としてご支援させていただくこととなった運送業の事業者様の事例をもとにご説明します。
(※その他の資金繰り悪化の原因については、こちらのブログで詳細にまとめております。)
この事業者様からは、「売上が増加しているのに、手元の資金繰りがどんどん苦しくなっている」というご相談を受けました。
実際に直近の決算や試算表を確認してみると、確かに毎月の売上高は増加傾向にありました。しかし、月末の現預金はどんどん目減りしており、ご相談いただいた時点では、ほぼゼロに近い状態。資金ショートを回避するためにファクタリングを活用せざるを得ない状況となっていました。
なぜ、売上が増加しているにもかかわらず、手元のキャッシュが減少しているのでしょうか?
資金繰り悪化の要因として考えられる要素はいくつかありますが、
主な原因となっていたのは、
「入金サイトと支払いサイトのズレによる運転資金の増加」にありました。
資金繰りが悪化した具体的な流れを見てみましょう。
① 事業開始当初は黒字で採算がとれていた。
② 事業規模を拡大し、ドライバーの増員や車両の増車を実施。
③ しかし、手元資金が少ない中で、支払いが先行(外注費、人件費、燃料費など)し、売上の入金までに時間差があるため、立て替える運転資金が増加(これを「増加運転資金」といいます)。
④ 資金不足を補うために、金利の高いノンバンクやファクタリングを活用。
⑤ その結果、支払利息や手数料がかさみ、利益率が低下。
⑥ 翌月も資金不足が続き、さらにファクタリングの利用額が増加。
⑦ 利益率の低下が続き、最終的に赤字転落。
このような悪循環に陥り、抜け出すのが非常に困難になっていました。
この事例から学ぶべきこと
今回のケースから言えるのは、「体力をためてから拡大する」ことの重要性です。
売上が増加すれば、当然事業拡大のチャンスと考えがちです。しかし、十分な運転資金を確保せずに規模を拡大すると、キャッシュフローが回らなくなり、事業の継続が危ぶまれる事態に陥る可能性があります。
したがって、
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事業拡大の前に運転資金を十分に蓄えること
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入金と支払いのサイト管理を徹底すること
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資金調達手段の選択肢を慎重に検討すること
これらのポイントを押さえながら、健全な資金繰りを維持することが重要です。
中小企業診断士 谷